【海外特派員】トルコ中央銀行による政策金利の引き下げと新コロナウイルス対策に伴う政策

1.経済政策

 3月17日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を2日前倒して開催して政策金利の1週間物レポ金利を1%引き下げて9.75%とすることを決定し、政府目標である政策金利一桁を達成しました。
翌18日には、エルドアン大統領主催の新型コロナウイルス対策調整会合を開催し、4時間近くを要した会合の後、大統領自らがテレビで総額1,000億リラ(約1兆7,000億円)規模の新型コロナウイルス対策を発表しました。

 新型コロナウイルスに関連する主な経済政策としては、小売業、ショッピングセンター、自動車、テキスタイル、ホテル、エンターテインメントなど、新型コロナウイルスの重大な影響を受ける分野の業者に対して、付加価値税や社会保障費の第2四半期の納付期限を6か月延長する、宿泊税を11月まで減免する、国内線の航空運賃の付加価値税を3か月間18%から1%に減税する、資金繰りの苦しい企業は、銀行からの借入金と金利の支払いを3か月延納でき、必要に応じて追加で財政支援を受けられる、など新型コロナウイルスの影響を受けやすい業界や企業に対して手厚い対策が盛り込まれています。

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写真①


一般市民に対しては、3週間にわたり仕事や買い物などを除き、できる限り外出しないこと(命令ではなく要請)、65歳以上に対してマスクやコロンヤ(トルコで使われているエチルアルコール配合、アルコール度数60~80度のオーデコロン、消毒液※写真①)を配布すること、80歳以上の一人暮らしの高齢者に対して、銀行や病院に行かなくても済むように役所の職員が各家庭を訪問して年金を手渡し、健康や買い物関連のサービスを提供すること、低所得家庭のために20億トルコリラ(約3,500億円)の財源を確保すること、最低年金額を1,500リラ(約25,300円)に引き上げることなど弱者に寄り添った対策が盛り込まれています。

 この他に、原油価格の下落を受けて、3月10日から19日の間にガソリンとディーゼルの1リットル当たりの価格を3回にわたってそれぞれ1.45リラと1.03リラ引き下げ、イスタンブールではガソリンが5.19リラ、ディーゼルが5.18リラとなっています。
2008年の原油価格高騰時、トルコの1リットル当たりのガソリン価格は1.4ユーロと世界一高いと揶揄されていましたが、現在は0.74ユーロ相当まで下がっています。

2.新型コロナウイルス関連の対策

 中国で新型コロナウイルスに発症した患者が増加した1月以降、専門委員会の設置、症例ガイドの作成、国産診断キットの開発、早い時期での中国、イラン、イタリアなど感染諸国のシャットアウト(国境の閉鎖、航空便の運休)、公共交通機関の消毒作業など、国内に新型コロナウイルスを侵入させない対策を徹底して行ってきました。
また、家庭や職場での石鹸を使った手洗いや、栄養価の高い食品を摂取することを奨励してきました。
したがって、近隣のイランやヨーロッパ諸国で感染者が急速に増加しているにもかかわらず、感染者の発生を周辺諸国より約1か月半遅らせることができ、その間にあらゆる対策を準備してきました。

 ヨーロッパから帰国した国民が最初の感染者であると判明したのは3月10日ですが、早くも12日には、小学校から高等学校まで4月の休暇を前倒して16日から1週間休校し、その後はオンライン授業に移行すること、大学は3週間休校すること、公務員は国会議員も含め、承諾を得ずに国外への出国を禁止すること、スポーツは無観客で試合を行うことを発表しました。
妊娠中、子育て中、障害者、60歳以上の公務員には12日間の休暇が与えられました。

 さらに、14日にはウムレ(イスラム教の犠牲祭前後にメッカに巡礼する大巡礼以外の時期に、メッカに巡礼に行くこと、小巡礼とも言う)からの帰国者数人が感染者と判明したことから、15日から数都市にある大学の学生寮にサウジアラビアからの帰国者約1万人が隔離され、大学の寮に残っていた大学生は強制退去させられました。
14日までにヨーロッパ9か国からの航空便が運休し、16日までにチャーター便で帰国した国民は、やはり大学の寮で14日間隔離されています。

 また、16日からバーやディスコの閉鎖、17日からは、カフェ、ジム、遊園地、プール、サウナ、温泉、マッサージサロンなどの娯楽施設の閉鎖、18日から国立博物館の閉鎖、19日には全スポーツの試合の禁止、金曜日の礼拝の禁止、集団での礼拝の禁止など、人が集まりやすいイベント、行事、場所の中止や閉鎖を行っています。
21日夕方から理容室と美容院の営業禁止、22日からピクニックやバーベキューの禁止、デリバリーを除くレストランの営業の禁止措置が取られました。
さらに、65歳以上の高齢者と高血圧や糖尿病など慢性疾患を持つ人々の外出禁止令が発令され、違反者には3,150リラ(約53,000円)の罰金が科されます。

 大勢の人々がショッピングに出かけ、フードコート、映画館に集まることで批判を浴びているショッピングセンターは、営業を自粛するところが増え、ショッピングセンター内にあるスーパーマーケットを除き、大半の店舗が閉まっています。

 トルコのナショナルフラッグキャリアであり、半官半民のターキッシュエアラインズは、27日から4月17日まで香港、モスクワ、アディスアベバ、ニューヨーク、ワシントン便以外の全国際線を欠航させることを決定しました。

3.トルコ国内の様子

 3月1日には、世界各国からランナーが参加する市民マラソンが行われ、8日には国際女性デーに合わせてコンサートが開催されるなど、トルコ国内ののんびりした空気が一変したのは3月10日の深夜に初の感染者が発表されてからです。
11日には、大都市のマーケットで買い溜めをする人々がテレビのニュースで放映され、買い溜めの風潮が次第に国民の間で広がっていきました。
学校の休校が発表されると、その傾向に一層拍車がかかり、どのマーケットでも、平日にもかかわらずカートに一杯買い物をする人々の姿が見られました。
売れ筋の商品は、マスク(薬局でのみ購入可)、コロンヤ、トイレットペーパー、ひよこ豆、いんげん豆、レンズ豆などの乾物類、マカロニやスパゲッティ(トルコは世界有数のマカロニ、スパゲッティの原料となるデューラム小麦の生産地)、漂白剤(家庭内の消毒用)、料理用のオイル、ロングライフ牛乳、炭酸飲料などです。

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写真②


トルコは食糧を100%国内で調達できる国であり、テレビでは、乾物類は2~3年分のストックがあること、マカロニやコロンヤは増産体制に入り、各家庭に行き渡るほど十分なストックを確保できるようになることを説明し、エルドアン大統領自ら、買い占めに走らないように呼びかけています。
実際マーケットに行っても、人手不足のためか、棚で一時的に商品がなくなることがありますが(※写真②)、翌日には補充されており、今までのところドルに対するトルコリラの若干の下落による便乗値上げはみられないようです。

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写真③


また、パザールと呼ばれる週1回地域ごとに立つ市場には、いつもと変わらず野菜や果物、乳製品が豊富に売られています。
(※写真③)
 外出自粛例が出た19日以降、繁華街での人通りも少なくなり、公共交通機関は利用者が減少する傾向にありました。
ところが、21日の土曜日、好天も手伝ってトルコ国民の楽しみであるピクニックやバーベキューに行く人が後を絶たず、「社会的距離」が全く守られていないこと、どの都市でも新型コロナウイルスに罹患すると重症化するリスクが高い高齢者の外出が後を絶たないことに業を煮やした政府が、同日夕方、ピクニックとバーベキューの禁止令、65歳以上の高齢者と慢性疾患を持つ人々の外出禁止令を発令し、人が集まりやすいレストランの営業停止(デリバリー以外)を決断しました。

 トルコ国内では「Evde Kal(家に留まれ)」や「Evde Hayat Var(家の中に生活がある)」という政府主導のスローガンが掲げられ、TV画面の右上隅にも表示されています。
また、トルコの大手携帯キャリアであるTurkcellとVodafoneはそれぞれ、携帯画面に自社のキャリア名の代わりに “Evde Hayat Var”、”Evde Kal”と表示し、政府の政策を後押ししています。

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写真④


また、自宅に留まるようにというメッセージをエルドアン大統領自らが国民の携帯電話に発信していることから、トルコ政府は新型コロナウイルスの急速な拡大に相当神経を尖らせていることがうかがわれます。
(※写真④)
 短期間にこれほど厳しい政策を打ち出したのは、3月10日に初の感染者、17日に初の死者が出て、新型コロナウイルスが国内に急速に拡大していることにあります。
これまでは検査ができる医療機関が不足し、検査体制が整っていませんでしたが、21日の夕方、今後は国立病院だけではなく、私立病院でも検査できるようになりましたので、さらに患者が増加することが予想されます。
22日現在の感染者は1,236人、死者は30人となっていますが、パニックになりやすい国民性を恐れているのか、感染者や死者が出た地域は報道されていません。

4.今後の課題

 ウムレや海外からの帰国者は、学生寮に隔離されていますが、その決定が下される前に学生寮を出て帰郷した学生の部屋は私物が残され、掃除が行き届いていないなど、隔離者は衛生的に理想的とはいえない環境に置かれています。

 政府は国外に取り残された留学生をはじめとする国民をチャーター便でトルコに帰国させ、隔離施設の確保に追われていますが、海外帰国組からも感染者が出ており、濃厚接触者が多数いるおそれがあります。

 「自宅にいるように」という政府の要請は一応3週間を期限としていますが、期待したような成果が上がらないと、「外出禁止令」に格上げされる可能性があります。
感染者や死者が増加すれば、期限が延長される可能性があります。
4月24日からは、イスラム教の義務のひとつであるラマザン(断食)が始まります。
ラマザン明けのイフタル(日没後の食事)は、家族や友人を誘い合って一緒に楽しむという習慣がありますので、この時期まで外出の自粛が延長されると、国民がどの程度その措置に従えるかは未知数です。

 21日、新型コロナウイルスの検査を国立病院だけではなく、私立の病院でも無料で受け入れることが発表されました。
トルコでは、15分間で結果がわかる独自のキットを導入しています。
不安にかられた大勢の国民が病院に検査を受けに行くことが予想され、院内感染の危険性が高まっています。
 
 企業では無給の長期休暇を受け入れる従業員の募集や、観光業での従業員の解雇の動きが出てきています。
小売業やサービス業では、スーパーマーケットや薬局を除き従業員が自宅での待機を余儀なくされています。
休業が長引くと、資金繰りに行き詰まった中小企業、小売業者、サービス業者が倒産、廃業し、社会保障費、クレジットカード、家賃、住宅や車のローンなどを払えない国民が続出するおそれがあります。



PickUp編集部 トルコ特派員

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