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「コロナウイルス巡り市場は混乱」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2020年3月

【外為総研 House View】

外為総研 House View。外国為替(FX
)や国際金融市場、世界経済に関する調査・研究を行い、個人投資家の外為投資に価値ある情報を提供します。

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円2月の推移
・2月の各市場 
・2月のドル/円ポジション動向
・3月の日・米注目イベント
・ドル/円3月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円2月の推移
・2月の各市場
・2月のユーロ/円ポジション動向
・3月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円3月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

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ドル/円 2月の推移

2月のドル/円相場は107.512~112.222円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落(ドル安・円高)した。

市場の関心が新型コロナウイルスに集中する中、上中旬は決め手を欠き109円台を中心にもみ合った。ところが、19日に明確な材料がないまま動意付くと20日には約10カ月ぶりに112.222円まで急伸。新型コロナウイルスを巡り、日本で感染拡大の懸念が高まった一方、米国には影響が小さいとの見方から円安・ドル高に振れた。しかし、ウイルスの感染がイランやイタリアにも広がり始めると、東アジアだけのリスクではなく世界レベルの脅威になるとの見方から世界中で株価が下落。米長期金利にも急激かつ大幅な低下圧力がかかったため、円高・ドル安へと流れが転換した。

その後、南米やアフリカなどへも新型コロナウイルスの感染が拡大する中、世界保健機関(WHO)が世界的危険度を最高レベルの「非常に高い」に引き上げた28日には、一時107.512円まで下値を切り下げて約4カ月半ぶりの安値を付けた。

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3日
米1月ISM製造業景況指数は50.9と予想(48.5)を上回り、半年ぶりに節目の50.0を超えた。
内訳の新規受注指数や生産指数が大幅に伸びた他、雇用指数も46.6に改善(前回45.2)。これを受けてドル買いが強まったが、ISMの調査委員長が「新型コロナウイルスが2月に影響する可能性は高い」との認識を示した事などから、ドルは買い一巡後に失速した。

7日
米1月雇用統計は、非農業部門雇用者数が22.5万人増と予想(16.5万人増)を上回る伸びとなった。一方で失業率は3.6%と前月から0.1%ポイント悪化して予想(+3.5%)を上回ったが、労働参加率は63.4%に上昇(予想、前回ともに63.2%)して、2013年6月以来の高水準を記録した。
平均時給は前月比+0.2%、前年比+3.1%(予想:+0.3%、+3.0%)であった。この雇用統計に対するドル/円の反応は限定的で、米国株が安く始まると下落に転じた。

11日
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による半期に一度の議会証言に先立ち、「見通しへのリスクは残っている」「新型コロナウイルスの感染拡大による影響を注意深く監視」「重大な判断の見直しがなければ政策が適切である可能性が高い」などとする証言原稿が公表された。
その後の証言では「米経済は非常に良い状態にある」としながらも「第1四半期の米経済は、新型肺炎による中国の影響を受ける可能性がある」との懸念を表明した。

14日
米1月小売売上高は前月比+0.3%と予想通りで、自動車を除いた売上高も前月比+0.3%と予想に一致。その後に発表された米1月鉱工業生産は前月比-0.3%と予想(-0.2%)を下回り、同設備稼働率は76.8%と予想通りであった。
また、米2月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値は100.9と予想(99.5)を上回った。

17日
日本10-12月期国内総生産(GDP)・1次速報値は前期比年率-6.3%と、5四半期ぶりにマイナス成長となり、市場予想(-3.8%)を大幅に下回った。

24日
新型コロナウイルスの感染が中国から、韓国やイラン、イタリアなどへも拡大する中、週明けの取引開始直後に円買いが強まるなど、ドル/円は不安定化。その後、感染拡大で世界の経済活動が停滞するとの懸念から米国株が大幅安となり、NYダウ平均が1000ドル超下落する中、円買いが加速した。

27日
NYダウ平均が1200ドル近く続落して過去最大の下げ幅を記録。これを受けて円買いが強まった。なお、米10-12月期国内総生産(GDP)・改定値は、予想通りに速報値から修正なしの前期比年率+2.1%となった。また同個人消費は+1.7%と予想通りに速報値(+1.8%)から下方修正された。
同時に発表された米1月耐久財受注は前月比-0.2%と予想(-1.5%)ほどには落ち込まなかった。なお、変動の大きい輸送用機器を除いた受注額は+0.9%と予想(+0.2%)を上回った。

28日
パウエルFRB議長が、新型コロナウイルスによる経済活動へのリスクに言及し、経済を支えるために「適切に行動する」との緊急声明を発表。これを受けて3月利下げ観測が広がりドルが売られるとドル/円は107.50円台まで下値を切り下げた。
ただ、一時下げ幅が1000ドルを超えていたNYダウ平均が350ドル安まで下げ幅を縮める中、ドル/円は108円台を回復した。

2月の各市場

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2月のドル/円ポジション動向

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3月の日・米注目イベント

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ドル/円 3月の見通し

中国に端を発した新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、経済活動の停滞懸念が強まり、2月後半には世界中で株価の下落が進んだ。2月最終週だけでNYダウ平均は3500ドル超下落、日経平均も2200円超、独DAX指数は1600ポイント超下落した。

こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利下げに動くとの観測が高まっており、FEDウォッチによると市場は3月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpではなく50bpの利下げが行われる確率を100%織り込んだ。その他、FRBは18日のFOMCを待たずに緊急利下げに動くとの見方も出ている。

また、一部には他の主要中銀も協調して金融緩和に動くとの観測もある。まずは、こうした金融政策面でのウイルス対策が注目される。同時に、金融緩和によって市場心理の悪化に歯止めがかかるか注目したい。米国の利下げ自体はドル安要因となるが、世界の株価が持ち直すようなら円安要因にもなり得る。もちろん、金融政策でウイルスの感染拡大が止められるわけではない。各国の感染拡大防止に向けた取組みが重要になるのは言うまでもないだろう。

その他、新型ウイルスに隠れて注目度が低下しているが、佳境に入りつつある米大統領選の候補者選びにも注目したい。米民主党では中道派のブティジェッジ候補が選挙戦からの撤退を表明。3日のスーパーチューズデー(カリフォルニアやテキサスなど14州で予備選挙)からは、中道派のブルームバーグ前NY市長が本格参戦する。序盤戦をリードする左派のサンダース氏、中道派のバイデン氏にブルームバーグ氏を加えた3つ巴の戦い(急進左派のウォーレン氏も加わる可能性)が注目される。なお、左派=リベラル派の大統領候補に対する市場の嫌悪は根強く、スーパーチューズデー後もサンダース氏がリードを維持するようなら米株安・ドル安が加速する可能性も捨てきれない。

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

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ユーロ/円 2月の推移

2月のユーロ/円相場は118.375~121.391円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.9%下落(ユーロ安・円高)した。

上旬はドイツの経済指標に冴えない結果が目立ち、ユーロ圏景気の脆弱さが意識されてユーロ/円は中旬にかけて売り優勢の展開となった。しかし、中国で新型コロナウイルスの感染ペースが鈍化した一方、日本で感染の拡大が見られ始めると19日は円売り主導で急反発。20日には約1カ月ぶりに121.30円台まで上昇した。

その後、イタリアでも新型ウイルスの感染が急拡大した事で下落したが、対ドルでユーロを買い戻す動きが強まったためユーロ/円は下げ渋った。ただ、世界保健機関(WHO)が新型ウイルスの世界的危険度を最高レベルに引き上げた28日にはリスク回避の円買いが主導して118.30円台へと下落。

下旬のユーロ/円相場はユーロ/ドルの反発とドル/円の反落に挟まれて方向感が出にくかった。

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6日
独12月製造業新規受注は前月比-2.1%と予想(+0.6%)に反して大幅に落ち込んだものの、ユーロの反応は限定的だった。ただ、その後は翌日に米1月雇用統計を控えてドル買いが優勢となりユーロ/ドルが軟化したためユーロ/円も弱含んだ。

7日
独12月鉱工業生産は前月比-3.5%と予想(-0.2%)を大幅に下回った。仏12月鉱工業生産も前月比-2.8%と予想(-0.3%)以上の落ち込みとなり、ユーロ売りが強まった。

11日
ラガルド欧州中銀(ECB)総裁は、欧州議会に出席し、「金融政策は唯一のものではない」「緩和措置が維持される期間が長引けば長引くほど副作用が強くなるリスクは増大する」などと発言。これを受けてECBの追加緩和期待が後退するとユーロは強含んだ。

12日
ユーロ圏12月鉱工業生産は前月比-2.1%と予想(-2.0%)を下回って減少。11月分は前月比+0.2%から±0.0%に下方修正された。景気不安が再燃する形でユーロ安が進行。ドル高の流れも相まって、ユーロ/ドルが2年9カ月ぶりの安値まで下落する中、ユーロ/円も119.60円台に軟化した。

14日
独10-12月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比±0.0%と、市場予想(+0.1%)を下回ったものの、一部で可能性が取り沙汰されていたマイナス成長には陥らなかった。なお、前年同期比では+0.3%と予想(+0.2%)を上回る伸びとなったが、7-9月期(+1.1%)からは大きく鈍化した。ユーロの反応は限定的であった。

18日
独2月ZEW景況感調査(期待指数)は8.7となり、市場予想(21.5)および前回(26.7)を大幅に下回った。ZEWは「新型ウイルスの感染拡大が世界貿易にマイナスの影響を及ぼすとの懸念が景況感の冷え込みにつながっている」との見解を示した。

20日
ECBは1月理事会の議事録を公表。「前向きなリスク評価は回復への自信を育み、景気を後押しする可能性があるが、経済についてのより楽観的な見通しを示すに当たっては慎重さが求められる」との見解で一致した事が明らかとなった。

24日
独2月Ifo景況感指数(期待指数)は93.4と、市場予想(92.1)に反して前月(92.9)から上昇。ただ、イタリアで新型コロナウイルスの感染者が200人を超え6人が死亡した事を受けて、同国を中心に欧州株が大幅に下落する中、ユーロ/円の上昇はごく一時的だった。
その後、NYダウ平均の下げ幅が1000ドルを超えるなど米国株も大幅安となる中、120円台を割り込んだ。

26日
「ドイツのショルツ財務相は債務に苦しむ地方州政府の歳出余地を広げるため、憲法に基づく借入制限の一時的な解除を検討している」との報道が伝わると、財政出動への期待から独長期金利の上昇とともにユーロ買いが強まった。
ただ、新型コロナウイルスを巡る懸念が重しとなり伸び悩んだ。

28日
新型コロナウイルスの感染が南米やアフリカにも広がる中、WHOは世界的危険度を最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。
リスク回避の円買いが強まる中、ユーロ/円は約4カ月半ぶりに118.30円台まで下落した。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利下げを示唆した事を受けて米国株が下げ幅を縮小するとユーロ/円も119円台に値を戻した。

2月の各市場

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2月のユーロ/円ポジション動向

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3月のユーロ圏注目イベント

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ユーロ/円 3月の見通し

ユーロ/ドルとドル/円の「合成レート」であるユーロ/円相場は、方向感を掴みづらい展開が続きそうだ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて金融市場が混乱する中、米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅な利下げ観測が強まっており、米利下げ観測はユーロ/ドルを押し上げる半面、ドル/円を押し下げる可能性がある。

一方で、金融緩和や感染拡大防止策などによって世界の金融市場が落ち着きを取り戻せば(特に株価が持ち直せば)円が売られやすくなる半面、低金利のユーロにも売りが入りやすくなろう。

また、新型コロナウイルスの感染拡大を中国サプライチェーンのリスクとして捉えた場合、相対的に対中貿易依存度が低い米国への打撃は小さく、ドイツおよび日本への打撃は大きいと言える。当面のユーロ/円相場は不安定化が避けられそうにないが、一方的に下落する展開や、急激かつ大幅に反発する展開は見込みにくい。

3月のユーロ/円相場は、2月の取引レンジ(118.375~121.391円)を概ね踏襲すると予想され、118円割れや122円超えの可能性は大きくないと見る。