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投票がカウントされない?郵便投票に問題アリ ジャーナリスト 中岡望 米大統領選2020

米大統領選2020

 

 大統領選挙は新しい段階に入る。8月17日から20日にミルウォーキーで開催された民主党全国大会でジョー・バイデン前副大統領が正式に民主党の大統領候補に指名された。同時に、民主党の政策綱領も了承され、焦点は本選挙に移っていく。ただ、例年であれば、大統領候補を指名する全国大会は選挙に向けての最大のイベントで、選挙に向けて大いに気勢が上がる。今回は新型コロナウイルス感染拡大もあり、バイデン候補もオンラインで受諾演説を行い、気勢が削がれた感がある。他方、共和党は8月24日から27日までノースカロライナ州のシャーロットで小規模な共和党全国大会のイベントを開催、トランプ大統領はホワイトハウスからオンラインで正式な大統領候補指名の受諾演説を行う予定になっている。

 今後の予定は、9月29日に最初のトランプ候補とバイデン候補の公開討論会が行われる。現時点では場所は未定である。10月7日にペンス副大統領と民主党の副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員の公開討論会が行われる。大統領候補の2度目の公開討論会は10月15日、3度目の公開討論会は10月22日に行われる。投票日は11月3日である。期限前投票は9月18日からミネソタ州、サウスダコタ州、ワイオミング州で始まる。ただ、現在問題になっているのは、郵便投票に関する取扱いである。もともと共和党はUSPS(アメリカ合衆国郵便公社)の民営化を主張しており、ルイ・デジョイ総裁は熱狂的なトランプ支持派で、郵便公社の経費削減や合理化を促進し、残業の禁止、郵便箱や仕分け機械の削減を実施している。その結果、郵便の遅配が恒常化しており、郵便投票が期日に配達されない事態が懸念されている。通常、即日開票が行われ、投票日の翌日には当選者が発表される。だが、今回の選挙では、郵便投票がカウントされない状況になることが懸念されている。州の法律によって異なるが、有権者の4分の3は郵便投票を行なう権利があり、前回の大統領選挙では有権者3300万人の25%が不在者投票か郵便投票を行っている。今回の選挙は新型コロナウイルス感染拡大の影響で不在者投票や郵便投票が増えると予想される。だが、郵政公社の処理能力は大幅に低下し、郵便投票が期日に届かない事態が予想される。

 こうした事態に対してトランプ大統領は郵政公社に対する緊急資金支援などに否定的で、特に郵便投票は不正投票の温床であると批判している。だが、本当の狙いは、郵便投票は民主党に有利に働くので阻止することにある。民主党支持者の黒人や低所得層は直接投票所に足を運び、投票するのが困難だからだ。

 通常、敗北した候補者は“敗北宣言”をし、勝者を祝福するのが伝統となっている。だが、トランプ大統領は、前回の選挙でも、ヒラリー・クリントン候補が勝利しても、自分は敗北宣言をしないと語っていた。今回は郵便投票の問題も関連し、トランプ大統領は敗北しても敗北宣言を拒否し、選挙は不正であると訴える可能性がある。2000年の大統領選挙でフロリダ州の票の集計がブッシュ候補に有利で、ゴア候補が再集計を求め、最高裁で争われたことがある。今回も同様な混乱が起こることが予想される。

 選挙見通しは、世論調査を見る限り、バイデン候補が大きくリードしている。選挙結果に大きく影響する激戦州でもバイデン候補がリードしている。各世論調査を平均したRealClearPoliticsによれば、直近の世論調査ではバイデン候補の支持率50.2%に対してトランプ大統領の支持率は42.5%に留まっている。激戦州6州のうち、バイデン候補の支持率は5州でトランプ大統領を上回っている。トランプ大統領が勝つには、経済のV字回復が実現するか、新型コロナウイルスのワクチンが開発されるしかないとの指摘もある。だが、トランプ大統領は「サイレント・マジョリティが自分を支持している」と強気の姿勢を崩していない。現在、投票が行われれば、トランプ大統領の勝機は小さいとみられるものの、まだ予断は許さない。選挙結果に大きな影響を与えるのは投票率である。郵便公社問題で指摘したように、投票率が高くなれば、トランプ大統領と共和党は不利になる。トランプ支持の保守派や保守派のキリスト教徒エバンジェリカルが危機感を抱いて、2016年と同様に投票所に足を運ぶかもしれない。また、いまひとつ人気がでないバイデン候補に対して、ラディカルな若者層が背を向け、投票しない可能性もある。同時にインド系とジャマイカ系の両親を持つカマラ・ハリス副大統領候補は黒人票の掘り起こしを期待されている。バイデン・ハリス陣営は支持層をいかに投票所に行かせるかが大きな課題である。

 1982年に行われたカリフォルニア州知事選挙で黒人の元ロサンゼルス市長のブラッドリー候補が世論調査で白人の対抗馬を圧倒的にリードしていたが、結果的に敗北した例がある。世論調査と結果が大きく異なり、調査の回答者は必ずしも正直に答えないのであり、このことは“ブラッドリー効果”と呼ばれている。まだ“バイデン勝利の電報”を打つのは早すぎるだろう。