【海外特派員】トルコにおける新型コロナウイルス対策 第3報

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トルコにおける新型コロナウイルス対策 第3報  トルコでは、3月10日に新型コロナウイルス感染者が初めて確認され、17日に感染者が初めて死亡してからわずか1か月足らずで、感染者総数42,282人、死亡者数908人(4月9日現在)に達し、感染者、死亡者共に急激に増加しています。
トルコ政府は、外出自粛、国内外の全航空便の欠航、別の都市や県への移動の原則禁止などさまざまな対策を講じてきましたが、感染者の増加を抑制するには至っていません。
その原因はいくつかありますが、まず、感染抑制のために3月末からこれまでに講じてきた対策を紹介します。

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1.感染抑制策

<交通>

 海外からの人の流れを抑制するため、トルコのナショナルフラッグキャリアであるターキッシュエアラインズは、当初3月26日から4月17日までの間、ワシントン、ニューヨーク、香港、モスクワ、アジスアベバ便を除く国際線をすべて欠航することを決定しました。
しかし、米国での感染者の拡大を受けて、3月28日から5月1日まで国際線全便の欠航に踏み切りました。
それ以後日本へ帰国する人は、カタール航空でドーハ経由で帰国していましたが、4月5日以降カタール航空もイスタンブール便を欠航し、現在日本へ帰国する手段は完全に絶たれています。

 3月28日以降、県外へ移動するには県知事の許可証を取らなければならなくなり、長距離バスや自家用車での移動時に検問所で許可証を提示しないと県外に出られないことになりました。
ターキッシュエアラインズの国内線は、全国の14都市に限り、それぞれの都市に週に3~4日往復1便運行し、許可証を提示する乗客に限り搭乗させていましたが、4月6日から4月20日まで全便欠航となっています。

 4月4日から、全国30の広域市(日本の政令都市にあたる)、および炭鉱があるために肺疾患患者の多いゾングルダック県が15日間封鎖されています(必要に応じて延長あり)。
それぞれの市や県の境界では警察や憲兵による検問が行われ、一親等の親族が亡くなったなど、国が指定した理由を記載した許可証を持たずに移動する自家用車の市内/県内への出入りを禁じています。

<市民生活>

 以前決定された65歳以上に加え、4月4日からは2000年1月1日以降に生まれた20歳以下の青少年や乳幼児も外出禁止となりました(小・中・高校は4月30日まで、大学は今学期いっぱい閉鎖され、オンライン授業を実施)。
また、公共交通機関への乗車時、青空市場やマーケットなど、人が集まる場所へはマスクの着用が義務付けられました。
イスタンブールやアンカラでは、公共交通機関への乗車時にマスクを着用していない人に無料でマスクを配布しています。
4月5日から、薬局でのマスクの販売が禁止され、20~65歳のトルコ在住者(外国人を含む)は郵便局のウェブサイト(後に電子政府)に登録すれば、週に5枚ずつ3層のサージカルマスクを無料で受け取ることができるようになりました。

 65歳以上の住民に対して外出禁止令が出されているため、高齢者世帯は、112(救急車呼び出し)、155(警察)、156(憲兵)に電話して必要な品物を注文すれば、料金後払いで関係者が品物を自宅まで届けてくれます。
大手スーパーマーケットではオンラインショッピングでの注文が増加しており、通常は翌日配達だったのが、配達まで最高1週間かかることがあるようです。
大都市のマーケットや銀行では、中に入る人数を制限し、マーケットのレジでは1メートル以上間隔を空けて待つように指示されます。

 銀行は、行員と顧客の健康を守るために、通常午前9時から午後5時までだった営業時間を正午から午後5時まで短縮しました。
その代わり、キャッシュカードで引き出せる金額を1,500リラ(約24,000円)から5,000リラ(約8万円)に引き上げました。

 医師の資格を持つ保健相は、市民生活において、「TEMAS (接触) を避けること、MESAFE(距離) を取ること、İZOLASYON (隔離) すること」を重視しており、国民にもTVで繰り返し奨励しています。
トルコ全国の各地区で1日5回のお祈りを放送するモスクは、明け方を除く4回のお祈りの後、イマム(イスラム僧)が外出を控え、家に留まるよう市民に呼びかけています。

<医療>

 全国で検査体制が整い、検査件数が増えたことによる感染者数の急激な増加により、81の県すべてで感染者が出た4月3日から県別の感染者数や死亡者数を発表するようになりました。
感染者数が最も多い県はイスタンブール県で全体の半数以上を占めています。
このニュースが流れるとイスタンブールからの脱出を試みる自家用車が急増し、上記で述べたように、4月4日から自家用車での移動禁止措置を講じるに至りました。

 また、イスタンブールにある建設中のマルマラ大学付属病院を前倒しでオープンさせました。
昨年新空港の開港で廃港となったイスタンブールのアタテュルク国際空港、およびイスタンブールのアジア側郊外、サンジャクテペ地区にあるサビハ・ギョクチェン国際空港の近くに、新たに新型コロナウイルス患者用の病院の建設を着工しています。

 4月1日から、新型コロナウイルスの検査費用と治療費は、薬剤も含め、国公立と私立の病院で無料となりました。

 海外からの帰国者のうち、トルコ人は指定の隔離施設、外国人は自宅でそれぞれ2週間隔離生活を送ります。
その間に具合が悪くなったら、医療機関に電話して新型コロナウイルスの検査を受けます。
海外帰国者は優先的に検査を受けられます。

 新型コロナウイルス感染者の治療法が確立されてないなか、中国から提供を受けた日本製のインフルエンザ治療薬「アビガン」を重篤患者に処方したところ、症状が好転したケースがみられたことから、日本から本格的にアビガンの提供を受けることが決定しました。
トルコの製薬会社は、同じく新型コロナウイルス感染者に効き目があるといわれている抗マラリア剤の生産を始めました。
また、完全に回復した元患者から血清を採取して重篤患者に摂取する血漿/血清療法を新たに始めます。

 トルコの住民全員にマスクが行き渡るように、マスクは増産体制に入りました。
国産の人工呼吸器の生産も開始されました。

<経済対策>

 経済的に困窮している200万世帯に対し、一律1,000リラ(約16,000円)を支給しました。
年金生活者に対しては、通常は5月24日に始まる断食明けのお祭りの前に支給される一時金を1か月半前倒しで4月10日前後に銀行振込で支給します。
 
 雇用の喪失を防ぐため、解雇を3か月間禁止する大統領令をまもなく議会に提出します(最長6か月間延長可能)。
従業員を解雇できない雇用主は、従業員に無給休暇を与えることができますが、休暇中の給与はトルコ雇用庁によって最低賃金以上が補償されます。
既に解雇され、失業保険が給付されない人たちに対しても賃金の支払いが行われます。

 各銀行は、新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮している人々に対して、ローンやクレジットカードの4 月30日までの支払い分を6月30日まで延期することに決定しました。
また、一般消費者向けに低金利のローンを開始しました。

2.新型コロナウイルスの感染が拡大した原因

 以上のように、トルコではマーケット、薬局、デリバリーとテイクアウトを行うレストラン、病院を除き、娯楽施設、ショッピングセンター、美容院/理容室などほとんどの施設が休業、可能な企業には在宅勤務を推奨、学校は閉鎖、スポーツ試合の禁止、県外への移動禁止、国内・国際線の全便欠航、経済の停滞など、「外出自粛を要請」しているとはいえ、ヨーロッパの「ロックダウン」とほとんど変わらない厳しい対策を講じており、違反した場合は、3,150トルコリラ(約51,000円)の罰金を科しています。
事前対策のおかげで、ヨーロッパ諸国より感染者の発生を約1か月半遅らせることができました。
それでも現在、感染者数と死亡者数は急増し、死者数は毎日増加して感染を食い止められず、集中治療室で治療を受けている患者は4月9日現在、全国で1,552人います。
感染者と死者の急増には、以下のような原因が挙げられます。

<海外からの帰国者からの感染>

 トルコでは、早くから中国、韓国、ヨーロッパなど感染国への国際線の運航を停止し、イランやイラクとの国境を閉鎖し、公共機関の消毒を徹底的に行うなど、国外の外国人感染者を排除する新型コロナウイルス対策を徹底して行ってきました。
ただし、この対策には盲点がありました。
国外から帰国するトルコ人については、何の対策も行っていなかったのです。

 初めて新型コロナウイルスの感染者が出たのは、3月10日のことで、患者はヨーロッパから帰国したトルコ人男性でした。
この時点では、海外からの帰国者についてはそれほど重視されておらず、帰国後隔離を経ずに国内の希望する目的地に行くことができましたが、隠れ感染者が全国に広がっていったと考えられています。

 事情が変わったのは3月13日のことです。
サウジアラビアからウムレ(大巡礼の期間以外にメッカに巡礼に行くこと)からの帰国者約10,000人の中に感染者が見つかった(人数不明)ことを受けて、休暇で帰省した大学生の寮を利用してウムレ帰りの国民を2週間隔離することになりました。
サウジアラビア政府が新型コロナウイルスを理由として海外からのウムレの受け入れを中止したのは、2月27日です。
それから約2週間サウジアラビアに留まっていたため(団体で行くため、勝手に帰国できない)、巡礼者同士が密接に接し、感染しやすい状況にあったといえます。
ただし、13日以前に帰国した約11,000人は隔離されておらず、この中に感染者がいた可能性があります。
(4月8日現在のサウジアラビアでの感染者は2,932人、死者は41人)。

 国際線が全便欠航後、十分な治療を受けられない不安感から(ヨーロッパ在住のトルコ人で新型コロナウイルスに感染して死亡した人は、4月8日現在222人)、感染が拡大したヨーロッパを中心に帰国者希望者が後を絶たず、トルコ政府はできるだけ希望に添えるようにチャーター便を飛ばして帰国させていますが、その中にも無症状で菌を運んでいる人々が混じっているとみられます。
帰国者希望者の帰国は、現在でも続いています。

<国民の自覚の欠如>

 政府は、初めて感染者が出た3月10日から感染者が全県に広がった4月3日まで、県別に感染者と死者数を公表しませんでした。
そのため、毎日データを発表しているにもかかわらず、どこか遠い場所で起きている自分とは関係のないことだと信じ込んでいた国民の自覚のなさが、自粛要請の無視、ひいては最も厳格な自宅待機要件につながっていたことは否めません。
現在、毎日午後7時頃その日の検査数、感染者数、死亡者数、および合計検査数、感染者数、死亡者数、県ごとの統計がニュース番組と保健省のウェブサイトで発表されます(保健省サイトのトップページ https://covid19.saglik.gov.tr/)。

<不健康な生活>

 トルコはパンの消費が世界一(一人あたり年間約170キロ)なことに加え、オリーブオイルや塩、トマトペーストをたっぷり使う料理や、砂糖をふんだんに使うデザートをほぼ毎日食べるため、トルコ人には肥満が多く(男性の約2割、女性の約4割、2018年保健省による調査)、心臓疾患、糖尿病、高血圧の慢性疾患にかかっている国民が大勢います。
新型コロナウイルスの死亡者の大半は60歳以上、かつ2つ以上の慢性疾患を患っていたことが保健省から発表されています。

 トルコでは、長い間冬の暖房は石炭や木炭を使った石炭/木炭ストーブや石炭を燃焼するセントラルヒーティングが普通でした。
石炭や木炭を燃やすと冬は空気が汚れ、呼吸器官に多大な悪影響を与えていました。
この状況が改善し始めたのは、イスタンブールやアンカラの大都市にセントラルヒーティング用の都市ガスが引かれ始めた1990年代前半からで、都市ガスの工事は現在でも全国のどこかで行われています。
現在でも地方の村などの困窮世帯に対して政府が無償で石炭を配っていることから、10月頃から春が訪れる4月頃まで石炭/木炭ストーブを使っており、大気汚染や呼吸器関係の健康被害の原因になっています。

 また、石鹸を使った手洗いの習慣は徹底していますが、国民の多くがマンション住まいにもかかわらず、部屋の窓を空けて空気を入れ替えるという換気の習慣がないため、淀んだ空気に慣れきっているという問題もあります。

<家族の絆>

 トルコでは家族の絆が強く、特に地方では同じ市内や町内に3世代家族が同居していたり、核家族の場合でも家族や親類が頻繁に行き来しています。
男性同士でさえ、挨拶では濃密に接触します。
また議論好きで、議論が白熱すると激しい言い争いになるため、感染しやすい状況にあるといえます。

<病院好き>

 トルコ人は病院好きで、何か症状があるとすぐに病院に行きます。
日頃から健康に気をつけて、病気にかからないようにするという考えがありません。
トルコの国公立病院は現在原則として治療費が無料なので、全国的に新型コロナウイルスの検査が受けられるようになったら、大した症状がないのに好奇心で検査待ちの列に大勢が並んで感染する可能性があることが問題になっていました。
そこで問診票を作成し、そのうちのひとつに症状が当てはまる場合のみ、病院に連絡してから検査を受けるシステムに変更されました。

 このように、トルコでは全力で新型コロナウイルスと戦っていますが、この国特有のさまざまな原因が感染を広げています。


付録: 保健省が発表する「トルコにおけるコロナウイルス日報」 https://covid19.saglik.gov.tr/ のトップページで毎日午後7時前後に発表 f:id:navimedia:20200416151327j:plain

 

アヤソフィア聖堂

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イスタンブールのノスタルジー電車

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PickUp編集部 トルコ特派員

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