「新型ウイルス巡る不安と協調政策への期待」外為総研 House View ポンド/円・豪ドル/円 2020年3月

【外為総研 House View】

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目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円2月の推移
・2月の各市場
・2月のポンド/円ポジション動向
・3月の英国注目イベント
・ポンド/円3月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円2月の推移
・2月の各市場
・2月の豪ドル/円ポジション動向
・3月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円3月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

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ポンド/円2月の推移

2月のポンド/円相場は137.529~144.956円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.2%下落(ポンド安・円高)した。ポンド固有の決定打に欠ける中、上中旬は140円台後半から143円台前半のレンジ内でもみ合った。

新型コロナウイルスの感染が日本でも拡大するリスクが意識された事などから円安が進むと、21日には144.956円まで上値を伸ばして年初来高値を更新したが、その後は月末にかけて急反落した。

東アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大を意に介せず上昇していた欧米株が、イランやイタリアに感染が広がった事をきっかけに一気に調整。悲観ムードが高まった28日には、世界保健機関(WHO)が危険度を最高レベルに引き上げた事もあって世界的に株価が大幅続落となる中でポンド/円は約4カ月半ぶりに137.50円台に沈んだ。

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3日
欧州市場に入ると英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡る不透明感からポンドとユーロが下落。年末までの「移行期間」内にEUとの自由貿易交渉が纏まらないリスクが意識された。

なお、ジョンソン英首相はこの日の演説で「EUのルールを受け入れての貿易合意は必要ない」と改めて強調。これに対し、EU側の首席交渉官であるバルニエ氏は「EUは移行期間の終了までに英国との協議で合意できない可能性も含め、すべてのオプションを準備し続ける」などと述べた。

4日
英1月建設業PMIは48.4と市場予想(47.1)を上回った。欧州連合(EU)との貿易交渉を巡る不透明感から一時下落していたポンド/円は、これを受けて142円台を回復した。

5日
「EU当局者は金融危機後に成立させた第2次金融商品市場指令(MiFID2)のうち、英国に譲歩した部分の修正を検討している」との報道を受けてポンドが上げ幅を縮小。議論をリードする欧州議会の議員は「欧州最大の金融市場がいまやEUの外(英ロンドン)にあるという事実は、金融サービスの規則全般の同等性を変える」と主張した。

11日
英10-12月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比±0.0%、前年比+1.1%(予想±0.0%、+0.8%)であった。英12月鉱工業生産は前月比+0.1%に留まり予想(+0.3%)を下回った一方、英12月貿易収支は8.45億ポンドの黒字と、予想(100.00億ポンドの赤字)に反する結果となった。これらの発表後にポンド買いがやや強まった。

13日
「英国のジャビド財務相が辞任した模様」と報じられるとポンド売りが先行したがすぐに切り返して上昇に転じた。財政規律を重視するジャビド氏の辞任によって、ジョンソン政権が英経済を支えるための財政拡大に動きやすくなるとの見方がポンドの反発に繋がった。その後、正式にジャビド氏の辞任が発表され後任にスナック氏が就く事も発表された。

18日
英1月失業保険申請件数は0.55万件、同失業率は3.4%(前月:0.26万件、3.4%)であった。また、10-12月ILO失業率は3.8%と予想通りで、10-12月週平均賃金は前年比+2.9%と予想(+3.0%)を下回った。

英雇用統計に対するポンドの反応は小さかったが、直後にスナック英財務相が3月11日に予定通り予算案を発表すると表明した事を受けて上昇した。財務相は「英国民への約束を果たす内容になるだろう」とし、拡張的な予算案となる事を示唆した。

19日
本邦年金基金の円売り観測などを背景に東京市場から円が全面安となり、NY市場ではS&P500やナスダックが史上最高値を更新する中で円売りが加速した。安全資産の金が値上がりした点などから見て円売りの背景はリスク選好の高まりではなく、新型肺炎の感染拡大が中国から日本に移ったためとの見方もあった。

20日
英1月小売売上高は前月比+0.9%と市場予想(+0.7%)を上回り、自動車燃料を除いた売上高も前月比+1.6%と予想(+0.8%)を大幅に上回った。

28日
新型コロナウイルスの感染が南米やアフリカにも広がる中、WHOは世界的危険度を最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。リスク回避の円買いが強まる中、ポンド/円は約4カ月半ぶりに137.50円台まで下落した。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利下げを示唆した事で米国株が下げ幅を縮小すると138円台に値を戻して取引を終えた。

2月の各市場

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2月のポンド/円ポジション動向

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3月の英国注目イベント

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ポンド/円 3月の見通し

3月のポンド/円相場は、①2日に始まる欧州連合(EU)との貿易協定協議の行方、②11日に発表される春季財政報告(予算計画)の内容、③16日に就任するベイリー新英中銀(BOE)総裁の舵取り、に加え④新型コロナウイルスを巡る情勢など注目点が多岐に渡る。

①については協議がスタートしたばかりだが、自由貿易協定(FTA)の締結に向けた双方の主張には隔たりが大きい。ジョンソン英政権は6月末までにEUと大筋合意できなければ、秩序ある移行期間の終了(事実上のEU離脱)に向けた準備に焦点を移す方針を示している。それだけに、「合意なき離脱」への不透明感はくすぶり続けよう。

②の財政報告では、財政拡大に前向きではない前財務相が辞任(事実上の更迭)した事もあって、市場は拡張的な予算を期待している。財政収支の悪化は本来なら通貨安要因だが、景気を下支えするとの見方から足元では通貨高要因として受けとめられそうだ。財政拡大の規模が焦点となろう。

③ベイリー新BOE総裁は2013年から2016年までBOE副総裁を務めたが、金融監督担当であり金融政策委員会(MPC)メンバーではなかった。このため、政策手腕は未知数との見方が多く、公式発言の場が待たれている。なお、現時点では26日のBOE理事会も含めて記者会見等は予定されていない。

④新型コロナウイルスの感染拡大を巡っては、各国が金融財政政策によって経済面を支える姿勢を打ち出した事で、2月末に見られた総悲観ムードは緩和している。もっとも、金融緩和や財政拡大でウイルスの感染拡大を止められるはずもない。政策を発動して時間を稼ぐ間に効果的な拡散防止策を打ち出せるかがカギとなろう。

3月のポンド/円相場は、上記4つの注目ポイントを中心材料として不安定な値動きが続く公算が大きいと見る。

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

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豪ドル/円2月の推移

2月の豪ドル/円相場は69.376~74.471円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.0%の下落(豪ドル安・円高)となった。

下落率は前月の約4.9%に比べればやや小さかったものの2カ月続落となり、28日に付けた69.376円は2009年4月以来、約11年ぶりの安値となった。

当初は、新型コロナウイルス感染拡大の影響は小さいとの見方から東アジア以外の株価は騰勢を維持していたが、月末にかけてウイルスの感染が中国以外に広がり始めると世界の株式市場は歴史的なペースで下落。同時に豪ドル/円にも強い下押し圧力がかかった。

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3日
新型コロナウイルスによる春節(旧正月)休暇の延長で1月23日以来の取引となった上海株は、寄付きから8%を超えて大幅に下落。ただ、中国当局が1.2兆元に上る資金供給を行った事などから、市場心理は悪化しなかった。豪ドル/円は、豪12月住宅建設許可件数が前月比-0.2%と予想(-5.0%)ほどには落ち込まなかった事もあって小幅ながらも上昇した。

4日
豪中銀(RBA)は予想通りに政策金利を0.75%に据え置いた。一部に利下げ観測がくすぶっていた事や、新型コロナウイルスの影響などが懸念される中でも、声明で成長見通し(2020年2.75%、2021年3.00%)を維持した事から豪ドルが上昇した。

5日
ロウRBA総裁は講演で「経済は依然として改善に向けた緩やかな転換点を通過している」「最近のインフレや失業率は正しい方向に向かっていることを表している」「金利はすでに非常に低い」「さらなる緩和の根拠はみられるが、低金利のリスクもある」などと発言した。追加利下げに前向きではないと受け止められ、豪ドルは小幅に上昇した。

その後、中国メディアが「浙江大学の研究チームが新型肺炎の効果的治療薬を発見」と伝えた事を受けて豪ドル/円は上げ幅を拡大した。

7日
ロウRBA総裁は議会証言で「追加利下げに伴うリスクは現時点でメリットを上回る」と述べて利下げに距離を置いたが、「ただ、失業率が悪化すれば状況が変わるかもしれない」として、雇用情勢を注視する姿勢を示した。RBAは金融政策報告でも、「2020年末の失業率は現行水準の5.1%、21年末は4.9%、22年年央は4.8%と予想」とした上で「失業率が著しく上昇し、インフレ目標達成で進展がなければ、一段の金融緩和の方向に議論は傾く」とした。

18日
RBAは2月4日の理事会の議事録を公表。「2月会合で追加利下げについて協議」した事が明らかとなり豪ドルは下落した。「金利が長期にわたって低水準に留まる必要があるという見方は妥当」としながらも、豪経済については「鉱業投資や住宅投資、消費の回復に支えられ、成長は改善が見込まれる」「森林火災の影響が一時的には成長の重しとなったが、立ち直りに伴い国内総生産(GDP)へのマイナスの影響は反転しそうだ」などとやや楽観的な見通しが示された。

19日
本邦年金基金の円売り観測などを背景に東京市場から円が全面安となり、NY市場ではS&P500やナスダックが史上最高値を更新する中で円売りが加速した。安全資産の金が値上がりした点などから見て円売りの背景はリスク選好の高まりではなく、新型肺炎の感染拡大が中国から日本に移ったためとの見方もあった。

20日
豪1月雇用統計で失業率が5.3%に上昇(前回:5.1%、予想:5.2%)した事を受けて豪ドル売りが強まった。雇用統計のその他の項目は、新規雇用者数が1.35万人増、労働参加率も66.1%と市場予想(1.00万人増、66.0%)より良好であった。その後、中国当局はローンプライムレート(LRP)の引き下げを発表したが、引き下げ幅が予想通りだったため豪ドルは続落した。

24日
新型コロナウイルスの感染が中国から、韓国やイラン、イタリアなどへも拡大する中、週明けの取引開始とともに円買いが先行。その後円は売り戻される場面もあったが、NYダウ平均が1000ドル超下落する中、再び円が強含んだ。

28日
新型コロナウイルスの感染が南米やアフリカにも広がる中、WHOは世界的危険度を最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。リスク回避の円買いが強まる中、豪ドル/円は69.38円前後まで下値を切り下げた。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利下げを示唆した事で米国株が下げ幅を縮小したため70円台に値を戻して取引を終えた。

2月の各市場

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2月の豪ドル/円ポジション動向

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3月の豪州・中国注目イベント

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豪ドル/円 3月の見通し

世界各国が協調して新型コロナウイルス対策に乗り出す中、注目された3日の豪中銀(RBA)理事会は、25bpの利下げを決めて政策金利を過去最低の0.50%とした。

声明では「コロナウイルスの世界的な発生は、豪州での完全雇用とインフレ目標への進展を遅らせると予想される。したがって、理事会は雇用と経済活動に追加の支援を提供するために、金融政策をさらに緩和することが適切であると判断した」と利下げの背景を説明。その上で「引き続き状況を綿密に監視し、コロナウイルスの経済への影響を評価する。理事会は、豪州経済を支援するために金融政策をさらに緩和する用意がある」と表明した。

なお、RBAの利下げを受けて豪ドルは上昇している。RBAに続き、米連邦準備制度理事会(FRB)など他の中銀も金融緩和に動き世界経済を下支えするとの期待(≒株高期待)が豪ドルを押し上げたと見られる。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大がさらに広がれば、一層の経済活動の停滞懸念に繋がり、RBAの追加利下げも現実味を帯びてくる。協調緩和の神通力が有効なうちに、ウイルス感染の拡大が止まるか(止められるかどうか)が、当面の焦点となろう。

2月末に付けたほぼ11年ぶりの安値69.376円が豪ドル/円の当面の底値となるかどうかは新型コロナウイルス情勢にかかっていると言えそうだ。

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