「英総選挙、豪利下げ観測、米中通商協議」外為総研 House View ポンド/円・豪ドル/円 2019年12月

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ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

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ポンド/円 11月の推移

 11月のポンド/円相場は139.322~141.844円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.3%上昇(ポンド高・円安)した。英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡る懸念が和らいだ事から3カ月連続での上昇となったものの、値動きは2.5円程度に留まり、月間の値幅としては少なくとも過去30年で最低を記録した。

 12月12日に投開票される英総選挙の世論調査で、ジョンソン首相率いる与党・保守党が優勢を保った事から「合意なき離脱」の可能性は一段と低下したと見られる。とはいえ、過去の総選挙における世論調査が必ずしも選挙結果を正確に予測できなかった事から、過度な期待は禁物とのムードも残った模様で、ポンドを大きく押し上げる展開にはならなかった。

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1日
英10月製造業PMIは49.6と予想(48.2)を上回った。米中通商協議の進展期待も相まってポンド/円は上昇した。

6日
12月の英総選挙に向けた世論調査で、ジョンソン首相率いる与党・保守党の支持率が36%に低下(前回38%)した。これを受けて、英国がEUとの合意に基づく「合意あり離脱」の可能性が低下したとの見方からポンドは売りが優勢となった。

7日
英中銀(BOE)は政策金利(0.75%)と資産買入れプログラム(4350億ポンド)の据え置きを発表。同時に公表した議事録で、2人の委員が利下げを提案していた事が明らかになった他、「世界の成長が安定化しない場合、またEU離脱を巡る不透明感が定着したままである場合、金融政策によって回復を後押しする必要が生じる可能性がある」とした事からポンド売りが強まった。
なお、金融政策レポート(旧インフレレポート)では、2020年と21年の成長率見通しを引き下げ、2年後のインフレ率予想も下方修正。その後のカーニー総裁会見でも景気見通しへのリスクは「下方向に傾いている」との認識が示された。

8日
大手格付け会社ムーディーズが英国の格付け見通しを引き下げたと発表。格付けは「Aa2」で据え置いたが、EU離脱を巡る動きの中で政策決定能力と財政規律へのコミットメントが弱まっているとして格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げた。

11日
英7-9月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比+0.3%となり、2期連続のマイナスは回避したものの市場予想(+0.4%)には届かなかった。また、英9月鉱工業生産は前月比-0.3%と予想(-0.1%)以上の落ち込みを記録した。ただ、ポンドの反応は限定的。
その後、英ブレグジット党のファラージ党首が12月の総選挙で、ジョンソン首相が率いる保守党が地盤とする選挙区では候補者を擁立しない方針を表明。保守党が議会で過半数を獲得すればジョンソン首相の離脱協定案が議会を通過しやすくなり、2020年1月末までに「合意あり離脱」が実現する可能性が高まるとの見方からポンドが上昇した。

13日
英10月消費者物価指数は前月比-0.2%、前年比+1.5%と予想(-0.1%、+1.6%)を下回った。ただ、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+1.7%と予想通りの伸びとなった。また、英10月生産者物価指数は前年比+0.8%と予想(+0.9%)を下回った。

19日
英国の12月総選挙に絡み、ジョンソン首相(保守党党首)とコービン労働党党首による初めてのテレビ討論会が行われた。首相は「保守党全体が私の離脱案を支持している」などと述べてBrexitを争点に据えた議論を展開した。
懸念された「失言」などもなく、討論会後の世論調査ではジョンソン氏勝利が51%、コービン氏勝利が49%となった。

22日
英11月製造業PMIは48.3、同サービス業は48.6と、いずれも予想(48.9、50.1)を下回り前回(49.6、50.0)から悪化した。ユーロ圏PMIの悪化を受けて下落したユーロの動きも重しとなり、ポンド売りが強まった。

28日
英調査会社YouGovが、12月の総選挙に関する世論調査に基づく政党別の獲得議席数の予測を発表。ジョンソン首相率いる与党・保守党が下院で359議席を獲得して過半数(326)を上回る見込みが示された。英国が2020年1月までにEUとの合意に基づく「円滑なEU離脱」の可能性が高まったと受け止められポンドが上昇した。
しかし、トランプ米大統領が議会から送付された「香港人権・民主主義法案」に署名した事が伝わると円買いが強まり、ポンド/円は反落した。

11月の各市場

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11月のポンド/円ポジション動向

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12月の英国注目イベント

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ポンド/円 12月の見通し

 12月のポンド相場は、12日に投開票される英総選挙が最大のポイントとなろう。ジョンソン英首相率いる与党・保守党が下院で過半数(326議席)を獲得すれば、ジョンソン首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案の議会承認が見込めるため、2020年1月までに英国がEUから穏便に離脱する可能性が高まる事になる。この場合、ポンドが上昇する公算が大きい。
ただ、市場はこのシナリオが最も蓋然性が高いと見ており、現状のポンド相場にもこのシナリオが相応に織り込まれていると考えられる。このためポンドの上昇は持続しない可能性もある。

 一方、保守党が過半数を獲得できずに少数与党となった場合は、ポンド相場の反応は限られそうだ。離脱協定案の議会通過が不透明になる事から、ポンドは小幅に下落する可能性もあるが、焦点が翌週に始まる新議会の動向に移る事から様子見ムードが広がる公算が大きい。
他方、最大野党・労働党が政権を握る事になれば、ポンドは下落するだろう。労働党は、インフラ企業の国有化や法人税の引き上げなど「反市場主義的」な政策を掲げているためだ。
ただ、労働党の少数与党では連立相手の賛同を得られず「反市場主義的」な政策は実現しない公算が大きい事からポンドの大幅下落は避けられよう。

 労働党が単独で過半数を獲得すれば、ポンドの急落は避けられない見通しだが、その可 能性は非常に低いと見られている。なお、選挙結果は日本時間13日の東京市場の取引中に大勢が判明する見通しとなっている。(神田)

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

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豪ドル/円 11月の推移

 11月の豪ドル/円相場は73.355~75.671円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.6%の小幅な下落(豪ドル安・円高)となった。米中通商協議を巡る懸念が和らいだ事などから75.60円台まで上昇して約4カ月ぶり高値を付けるなど上旬こそ堅調に推移したが、その後は反落。下旬にかけては、米国株が連日で史上最高値を更新するなどリスク選好地合いの中でも上値の重い展開が続いた。

 14日に発表された豪10月雇用統計をきっかけに、豪中銀(RBA)の利下げ観測が再浮上した事が豪ドルの重しとなった。なお、11月の豪ドルは対米ドルで1カ月半ぶりの安値を付けた他、対ユーロや対ポンドでも軟化しており、ほぼ全面安の展開であった。

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5日
RBAは大方の予想通りに政策金利を0.75%に据え置いた。声明も「労働市場を含めた動向を監視し、経済の持続的成長と完全雇用、長期にわたるインフレ目標の達成を支援するために必要であればさらなる金融緩和を行う用意がある」などと、概ね前回を踏襲。
追加利下げに対する強い示唆がなかったため12月の利下げ観測が後退する中、豪ドルが上昇した。

7日
中国商務省は、米中通商協議の進展により、両国が相互に賦課している関税を段階的に撤廃する事で合意したと発表。これを受けて豪ドルが上昇した。ただ、「米国は対中関税撤廃の決定を下していない」「対中関税の撤廃計画はホワイトハウス内部で強い反対がある」との一部報道を受けて伸び悩んだ。

14日
豪10月雇用統計が新規雇用者数1.90万人減、失業率5.3%といずれも予想(1.50万人増、5.2%)より弱い内容となった事を受けて豪ドル売りが強まった。その後、中国10月鉱工業生産が前年比4.7%に留まり予想(+5.4%)を下回ると下げが加速。なお、中国10月小売売上高も前年比+7.2%と予想を下回った。
NY市場では、米中は「第1段階」の通商合意の取りまとめに難航しており、米国が対中関税を発動する12月15日までに合意できない可能性があるとの報道も豪ドルの重しとなった。

15日
クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が、米中通商協議の第1段階の合意に関して「米国側は現在毎日彼らと連絡を取っている」とした上で「われわれは取りまとめに近づいている」と発言。続いてロス米商務長官が「米中は通商協議でほぼ確実に合意するだろう」と述べた。これを受けて豪ドルが上昇した。

18日
「中国政府は米国との通商協議に悲観的」とする米メディア記者のツイートをきっかけに豪ドル/円が下落。中国政府関係筋の話として、トランプ米大統領が関税撤廃は決まっていないと述べた事で中国は困惑(中国は原則合意したと考えていた)しており、協議はするが弾劾手続きや米国の選挙を理由に待つというのが現在の戦略だ、との事。

19日
RBAは5日に開いた理事会の議事録を公表し、政策金利を0.75%に据え置く事を決めた裏で「利下げを検討した」事が明らかになった。これを受けて一時豪ドル売り・円買いが強まったが、一巡後は上海株の上昇などを背景に持ち直した。

20日
米上院は、中国が香港に対し高度な自治を保障する一国二制度を守っているかについて米政府に検証を求める「香港人権・民主主義法案」を賛成多数で可決。中国は「米国が香港人権法案を成立させれば必ず報復する」と表明して米国を強くけん制。
米中の対立がより深まれば通商協議の「第1段階」の合意が遠退くとの見方からリスク回避の円買いが強まった。なお、同法案はその後下院でも再可決され、27日にはトランプ大統領が署名して成立した。

26日
中国は、米国との通商協議で閣僚級の電話会談を行い「第1段階」の貿易協議を巡る対話の継続で合意したと発表。これを受けて豪ドル買い・円売りが強まる場面があった。
なお、ロウRBA総裁は、「豪州が量的緩和(QE)を必要とする可能性は低い」「マイナス金利となる可能性は極めて低い」「QEは政策金利が0.25%に達した場合のみ考慮される」などと発言した。

27日
豪大手銀行ウエストパックが、RBAは2020年2月と6月に利下げを行い、年後半にQEを開始するとの予想を公表。これを受けて一時豪ドル売りが優勢となった。ただ、一連の米経済指標を好感して米国株が続伸する中、豪ドル/円は反発した。

11月の各市場

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11月の豪ドル/円ポジション動向

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12月の豪州・中国注目イベント

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豪ドル/円 12月の見通し

 11月末に米国株が連日で史上最高値を更新するなど、市場はリスク選好モードにあったが、豪ドル/円は上値の重い展開が続いた。株高と豪ドル高の相関が薄れたのが11月相場の特徴であったが、これは豪中銀(RBA)の追加利下げ観測が高まったためと見られる。
市場は、2020年中に少なくとも1回の25bp利下げが行われる確率を8割以上織り込んでおり、2回利下げの確率も4割強織り込んでいる(12月3日時点)。

 また、一部の大手豪銀行は2020年後半にRBAが量的緩和(QE)を開始すると予想している。米中通商協議の第1段階で合意に至ったとしても、もはや高金利通貨とは言えない豪ドルを買う動きには繋がりにくい状況であろう。RBAの追加緩和を巡る市場の見方に目立った変化がなければ12月も豪ドル/円の上値は限られそうだ。
なお、12月3日のRBA理事会では予想通りに政策金利は0.75%に据え置かれ、声明にも早期の利下げを示唆する文言はなかった。にもかかわらず、市場の利下げ織り込み度合いは殆ど変化していない。

 市場の利下げ観測が後退して豪ドルが大きく反発するためには、主要経済指標(特に19日の11月雇用統計)の明確な改善が必要になると見られる。(神田)

 

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