「最後のミニ・チューズデー」が次の焦点に 吉崎達彦(双日総研チーフエコノミスト) 米大統領選2020

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「最後のミニ・チューズデー」が次の焦点に

新型コロナウイルスの猛威は大統領選に大きく影響

ほんの1か月前の3月3日、スーパーチューズデーにおけるジョー・バイデン候補の圧勝は大ニュースであった。しかし状況は一変した。もはや大統領選挙どころではない。3月冒頭時点の米国における新型コロナウイルス感染者数はまだ100人以下であった。それが4月5日時点で感染者数は30万5820人、死者は8291人にも達している。

選挙手法も一変した。候補者集会は開かれなくなり、討論会も無観客で行われる。選挙戦はデジタルオンリーで、やむを得ず人が集まるときも「ソーシャル・ディスタンス」を意識しなければならない。

予備選挙もリスクを伴うので、投票日程はどんどん先送りされている。4月7日の投票を予定していたウィスコンシン州は、直前になって5月26日への変更を決めた。激戦州と目されるオハイオ州やペンシルベニア州は6月2日の投票を決めており、この日は11州が集中する「最後のミニ・チューズデー」となる見込みである。

大統領候補を正式決定する党大会も、7月の予定が8月に延期された。場所はウィスコンシン州のミルウォーキーで変わらないが、「ヴァーチャル党大会」になるかもしれない。もっとも、大統領選挙の年にはかならず重なる夏季五輪大会が1年先に延期となっている。もう何が起こっても不思議ではない。
かくも視界不良の2020年米大統領選挙であるが、現時点で確実に見通せることを考えてみよう。以下、3点挙げてみたい。

1. 11月3日にはかならず大統領選挙が行われる。

大統領選挙の中止や延期を懸念する声があるが、合衆国憲法や連邦法の規定上、投票日を変更する権限は連邦議会にあり、非常事態といえども大統領がこれを延期することはできない。そして2021年1月20日正午には、現在のトランプ大統領とペンス副大統領の任期は切れてしまう。

ゆえに今年も、「11月の第1月曜日の次の火曜日」には投票が行われるだろう。ただし郵便による投票を実施する州が多くなり、開票の期限は後ずれすることになりそうだ。

2. 2020年選挙は、トランプ大統領に対する信任投票となる。

一時は3万ドルに接近したダウ平均や、3.5%まで低下した完全失業率は、いまや見る影もなく悪化している。とはいえ、トランプ氏自身はコロナウイルスという見えない敵を相手に「戦時大統領」として意気軒高としている。以前は「たいしたことはない」と言っていたのに、今では「多くの人が死ぬだろう」などと言っている。前言撤回を何とも思わないのがトランプ流であり、支持者もそういうものだと思っているところがこの人の強みであろう。

今は連日のように記者会見を行い、目立つと同時に顰蹙も買っている。そして支持率は相変わらず落ちない。トランプ氏の再選可能性は、コロナ対策の成否に懸かっている。今世紀に入ってからの米大統領選がそうであるように、最後は僅差になると見ておくべきである。

3. 民主党を代表する候補者はバイデン元副大統領となる

既にバーニー・サンダース上院議員に勝ち目はない。問題はいつ選挙戦から撤退するかだが、もとより民主党員ではない同氏は、敢えて「空気を読む」つもりはないようだ。

悩ましいのがバイデン氏の出方である。デラウエア州の自宅から情報発信しており、今月から副大統領候補の選定を始めると宣言したが、世間の反応は薄い。むしろ民主党内では、コロナ対策で獅子奮迅の働きを見せるアンドリュー・クオモNY州知事が脚光を浴びている。しばらくは選挙どころではない日々が続きそうだ。

為替相場の観点から行けば、当面は米大統領選よりもコロナ対策ということになる。巨額の財政資金が投入されているが、米国の長期金利は依然として1%を割っている。ドル資金を求める民間部門と、Fedによる強力な流動性供給が綱引きしている状態だ。

FX投資においては、妙味もあればリスクもある局面といえる。投資家諸兄のご武運を心からお祈りする。

yoshizaki.jpg吉崎達彦氏
1960年富山県生まれ。1984年一橋大学卒、日商岩井㈱入社。米ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て企業エコノミストに。日商岩井とニチメンの合併を機に2004年から現職。 著書に『アメリカの論理』『1985年』(新潮新書)、『オバマは世界を救えるか』(新潮社)、『溜池通信 いかにもこれが経済』など。ウェブサイト『溜池通信』(http://tameike.net )を主宰。テレビ東京『モーニングサテライト』、BS-TBS『Biz Street』などでコメンテーターを務める。フジサンケイグループから第14回正論新風賞受賞。

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