「投機筋のポンドのポジションは買い戻し余地が相当残っている」(江守 哲氏 特別寄稿)ハードブレグジットに備えよ!英国EU離脱特集


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投機筋のポンドのポジションは買い戻し余地が相当残っている

英国の欧州連合(EU)離脱期限が10月末に迫る中、「合意なき離脱」も辞さない政府・与党と、「合意なし」に徹底抗戦する野党の対立はますます先鋭化しており、混迷の着地点が見えない。そのため、市場への影響も計りづらいといえる。

7月に就任したジョンソン首相は、「10月のEU首脳会議で合意を勝ち取り、10月末に離脱する」としているが、焦点の英領北アイルランド国境問題に関するEUとの溝は深い状況にある。

ジョンソン首相はいまだEUに解決策を提示していないもようであり、今後の交渉の行方も見えず、現状では合意の見込みは低く「合意なし」の離脱になる可能性が高まっている。そうなれば、経済への影響は大きいため、野党はもう一度離脱を延期してでも最悪の事態の回避が国益にかなうと強調している。9月4日には与党の造反議員と連携して議会の多数を確保し、下院で離脱を来年1月末まで延期する法案の可決に成功しており、上院で法案が可決されれば、EU各国首脳による全会一致の承認を前提に、離脱延期が可能になる。延期そのものは、問題の先送りに過ぎないが、短期的には一息つけるだろう。

一方、ジョンソン首相は造反議員の粛清に踏み切ったことで、下院で過半数を失っており、少数政権に転落している。10月末の離脱実現へ残された道は、離脱延期法案の成立阻止か前倒し総選挙だが、英首相に議会解散権はなく、さらに野党が総選挙には乗らない方針で結束しており、ジョンソン首相の思惑は外れている。11月以降の内閣不信任・総選挙となる可能性もあり、まだまだ先行きは不透明である。

一方、IMM通貨先物市場における投機筋のポンドのポジションは、8月27日時点で9万枚弱のショートであり、買い戻し余地が相当残っている。上記のように事態が野党に有利に働くようだと、投機筋の買い戻し主導から新規のロングを巻き込んで、一気に水準を切り上げることも十分にあり得るだろう。

また、米中貿易戦争の行方にからも目が離せない。10月には米国による対中関税が引き上げられるが、一方で米中閣僚級会合の開催もある。状況の進展期待が高まると、これまでのドル買いの動きが止まり、欧州通貨やオセアニア通貨の買い戻しが進むことも想定されよう。円は安全資産としての買いから解放され、ドル円は上値を試す可能性もあろう。これまでは悲観的な見方からドル買い・欧州/オセアニア通貨売りが強まっていたが、短期的にはこれらの動きが転換する可能性を念頭に置きながら市場動向を見極めたい。

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<英国EU離脱特集>

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エモリキャピタルマネジメント代表取締役
江守 哲(えもり・てつ)氏
1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。英国住友商事(現欧州住友商事)に出向し、ロンドンに駐在。その後、当時世界最大の非鉄金属トレーダーだったMetallgesellschaft Ltd.(ロンドン本社、現JPモルガン)に移籍し、唯一の日本人として非鉄金属取引を極める。2000年に三井物産フューチャーズに移籍。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場の分析および投資戦略の立案を行う。2007年7月にアストマックス入社し、チーフファンドマネージャーに就任。2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立。ヘッジファンド運用を行う一方、株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供や講演、テレビ出演を行っている。
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