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「ドル安、円安、ユーロ高の流れに変化は?」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2020年9月

【外為総研 House View】

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目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 8月の推移
・8月の各市場
・8月のドル/円ポジション動向
・9月の日・米注目イベント
・ドル/円 9月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 8月の推移
・8月の各市場
・8月のユーロ/円ポジション動向
・9月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 9月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

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ドル/円 8月の推移

8月のドル/円相場は105.104~107.047円のレンジで推移し、月間の終値ベースではほぼ横ばいだった。世界的に新型コロナウイルスの感染が再拡大した他、香港問題を起点に米中の対立が激化するなど、不安要素も少なくなかったが、主要中銀の金融緩和長期化観測や新型コロナ治療薬への期待などを支えに市場心理が悪化する事はなかった。

米国を筆頭に株価が上昇基調を保つ中、ドルは欧州通貨やオセアニア通貨に対して下落した一方、円も同様に下落した事からドル/円相場には大きな動きが出なかった。

28日には安倍首相が体調悪化により辞任を表明した事で「アベノミクス」が終了するとの思惑から円高に振れる場面もあったが、後継首相の最有力候補として安倍首相に近い菅官房長官が浮上したため円買いは収束した。

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3日
セブン&アイ・ホールディングスが米国のコンビニ併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」を210億ドルで買収すると発表した事などからドル買いが優勢となった。なお、米7月ISM製造業景況指数は54.2と市場予想(53.6)を上回った。

5日
米7月ADP全国雇用者数は16.7万人増に留まり、市場予想(120.0万人増)を大幅に下回った。これを受けて7日の米7月雇用統計も低調な結果になるとの懸念が広がり、ドルが弱含んだ。その後、米7月ISM非製造業景況指数が58.1と市場予想(55.0)を上回り前月(57.1)から予想外に上昇するとドルは下げ渋った。

7日
米7月雇用統計は、非農業部門雇用者数が176.3万人増、失業率は10.2%と、いずれも予想(148.0万人増、10.6%)より良好だった。これを受けてドルが上昇。なお、米7月労働参加率は61.4%(予想:61.8%)、同平均時給は前月比+0.2%、前年比+4.8%(予想:-0.5%、+4.2%)であった。

12日
米7月消費者物価指数は前月比+0.6%、前年比+1.0%と予想(+0.3%、+0.7%)を上回る伸びとなった。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+1.6%と予想(+1.1%)を大幅に上回った。これを受けて米長期金利が一段と上昇するとドル/円は7月23日以来の107円台を回復。ただ、107円台では戻り売りが強く、買い一巡後に失速した。

14日
米7月小売売上高は前月比+1.2%と市場予想(+2.1%)を下回った。ただ、6月分は前月比+7.5%から+8.4%へと上方修正された。また、変動の大きい自動車を除いた7月小売売上高は前月比+1.9%と予想(+1.3%)を上回る伸びとなった。米7月鉱工業生産は前月比+3.0%と予想通りの伸びだった。同設備稼働率は70.6%と予想(70.3%)を上回った。た米8月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値は、72.8と予想(72.0)を小幅に上回ったが水準自体は低位に留まった。

17日
日本4-6月期国内総生産(GDP)・一次速報は前期比年率-27.8%と戦後最大の落ち込みを記録した(予想:-26.9%)。ただ、落ち込みは想定内との見方から市場の反応は小さかった。

19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では「(新型コロナの感染拡大が)中期的には経済見通しにとってかなり深刻なリスクになるとの見解で一致」した事などが示された。フォワードガイダンスの強化が討議された事も明らかになった。

一方、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)については「現時点では正当化されないが、将来に向けた選択肢として残すべきとの意見が多数だった」とした。市場は、ハト派的な内容ではなかったと受け止め、ドルを買い戻す動きが強まった。

27日
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、ジャクソンホール・シンポジウムの講演で、インフレ目標の見直しを巡る新戦略を発表。インフレが一時的に目標の2%を上回る事を容認し、長期的な平均で2%を目指すとした。物価の安定よりも雇用の最大化を重視する姿勢を示した事で、大規模金融緩和の長期化観測からドル売りが強まった。

しかし、見直しの内容が市場予想通りで織り込み済みであった事や、発表後に米長期金利が上昇した事から、ドルは急激に買い戻された。

28日
安倍首相が辞任の意向を固めたとの一報が伝わると、日経平均株価が600円超下落するとともに円買いが強まった。欧米市場では前日のパウエルFRB議長の発言を蒸し返す格好で米長期金利が低下したため、ドル売りも活発化した。

8月の各市場

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8月のドル/円ポジション動向

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9月の日・米注目イベント

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ドル/円 9月の見通し

日本の安倍首相が任期途中で辞任を表明した事で8月下旬には円が動意付く場面があった。ただ、安倍首相に近い菅官房長官が後継の自民党総裁候補に名乗りを上げた事でこの件は一段落する公算が大きい。

麻生派、二階派に加え、最大派閥の細田派も菅氏を支持する方針とされ、9月中にも菅首相誕生の可能性が高まっている。菅首相なら「アベノミクス」が後退するとの思惑は消滅するだろう。安倍政権と日銀が2013年に結んだいわゆる政策協定(アコード)の元、日銀の大規模金融緩和継続スタンスが修正される公算は極めて小さい。

また、コロナ禍にあって政府の財政拡張路線が修正される可能性も極めて低い。14日と見られる自民党両院総会の投票結果を確認する必要はあるが、予想通りに菅首相誕生なら、この問題がドル/円相場に及ぼす影響は軽微であろう。

一方、米国では11月3日の大統領選に向けて与野党の候補者が正式に決定。2期目を目指す共和党・トランプ氏と、政権奪回を目論む民主党・バイデン氏の一騎打ちとなる。現時点では世論調査の結果などからバイデン氏有利との見方が多いが、大統領選で最大のヤマ場に位置付けられる候補者討論会はこれからだ。

中でも、9月29日にオハイオ州クリーブランドで開催される初回の討論会に注目が集まる事になろう。バイデン氏は富裕層や大企業への増税を打ち出しているため(これらを財源に過去最大規模のインフラ投資を行うとしているものの)、リードを維持するようなら史上最高値圏にある米株式市場が値崩れを起こす恐れもある。

9月のドル/円相場は、にわかに注目が集まった日本の政局から米国の政局へと焦点が移る可能性があろう。

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

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ユーロ/円 8月の推移

8月のユーロ/円相場は123.995~126.844円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.4%の上昇(ユーロ高・円安)となった。なお、上昇は4カ月連続。ユーロに新規の買い材料があった訳ではないが、7月に創設合意した欧州連合(EU)復興基金を好感したユーロ買いを否定する材料もなかった事から上昇が継続した格好だ。

主要中銀の大規模金融緩和や新型コロナ治療薬への期待などを背景に、米国を筆頭に株価が上昇するリスク選好地合いの中でユーロ高・円安が進行。米連邦準備制度理事会(FRB)の超低金利政策により、米国の実質長期金利がマイナス幅を拡大した事などからドル安が進行した事もユーロを支えた。

円安とドル安が主なユーロ買い材料となる中、ユーロ/円は31日に126.844円前後まで上伸して2019年3月以来、約1年5カ月ぶりの高値を付けた。

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6日
NY金先物が終値ベースで史上最高値を更新(1オンス=2069.40ドル)する中、ユーロ高・ドル安が進行。ユーロ/円も強含んだが、ドル/円が下落したため伸び悩んだ。

11日
独8月ZEW景気期待指数は71.5と、市場予想(55.8)に反して前月(59.3)から大幅に上昇した。これを受けてユーロは強含んだ。ロシアが、新型コロナウイルス感染症のワクチンを世界で初めて承認したと発表した事で欧州株が上昇するとユーロ/円の上昇に弾みが付いた。

14日
英国が仏などからの入国者に14日間の隔離を義務付けた事や、中国経済指標の冴えない結果が嫌気されて欧州株が売り先行でスタート。円が強含みとなり、ユーロ/円は一時弱含んだ。なお、ユーロ圏4-6月期域内総生産(GDP)・改定値は前期比-12.1%、前年比-15.0%と、予想通りに速報値からの修正はなかった。

また、ユーロ圏6月貿易収支は171億ユーロの黒字となり、黒字額は予想(145億ユーロ)を上回った。

18日
ドルが全面的に下落する中、ユーロ/ドルが2018年5月以来の高値となる1.19658ドル前後まで上昇した一方、ドル/円は105.20円台へと下落。ユーロ/円はユーロ高と円高の狭間で方向感なく推移した。

20日
欧州中銀(ECB)は7月16日の理事会の議事録を公表。1兆3500億ユーロ規模のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)について、一部の当局者が「購入額は目標というよりも、上限と捉えるべきだ」と主張。これに対して他の多くのメンバーは「全額を使う必要があるというのが現在の想定だ」と反論していた事がわかった。その上で、ECBは「9月の会合では、金融政策の姿勢と政策ツールを改めて見直す状況がより良好になっているだろう」との見解を示した。

21日
仏8月製造業PMI・速報値は49.0、同サービス業PMI・速報値は51.9といずれも予想(53.0、56.3)を下回った。これを受けてユーロが下落。

その後、独8月製造業PMI・速報値は53.0、同サービス業PMI・速報値は50.8(予想:52.3、55.2)となり、ユーロ圏8月製造業PMI・速報値は51.7、同サービス業PMI・速報値は50.1(予想:52.7、54.5)となった。サービス業を中心にコロナ感染再拡大の影響が出た事でユーロ売りが加速した。

25日
米通商代表部(USTR)が、米中通商合意の第1段階を履行する決意を双方が確認したと発表した事で市場心理が改善。リスクオンの円売りとドル売りが強まりユーロが上昇した。

なお、独8月Ifo企業景況感指数は92.6と予想(92.1)を上回り前月(90.4)から上昇。同期待指数は97.5と前月(96.7)から上昇したが、予想(98.0)には届かなかった。

28日
安倍首相が辞任の意向を固めたとの報道で日本株の下落とともに円高が進行。しかし、前日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言(インフレが一時的に目標の2%を上回る事を容認し、長期的な平均で2%を目指す)を蒸し返す格好で米低金利政策の長期化観測が広がりドル安・ユーロ高に振れたため、ユーロ/円は下げ渋った。

8月の各市場

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8月のユーロ/円ポジション動向

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9月のユーロ圏注目イベント

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ユーロ/円 9月の見通し

ユーロは8月まで対円、対ドルともに4カ月連続で上昇してきたが、上昇率で見ると8月は対円で約1.4%、対ドルでも約1.4%と7月(約2.8%、約4.8%)に比べ伸びが鈍っている。

7月には、欧州連合(EU)がこれまで踏み込めなかった財政統合に道を開くEU復興基金の創設に合意した事でユーロ圏景気の改善期待が高まった。しかし、8月に入りそうした期待が腰折れしつつある事が上昇率鈍化の背景だ。

8月21日に発表されたユーロ圏PMIはサービス業が50.1に低下して好不況の分岐点である50.0に迫った。独、仏、スペインなどの主要国で新型コロナの感染が再拡大しており、一部の規制を強化した事が最大の要因だろう。9月分の仏、独、ユーロ圏PMI(23日発表)もサービス業を中心に注目しておく必要がありそうだ。

一方、これまでユーロ高をけん引してきたもう一つの材料であるドル安については、足元でも流れが続いている。8月31日の海外市場では、ドルの総合的な価値を表すドルインデックスが92.0を割り込み2018年5月以来の水準に下落した。米国の超低金利政策が長期化するとの観測がドル売りを誘い、ユーロ高をアシストしている。

ドルと円が同方向に動きやすいだけに、ユーロ/ドルの上昇はユーロ/円の上昇にも繋がりやすい。9月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示される政策金利見通しもユーロの動きに影響する可能性があろう。

9月のユーロ/円相場は、上昇余力がどの程度残っているのか試される事になりそうだ。