【海外特派員】出口の見えないトンネルで右往左往するイギリス"ホテル・カリフォルニア"ブレグジット

PickUp編集部では、取引通貨国の情報を、より身近な個人投資家の目線で伝えるために、現地在住の方々から、生の情報を伝えていただく"特派員リポート"の配信を開始しました。

初回はブレクジットで議会が紛糾しているイギリスから、在英18年の日本人ビジネスマンS・Kさんがイギリス特派員として、ブレクジットを巡って右往左往する今の状況を伝えます。

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世界が迎えた歴史的な転換点

ブレグジットの国民投票から、もうじき3年を迎えようとしている。
2016年6月のブレグジット投票、11月のトランプ米大統領の誕生と、世界中でポピュリズムが台頭した2016年から、しばらくの時間が経過した。
1989年11月、ベルリンの壁が崩壊したとき、70年代から続いたグローバライゼーションや世界主義的観念が、いよいよ大きな壁にぶつかり、その在り方を見直し始めたのだと、幼いながらに肌で感じたのを覚えている。
我々の世代にとって、今回のブレクジットは、それに値するような局面ではないだろうか。

今、世界が違う方向に価値観を変えようとしている。
これはヨーロッパやアメリカだけで起きていることではなく、日本においても、国民の利益を第一に考える外交や金融政策に取り組むことが求められている。

ブレクジットは出口のないトンネル

私は今、イギリスに住み、仕事をしていることもあり、しばしば、ブレグジットの情勢について日本の方々から、「実際のところどうなっているのか」と聞かれる。
日本のニュースを見ていると、イギリスがEUから離脱をしようとしていることだけはわかるけれども、「本当のところはどうなっちゃうの?」というのが、多くの日本人の感想だろう。
ところが、イギリス人やイギリス在住の人たちも、日本人同様に、「よくわからない」というのが実情だ。
むしろ、イギリス中が、いつまでたっても出口が見えてこないトンネルに入ったようなフラストレーションを感じている状態なのだ。

労働者階級が自ら窮地に追い込んだ皮肉

より理解を深めるために、イギリスの世論が、どのような状態にあるのかを整理してみよう。
国民投票では、離脱派が52対48の僅差で勝利した。
離脱に賛成した層は、主に「労働者階級」の人たちが多いとされている。
英国において、「階級」とは言っても、国民がどの階級に属しているかという登録などはなく、あくまでも、家系の職業や所得をもとに築かれたアイデンティティーに過ぎない。

正確に労働者階級の人口比率を示すデータはないが、所得ベースで30〜40%の国民が、労働者階級にあたるという統計がある一方で、「自分は労働者階級である」と思っている人の比率が、60〜70%に上るという、興味深いアイデンティティーの調査結果がある。
そして、所得ベースの結果よりも、自己申告の結果が高くなった背景には、多く人たちが、「EU加盟の東欧の労働者が、労働者階級の仕事を脅かしている」という理由を挙げている事実がある。
これを見逃してはいけない。

確かに私が従事する不動産セクターでも、建設作業員(ビルダー)や高級マンションやホテルの受付、清掃員(クリーナー)などは、驚くほど東欧出身の人が多い。
数年前、自宅の大型改装をした際、イギリス人の施工業者を雇ったが、一部専門業者が必要だったので、たまたまポーランド人の石職人を雇い、同じ日に働いてもらった。
ところが、イギリス人の施工業者は、ポーランド人の石職人が登場した途端、「一緒に仕事がしたくない」との理由で、作業を切り上げてしまった。
それほどまでの敵対心に、私はびっくりした。
また、イギリスには、日本の自動車メーカーの工場も数多くあるが、その工場労働者たちも、大半が離脱に投票したとされる。
ホンダや日産などが工場の縮小を決定したことは、すでに報道された通りだ。
皮肉なことに、イギリス経済に与えるインパクトについて、見識を持たない人たちの投票が、結果を左右してしまったと言える。

堂々巡りを続ける議論

現在、あの国民投票の正当性について、是非が問われている。
離脱方法や離脱に要する時間、離脱後の展望などが、きちんと検証されずに、投票を余儀なくされた国民の心境は複雑である。
「現在のような状態になるのであれば、離脱に賛成しなかった」と言う人が多いからである。
その一方で内閣は、「国民投票で決まった結果に反して離脱を撤回するのは民主主義としての根幹を揺るがす問題」として、あくまでも、EUから離脱をする前提で、議論を進めている。

もうひとつの当事者、EUとしても、多大なるコストと3年間の情勢不安を強いられながら、英国離脱の協議に応じているわけで、離脱を取り下げてまで、英国にもたらす利益はないようにも思われる。
それはまさしく、メイ首相がイーグルスの名曲ホテル・カリフォルニアの歌詞"You can イギリスcheck out any time you like, But you can never leave!"「 チェックアウトはいつでもできるが、離れる事がいつまでもできない」を引用して「"ホテル・カリフォルニア"ブレグジットだ」と発言したように、後戻りができないジレンマは、まだまだ続きそうだ。
「気の利いた例え話はもういいから、どうにかしてほしい」というのが、国民の正直な感想だろう(笑)。

「同意なき離脱」のインパクトは限定的?!

3月29日の離脱延長をEUに求める内容で、イギリス政府は動き始めた。
ただ、問題解決までには、まだまだ時間がかかるように思われ、今後もジレンマは続きそうだ。
なぜまとまらないのかといえば、「敵対する相手や交渉相手がいるときにはうまく機能しない」という、民主主義的な解決方法の性質があるからだろう。
議論はまだまだ平行線が続くように思われ、「同意なき離脱」をEU側が選択する可能性も否定できない。

仮に「同意なき離脱」となった場合は、経済的に混乱するとの見方が強いが、「ギリシャ危機ほどの大きなインパクトはない」とする見方が多く、どちらかと言うと、タイヤの空気が徐々に抜ける「スローパンクチャー」のような影響になるだろうとされている。
「同意なき離脱」となった場合、空気が抜けきる前に、イギリス政府が正常化に向けて、どれほど迅速に動けるかが鍵になりそうだ。
一時的に反応はするものの、マーケットはすでに「織り込み済み」という判断を下すのではないだろうか。

PickUp編集部 イギリス特派員
S・K氏
日本の高校を卒業後、ロンドンの私立大学メディア学部に留学。同大学卒業後にメディア関連企業に就職。その後、ロンドン都心部の不動産仲介業を経験、現在は海外(英国外)の投資家を相手に、不動産コンサルタントとして活躍している。英国在住18年。
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