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【ライフスタイル】IR推進法成立で、どうなる日本のスポーツとカジノの関係

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 「やったー」「元気すごーい!」。
2018年7月、サッカーW杯ロシア大会の日本VS.ベルギー戦。
原口元気選手の地元、埼玉県熊谷市の公民館で開かれたパブリックビューイングで、0ー0で迎えた後半3分、原口選手が待望のゴールを決めると、大歓声と拍手が沸き起こった。
その後、ベルギーの猛反撃を受け、残り14秒で痛恨の逆転負けを喫すると、市民らは残念な結末に肩を落としたが、「感動をありがとう」などの言葉が飛び交った。

試合を観戦した日本人の多くが、選手たちの健闘をたたえていたころ、海外では、ブックメーカーで自分の賭けがどうなったかをスマホの画面を見ながら、一喜一憂する人たちの姿があった。
スポーツの試合結果に金銭を賭けるのは、日本人には、あまりなじみがないかもしれないが、ヨーロッパなどでは、スポーツとギャンブルは切っても切れない関係だ。
そして2016年、いよいよ日本でもカジノに道を開くIR推進法が成立した。
今後、日本のスポーツとカジノの関係はどうなっていくのだろうか。

スポーツとギャンブルは"身近"な関係

ブックメーカーとは、イギリス発祥の賭けの主催会社の総称で、現在は世界中に存在する。
事前に配当(オッズ)を提示して、賭けの参加者を募集し、一部手数料を差し引き、試合結果の的中者に還元するというもの。
賭けの種類はスポーツに限らない。
気象、政治、エンターテインメントと、その幅は広い。
最近はスマホを利用し、簡単な操作で参加できるため、裾野はさらに広がっている。
日本人が参加しても、賭博罪が適用されたケースはない。

"toto"など日本のスポーツ振興くじと異なり、オッズが示されていることから「当たったらいくらになるのか」が事前に分かることや、還元率が高いことが特徴だ。
日本の公営ギャンブルが58.5%、サッカーくじが49.6%なのに対し、ブックメーカーは95%前後にもなる。

実はスポーツとギャンブルの親和性は高い。
ラスベガスやマカオのカジノでは、中量級以上のボクシングのタイトルマッチが盛んに行われている。
また、同様にカジノのあるシンガポールやモナコでは、モータースポーツが盛んだ。
勝負事だったら、いくらでもお金をつぎ込むような富裕層をターゲットに、ビッグマネーとスポーツビジネスを、ギャンブルが媒介となり、相乗効果を生むような文化が育ってきた。

また、ヨーロッパでは、格闘技やモータースポーツだけでなく、サッカー、野球、ラグビーなどの大衆スポーツでも行われている。
これまでアメリカは、「スポーツベッティング」はラスベガスのあるネバダ州のみ合法だったが、2015年に全米初の「賭けバスケ」がニュージャージー州の5つ星カジノリゾートホテル『ボーガタ』で行われるなど、アメリカも合法化の流れへと舵を切りつつあるようだ。

IR推進法はスポーツベッティングを可能にするのか

2016年12月、日本でIR推進法が成立した。
カジノを中心に宿泊施設、国際会議場、テーマパーク、商業施設、ブランド店、レストラン、フードコート、劇場・映画館、プール・スポーツ施設などを、一体的に整備する統合型リゾート(Integrated Resort:IR)の設立を推進する基本法だ。

IR施設の誘致を目指し、すでにいくつかの自治体が名乗りを上げている。
中には「スポーツベッティング」を見据えたプランを掲げている自治体もある。
大阪府泉佐野市はスケートリンクと、和歌山県和歌山市はセーリングのナショナルトレーニングセンターと一体になった施設案だ。
ここで注目すべきなのは、カジノ合法化に伴い、ヨーロッパのようなスポーツベッティングも可能になるのかどうかである。
ただ、ギャンブルに対してネガティブな意見や見方が強い日本の社会では、抵抗感を持つ人も少なくないため、すんなりいくとは考えにくい。

ギャンブルのイメージを変えられるか

今さら言うまでもないのだが、日本ではギャンブルのイメージが良くない。
競馬のような公営ギャンブルでない限り、反社会勢力との関連性を想起させてしまうようだ。
映画やテレビドラマでも、賭博をやっている人たちは、悪投として描かれることがほとんどだ。
一方、灼熱の太陽の下、真夏に甲子園で熱い戦いを繰り広げる高校野球の人気が根強く、汗と努力、チームや家族の絆といった美談が、もてはやされがちなことからもわかるように、日本では、スポーツやスポーツ選手とお金との関連性を嫌い、高い清潔性を求める傾向が強かった。
その背景には、日本のスポーツが、長い間、学校教育の中の「体育」の一環として位置付けられ、発展してきたこともあるだろう。
「スポーツで稼いではいけないのだ」という"空気"が、スポーツビジネス市場の成長と拡大を阻んできた。

2001年に導入され、現在は市民権を得たサッカーくじの"toto"だが、導入前は「青少年への悪影響がないか」「射幸心をあおらないものになっているか」などの議論が、これでもかというぐらいに展開された。
totoを所轄するのは文部科学省。
教育をつかさどる官庁がギャンブルを行うことへの抵抗は強く、国会でも批判の的となった。
そうしたこともあり、導入後は配当額がそれほど高いものにならず、その後に発売されたBIGに至っては、サッカーの知識がまったく必要ない「運任せ」のくじとなったため、必ずしもサッカーファンを興奮させるものにはなっていない。
ギャンブル性が低く抑えられただけでなく、totoやBIGとサッカーというスポーツの人気は、必ずしも結びついたものにならなかった。
だから、totoの券を握りしめて試合観戦をするファンは、ほとんどいない。

スポーツベッティングは最後か

2018年10月、東京五輪のメインスタジアムである新国立競技場の整備費用が約790億円も不足することが会計検査院の調査で分かり、NHKを始め、新聞やテレビが一斉に報じて大きな注目を集めた。
新国立競技場の整備費用は当初、約1600億円とされており、財源は国、東京都、日本スポーツ振興センター(JSC)のtotoの売上金で、2対2対1で負担するとされている。
報道によれば、すでに資金不足に陥り、JSCはすでに約50億円を民間の金融機関から借り入れているという。

実はサッカーだけを対象にしているtotoを、プロ野球やプロバスケットボールにまで拡大する計画があったのだが、2015年、現役プロ野球選手による違法賭博への関与が発覚し、4人の現役選手が失格処分を受けた。
また、2016年にはバドミントンの日本代表選手が闇カジノで違法賭博に関与していたことが週刊誌に報道され、男子代表選手2名が無期限の出場停止処分を受け、リオ五輪に大きな影響が出るなど、スポーツとギャンブルの関係が問題視されるような社会的風潮が広がり、toto拡大計画は完全に頓挫した。
現在の東京五輪の財源不足の問題とこの二つの事件がまったく無関係だったとは言い切れないだろう。

恐らく、こうした状況が日本のスポーツとカジノの関係をしばらく遠ざけるだろう。
海外のカジノに詳しい、ある専門家は、日本で新設されるカジノでは、最近カジノでの採用が広がっている、eスポーツ系競技の分野からスタートし、その後、いわゆるスポーツ分野に広がるのではないかとの見方を示している。

2018年、来日外国人観光客数は3000万人を突破した。
大手旅行代理店のJTBが昨年12月に発表した「2019年の旅行動向見通し」によると、2019年の訪日外国人旅行客数は対前年比12.3%増の3550万人になるという。
日本は今、来日外国人たちが国内で落とす「お金」に大きな期待を寄せている。
そうした中、IR推進法は、カジノという新たな観光資源を日本にもたらした。
今、観光庁は国内のスポーツ資源を活用した「スポーツツーリズム」を推進している。
プロ野球やJリーグを「観るスポーツ」、ランニングやサイクリングなどのスポーツイベントに参加して「するスポーツ」などにより、インバウンド拡大を促進する方針を打ち出している。
そして、いずれ海外同様に「賭けるスポーツ」も、そのひとつになるだろう。
グローバル化の波は、こんなところにも押し寄せている。


PickUp編集部