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「香港情勢 崩れる米中の均衡」元HSBCチーフディーラー・竹内典弘氏

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目次

●アジアの金融センター、香港の立ち位置
●全人代「国家安全法」採択までの経緯
●今回の混乱が、金融市場に与える影響
●今後の注目ポイント

●アジアの金融センター、香港の立ち位置

香港は、東京やシンガポールと並び、アジアの3大金融センターの一角を成す貴重な拠点だ。1997年、英国から中国に返還された際に、中国はその先50年、つまり2047年まで、当時の制度を維持すると国際社会に宣言していた。香港は国際決済銀行のデータによれば、世界の為替取引に占めるシェアは7.6%と、東京市場(4.5%)を大きく上回る

「一国二制度」のもと、中国本土とは異なる資本規制が存在することから、欧米の主要企業を筆頭に拠点を構え、中国本土へのビジネスの橋渡しとして機能してきた。日本からは約1700社、米企業も約1300社が支店を置き、その存在感は極めて大きい。中国はこれまで、香港を海外マネーの流入口として位置づけ、中国への直接投資の玄関口としてその役割は大きい。

●全人代「国家安全法」採択までの経緯

昨年、中国本土から香港に逃亡した(犯罪)容疑者を直接中国本土に引き渡す「逃亡犯条例」をめぐり、香港では市民生活が混乱するほどのデモ活動が発生した。このデモを鎮静化させるための法整備に、香港政府が難儀したことから、習近平指導部は自ら立法に動き出した。

新型コロナウイルスの感染拡大から、遅れていた全人代(日本の国会に相当)が5月下旬にようやく開幕、28日(木)には、中国が反体制活動を直接取り締まれる「国家安全法」を採択した。「国家安全法」の制定により、高度な自治を認める「一国二制度」は揺らぎかねず、国際社会などからの懸念が広がりつつある。

●今回の混乱が、金融市場に与える影響

自由で開かれた投資環境、独立した司法制度などが、金融取引の根幹をなすもので、香港のアジアの金融センターとしての地盤沈下が早くも指摘され始めている。

金融センター香港の機能は、一部、シンガポールなどに移ることになるかもしれないが、中国ビジネスに広くかかわってきただけに、完全に置き換えることは出来ない

●今後の注目ポイント

香港の金融センターとしての機能が低下した場合、海外からの中国への直接投資は減り、将来的に経常赤字となり、資金流失となる可能性がある。今、米国では、米中対立から、中国企業の上場廃止の動きがでている。米中という覇権国の対立は、貿易から金融分野に拡大、ここにきてドルの決済からも締め出そうとする動きがでてきた。

これまで、米中の対立が深まるなか、両者は香港といういわば緩衝材をへて、対立軸は均衡していたともいえる。中国が、「国家安全法」を採択したことで、米政府は、関税やビザなどに関する優遇措置を取り消し、当局者の資産凍結まで示唆している。ここまで金融市場は、貿易協議の破棄などへの言及がなかったことにやや安堵する。

現在、「米ドル/香港ドル」のあいだには「ドル・ペグ(連動)」が採用され、1米ドル=7.75~7.85香港ドルに設定されている。企業間取引では為替のリスクは軽減され、これが香港にグルーバル資本が集中する背景でもあった。今後、「ドル・ペグ」の廃止や、中国からの資金流失から人民元安の加速等は、金融市場不安定化しかねず、十分に注意しておきたい。

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元HSBCチーフディーラー
竹内のりひろ氏

明治大学法学部1989年卒、以後一貫して外資系金融機関で為替 /金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。
相場展望をする際、極力、恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し大胆なトレードを日夜行っている。
メルマガSmartLogicFXでは、ファンダメンタルズ、テクニカル分析に基づいたリアルタイムな相場観を毎日配信中