特別レポート「その時ポンドは?英国総選挙と為替市場」 外為総研 神田卓也

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12月12日に英国で行われる総選挙は、下院650議席を巡りジョンソン首相率いる与党・保守党と最大野党・労働党の2大政党が争う構図。以下、ポイントをQ&A形式でまとめた。

Q1:英総選挙が注目されている理由は?

A1:英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitが選挙の最大の争点となっており、選挙結果が2020年1月末に迫ったBrexitの行方を左右しかねないため。

英調査会社YouGovの世論調査によると、現在の英国における最大の問題は「Brexit」であるとする回答が66%に上った。2016年6月の国民投票でBrexitを決めてから3年半が経過。以降、首相が3人も入れ替わるなど政治の混乱が続き、EUとの離脱協定案(離脱の条件を定めた協定)を英議会が批准できないままBrexitは2回にわたり延期された。離脱期限が来年(2020年)1月末に迫る中、今回の総選挙ではBrexitが最大の争点となっている。ジョンソン首相率いる与党・保守党は来年1月末までにEUを離脱する事を公約として掲げている一方、ライバルの最大野党・労働党はEUとの離脱協定を見直した上での2度目の国民投票実施を掲げて追い上げを図っている。政党支持率に関する各種世論調査では保守党がおよそ8%~15%リードしており、YouGovのデータサイエンスを駆使した予測モデルによると、保守党の獲得議席は全650議席のうち過半数を超える359に達する可能性があるとされる(労働党211)。その通りの結果となれば、離脱協定案が議会で批准される公算が大きく、来年1月末の時点でその離脱協定に基づいた「合意あり離脱」が実現する可能性が極めて高くなる。

Q2:世論調査の通りに保守党が過半数獲得する可能性が高いのか?

A2:メインシナリオではあるが過信は禁物だろう。

上述のYouGovによる政党別議席予測モデルは2017年のメイ政権下での総選挙において、他の世論調査が軒並み保守党優位を示す中、保守党の過半数割れを予測していた。今回も、YouGovの予測通りに保守党が過半数を獲得する可能性は小さくないだろう。ただ、懸念もいくつかある。まずは、今回の選挙が天候の不安定な冬場に行われる点だ。降雪など悪天候になれば、保守党の主な支持層である高齢者の投票率が低下する可能性がある。実際に英国の総選挙は天候が安定している初夏に行われる事が多く、12月に行われるのは1923年以来96年ぶりとなる。その他、各選挙区の当選者がひとりだけの「トップ総取り」となる小選挙区制では、そもそも政党支持率と選挙結果がリンクしにくい。YouGovの予測モデルは、当然これらの「変数」もある程度考慮したものであろうが、それでも過信は禁物だろう。

Q3:もし、保守党が過半数を獲得できなければどうなる?

A3:獲得議席数にもよるが、政治混乱が収束せず「合意なき離脱」の可能性が再び高まるおそれもある。

英下院650議席のうち、議長団を除いた実質的な過半数は320程度だ。保守党の議席がこれを大きく下回らなければ(僅かな過半数割れであれば)、野党内にも存在する「離脱派」の賛成で離脱協定案は最終的に議会を通過する公算だ。したがって、「合意なき離脱」の可能性が高まる事もないだろう。一方、保守党が議席を減らし、労働党が過半数を獲得した場合は、EUとの交渉が振出しに戻る事になるため先行き不透明感が広がりかねないが、その後の展開によってはBrexitそのものが中止になるかもしれないとの期待に繋がる可能性もある。他方、実現する可能性は極めて低いものの、最も混乱が深まりそうなのは、ブレグジット党、自由民主党、スコットランド国民党などが予想外の躍進を遂げた結果、保守党、労働党ともに議席を大きく減らし、明確な勝者が不在となる場合だろう。保守党と労働党のどちらかが少数与党となって連立政権は発足すると見られるが、メイ政権下の下院で「強硬離脱派」と「穏健離脱派」と「残留派」が三すくみとなったように、再び議会が機能不全に陥る可能性もある。来年1月のEU離脱についてはまたも延期を要請せざるを得なくなると見られるが、その先は著しく不透明となるだろう。

Q4:選挙結果がポンド相場に与える影響は?

A4:①保守党勝利ならポンド高も勝ちっぷりが問題に、②労働党勝利なら初動はポンド安でも反転の可能性も、③勝者不在ならポンド急落か。

足元のポンド相場は①保守党勝利を見越してすでに上昇している。このため、保守党がかろうじて過半数を獲得した場合や僅かに過半数を割り込んだ場合の上値は限られるかもしれない。「出尽くし売り」を誘発してしまう可能性も否定はできないだろう。ポンドが続伸するには保守党の圧勝が必要となりそうだ。②労働党勝利は市場にとって想定外の結果となるため、初動はポンド売りが強まる公算が大きい。しかし、2度目の国民投票でBrexitが取りやめになるとの期待が支えになれば、売り一巡後に反発する事も考えられる。③少数政党の思わぬ躍進などで「勝者不在」となった場合は「ハングパーラメント(宙吊り議会)」の度合いが一段と強まる事になる。離脱協定案の議会批准が進まずEUとの協議が難航すれば、再び「合意なき離脱」の目が浮上する可能性もある。このため、ポンド相場の急落は避けられそうにない。

 特設ページ<その時ポンドは?英国総選挙と為替市場>

12月12日に行われる英国総選挙。英ジョンソン首相が目指す2020年1月末のEU離脱(ブレグジット)を左右する今回の総選挙について、結果の予想やポンド市場への影響など著名な識者に聞きます。FX個人投資家必見の内容です。

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