「米中および英離脱リスク後退」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2019年11月

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ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

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ドル/円 10月の推移

10月のドル/円相場は106.484~109.284円のレンジで推移し、月間の終値ベースではほぼ横ばいだった。米9月ISM製造業の予想外の悪化を受けて米国景気の先行き不安が再燃した月初こそ106円台に下落したが、その後は米中通商摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡る過度な懸念が後退した事で上昇に転じた。

米連邦準備制度理事会(FRB)が30日の連邦公開市場委員会(FOMC)で今年3度目の利下げを決めるとともに、利下げ打ち止めを示唆した事を受けて約3カ月ぶりに109.284円まで上値を伸ばす場面もあった。
ただ、31日には米中摩擦への懸念が再燃する形で下落したためほぼ横ばいで10月の取引を終える事になった。

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1日
日銀短観は大企業・製造業の業況判断DIが5となり、前回(6月:7)から低下したものの、市場予想(1)ほどには落ち込まなかった。ただ、円相場に特段の反応は見られなかった。
その後、米9月ISM製造業景況指数は47.8と予想(50.0)に反して前回(49.1)から低下。2009年6月以来の低水準を記録するとドル売りが強まった。

3日
米9月ISM非製造業景況指数が、52.6と市場予想(55.0)を下回り前回(56.4)から大きく低下するとドル/円は下落した。ただ、弱い経済指標が続いた事で月末のFOMCでの追加利下げ観測が再浮上すると一時急落していた米国株が持ち直すとともにドル/円も下げ渋った。

4日
米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数が13.6万人増と予想(14.5万人増)を下回ったものの、前月分が16.8万人増(速報値:13.0万人増)に上方修正された。失業率は3.5%と予想(3.7%)に反して約50年ぶりの水準に改善。
一方、平均時給は前月比±0.0%、前年比+2.9%と予想(+0.2%、+3.2%)を下回る伸びに留まった。

11日
米中通商協議の部分合意への期待が高まった前日の流れを引き継いで108.60円台まで上昇。その後、トランプ米大統領は「米中は重大な第1段階の合意に達した」と発表し、「合意に知財や金融サービス、農産品購入が含まれる」「第1段階の合意に署名したあと第2段階の交渉を開始。
第3段階になる可能性もある」などと述べたがドル/円の上値は伸びなかった。

16日
米9月小売売上高は前月比-0.3%と予想(+0.3%)に反して減少。自動車を除いた売上高も前月比-0.1%と予想(+0.2%)に反して落ち込んだ。
ただ、前回8月分が前月比+0.6%、除自動車も前月比+0.2%に上方修正(速報値:+0.4%、±0.0%)された事からドル売りは一時的だった。

25日
米通商代表部(USTR)が、米中通商協議は「第1段階」の一部事項で仕上げに近付いているとの声明を発表すると円売りが強まった。

28日
トランプ米大統領は「中国との合意署名に関して予定より早く進んでいる」と述べて、中国との通商協議「第1段階」について11月の首脳会談での合意署名は可能との見解を改めて示した。これを受けて円売りが優勢となった。

30日
米7-9月期国内総生産(GDP)・速報値は、前期比年率+1.9%と4-6月期(+2.0%)から小幅に減速したものの予想(+1.6%)を上回った。個人消費が+2.9%と予想(+2.6%)を上回った事が全体の伸びに寄与。
FOMCは予想通りに政策金利を25bp(0.25%)引き下げた。声明から「景気拡大の維持に向けて適切に行動する」の文言を削除して追加利下げの見送りを示唆しつつ、「政策金利の適切な道筋を精査しながら、経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを引き続き注視する」とした。
パウエルFRB議長はその後の定例会見で「現行の政策スタンスは適切であり続ける可能性が高い」などと発言した。

31日
日銀は金融政策の現状維持を発表。声明文中で少なくとも2020年春頃まで低金利を維持としていた金融緩和のフォワードガイダンスを「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定」に変更した。
黒田日銀総裁はその後の会見で「(追加緩和時の副作用について)政策コストがあるから追加緩和できないとは考えていない」「必要ならマイナス金利の深掘りは可能 」などと発言した。

10月の各市場

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10月のドル/円ポジション動向

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11月の日・米注目イベント

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ドル/円 11月の見通し

11月のドル/円相場は、米日双方の10月金融政策発表を無難に消化した事もあって、米中貿易戦争へと焦点が戻っていきそうだ。
南米チリでのアジア太平洋経済協力会議(APEC、16-17日)に合わせて行われるはずだった米中首脳会談は、チリ政府が大規模デモなどを理由に会議そのものを取り止めたためリスケジュールされる事になった。

ただ、トランプ米大統領は「中国との第1段階合意の署名に向けて、(首脳会談の)新たな場所を選定している」と述べており、首脳会談の開催に前向きな姿勢を示している。中国側も「第1段階」の内容については特に反論しておらず、月内にも部分的な通商合意に至る公算が大きいだろう。
これがドル/円相場を押し上げるかどうかは他の条件にもよるが、少なくとも下値を支える可能性は高そうだ。
ドル/円押し上げに繋げるためは、これ以上米景気先行き懸念≒追加利下げ観測が高まらない事が肝心となる。

その意味では、10月米雇用統計と10月米ISM製造業景況指数(いずれも1日)や10月米小売売上高(15日)など、一連の米経済指標の結果が重要だろう。(神田)

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

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ユーロ/円 10月の推移

10月のユーロ/円相場は117.074~121.471円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.2%の大幅高(ユーロ高・円安)となった。
世界景気の先行き懸念からユーロ売り・円買いが先行したが、3日に付けた117.074円を底値に切り返すと、21日には121.40円台まで反発して7月17日以来の高値を記録。

その後も121.00円を挟んで高止まりした。米国と中国の貿易摩擦が一服し、11月の部分通商合意が見込めるまでになった事や、英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡り、英国とEUが離脱協定案の合意に漕ぎ着け、「合意なき離脱」の可能性が大きく低下した事がユーロ/円相場を支援した。

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2日
世界貿易機構(WTO)は、欧州連合(EU)が航空機メーカーのエアバスに不当な補助金を提供している対抗措置として米国が75億ドル相当のEU製品に報復関税を課す事を認めた。これを受けて、米国は対EU関税を18日に発動すると発表した。

8日
独8月鉱工業生産が前月比+0.3%と予想(±0.0%)を上回ると一時ユーロが買われた。しかし、米中通商協議や英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitの先行きに不透明感が強まるとユーロ安・円高に振れた。
なお、ジョンソン英首相がアイルランド国境問題に絡んでメルケル独首相に対し「離脱を巡る合意は本質的に不可能だ」と伝えた事が報じられた。

9日
EUはBrexit問題で、アイルランド・北アイルランド国境を巡るバックストップ(安全策)に期限を設定する提案を準備していると英紙が報じた。
EUは北アイルランド議会が2つの基準で過半数を満たせば一定期間後に新たなバックストップ条項からの離脱を認める用意があるとの事。この報道を受けてポンドが上昇するとともにユーロも上昇したが、EU側がこの報道を否定すると伸び悩んだ。

14日
ユーロ圏8月鉱工業生産は前月比+0.4%と予想(+0.3%)を上回ったが、ユーロ相場に大きな反応は見られなかった。

15日
独10月ZEW景況感調査(期待指数)は-22.8と予想(-26.4)ほどには落ち込まなかったが、前回(-22.5)から小幅に低下。
しかし、「英・EU交渉担当者、離脱合意の草案に徐々に近付いている」とする関係者の発言が伝わると、「合意なき離脱」への懸念が一段と後退。ユーロはポンドとともに急伸した。

17日
「Brexitを巡る協定案の修正で英とEUが合意」との一部報道に続き、ユンケル欧州委員長も合意成立を発表。これを受けてポンドとともにユーロが急伸。
しかし、英与党・保守党政権を閣外協力で支えてきた北アイルランドの民主統一党(DUP)は、英とEUが合意した修正離脱案を支持しない方針と伝わるとポンドとユーロは上げ幅を縮小した。

24日
仏10月製造業PMIが50.5、同サービス業PMIが52.9といずれも予想(50.2、51.6)を上回った事を受けてユーロ買いが強まった。しかし、独10月製造業PMIが41.9、同サービス業PMIが51.2と、揃って予想(42.0、52.0)を下回ると一転してユーロ売りに傾いた。
その後、欧州中銀(ECB)は、予想通りに主要政策金利を0.00%に据え置き、預金ファシリティ金利も-0.50%に据え置いた。声明では「インフレが、目標にしっかりと近づくまで政策金利を現行かさらに低い水準に維持」「来月1日から毎月200億ユーロの債券買入れを開始」「必要な限り債券買入れを継続」と表明。
ドラギECB総裁は退任前の最後の定例会見で「ユーロ圏経済の弱さは長期化している」「下振れリスクは顕著でインフレは低い」「経済見通しのリスクは下方向のまま」などと、暗い見方を強調。自身へ評価を問われると「できる限り最善の方法で職務を全うしようとしてきた」と述べた。

25日
独10月Ifo景況感指数は94.6と予想(94.5)を僅かに上回り前回から横ばいだった。なお、内訳の期待指数は91.5と約10年ぶりの低水準を記録した前回(91.0)から持ち直したがユーロの反応は限定的だった。

10月の各市場

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10月のユーロ/円ポジション動向

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11月のユーロ圏注目イベント

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ユーロ/円 11月の見通し

ユーロが10月に大きく反発したのは、前述の通り米中貿易摩擦と英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡るリスクが大きく低下した事が最大の要因であった。
そうした中、ユーロ圏の景気に底入れの兆しが依然として見えてこない点は、ユーロ反発の持続性を占う上で注意すべきポイントだろう。
特に、中核国のドイツではPMIの他、ZEWやIfoなど景況感関連の指標に10月は目立った改善が見られなかった。
11月は、米中貿易摩擦とBrexitのリスクが後退する中、これらの指標に改善が見られるか注目しておきたい。
ドイツ景況感の底入れが確認できればユーロはもう一段上昇してもおかしくないだろう。

その他、欧州中銀(ECB)は11月から総裁がラガルド前国際通貨基金(IMF)専務理事に替わる。
早速、4日には講演が予定されており、市場の注目が集まりそうだ。一部のECBメンバーは9月に決めたマイナス金利の深堀りや量的緩和(QE)に反対した事が明らかになっており、市場には金融緩和に打ち止め感が漂い始めている。
ユーロ圏の景気に目立った改善が見えない中で、ラガルド新総裁がどのような政策スタンスを示すか注目したい。(神田)

 

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