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米国の対中戦略の変化と紛争の舞台となる香港の現状について「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港の最新の情勢について迫っていきます。中国や香港とのビジネスや投資、人民元・香港ドルといった通貨の売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第17回は「米国の対中戦略の変化と紛争の舞台となる香港の現状について」でお届けいたします。

それでは、本題に入っていきます。

目次

1.国慶節に6,000人の警察官が出動し80人が逮捕
2.客足が遠のく連休中の香港
3.足元の為替相場と、今後の見通し
4.バイデン米大統領候補と対中戦略の関係について

1.国慶節に6,000人の警察官が出動し80人が逮捕

さて現在は国慶節です。中国本土では今年は10月1日から8日まで、香港は1日から4日までの連休になります。

みなさんは国慶節とはどのような記念日かご存知でしょうか?国慶節とは中華人民共和国の建国記念日にあたります。

中華圏の国民にとっては祭事ですから、本来はお祝いムードになるはずなのですが、現在の香港では非常に緊張感の高い連休になっています。それもそのはず、香港国家安全維持法が制定されて以降デモが続いており、デモ隊と政府がぶつかり合っているからです。

昨年の国慶節連休中は、2014年から続く抗議活動(傘を持った市民が集結する、いわゆる雨傘運動)の流れを汲むデモ隊が香港の街に溢れかえりました。そして、予想されていた通り、今年もデモ隊と警察官が都市部に集結しています。

今年は既に6,000人を超える警察官が出動しており、80人以上が逮捕されたと伝わってきました。警察側はバリケードなども用いて、厳戒態勢を敷いているようです。

これに対し、米国政府広報担当のモーガン・オルテガ氏は「私たちは政治的目的のために警察官を動員し、法の規則と、人権と、人間の自由表現を侵害する香港政府を非難する。デモ隊の逮捕は再度、香港の基本原則である、一国二制度をないがしろにしている。」と痛烈に非難しました。

一方で香港政府の広報担当によれば、「デモ隊の逮捕は、秩序と香港居民の生命、そして資産を守るために必要である。」「米国は自国と他国でダブルスタンダード(おそらく黒人デモの弾圧を指す)を採用している」として米国の発言を非難しました。

香港を舞台とした米中の対立はますます激しくなっており、これらは今後の更なる米中間の衝突を予期させます。米中対立は引き続き今後の相場の大きなテーマとなり続けると思いますので、投資家としては常に注視しておきたい事象ではないでしょうか。

2.客足が遠のく連休中の香港

さて、このような中、中国本土の国民感情としては、香港には足を運びたくないと、このようになるのは必然です。本土からの客足は遠のき、コロナ禍で海外からの来客も見込めないない中、香港の街中にはデモ隊や警察官が溢れかえっており、香港居民も家の中に滞在しがちになるため、本来賑わう繁華街も、盛り上がりに欠ける連休となりました。

Causeway Bay(銅鑼湾)という駅の近くにPaterson Street (百徳新街)という道があり、そこにカジュアルウェアの「H&M」や、スポーツ用品店の「アディダス」の店舗が並んでいるのですが、販売スペースの一部や、ゲートの一部を閉じざるをえない状況に追い込まれました。

また連休中に1881ヘリテージセンターと言う有名なショッピングモールがあるのですが、そこに入っているフランスのジュエリーメーカーの「カルティエ」が撤退を発表するなど、中国本土などからの旅行客が流れてこないことに対する悪影響が、目に見える形で広がっています。

やはり政情が不安定だと、経済へ悪影響を与えるというのが、まさに我々の目の前で起こっていることなのだと感じます。米中対立の激化、中東情勢の変化、安倍首相の辞任、米国大統領選挙を控え、政治の不透明感が高まっていることから、引き続き神経質な相場が続きそうです。

3.足元の為替相場と、今後の見通し

HKDJPY USD/HKD の年初来推移

さて為替相場ですが、USD/HKDは4月から引き続き7.75で張り付いています。 USD/HKDが動意に欠けるため、HKD/JPYの形状はUSD/JPYに極めて似た形状になっています。

現在USDとHKDの3M金利差は、HKDが約0.3%高くなっており、引き続きHKDロング(買い持ち)でキャリーが取れる状態になっています。ですから、引き続きですが、もし円をショート(売り持ち)にする場合には、その対象としての香港ドルロングは一つの選択肢になりうると思います。

それから香港株が低迷する中で、HKDが強いことは一見すると腑に落ちないところもあるのですが、なにか見えていないところで、香港ドル高方向に圧力が掛かっていることは間違いないとみています。中国企業のIPOを控えて本土からの資金流入が多いなどと言われてはいますが、詳細はまだみえてないところ。ここは引き続き分析を進めていきたいと思います。

4.バイデン米大統領候補と対中戦略の関係について

さて金融市場では連日のように米国の大統領選に注目が集まっており、先日は第一回のTV討論会も行われました。トランプ大統領が再選すれば米中関係は不変、バイデン候補が当選すれば米中関係は融和路線と報じられることもありますが、実際はどうなのでしょうか?

実はトランプ現大統領が再選したとしても、バイデン候補が新たに当選したとしても米国が中国に対して融和路線を取るということは現状考えにくくなっている、これが答えになります。これは今年の5月に発表された、米国の中国に対する国家安全保障戦略(United States Strategic Approach to the People’s Republic of China)が論拠です。

本報告書において「1979年、中国改革開放以来、米国の過去の対中政策は誤りであり、今後は米国と価値観を共有する先進国と手を組み中国に厳しく対応する」と記載されており、米国の対中戦略は既に厳しく改めることで改定されています。ですから巷ではバイデン氏が選ばれれば、米中対立が和らぐなどと言われていますが、そういったことは期待出来ないというのが、正しい捉え方になると考えています。

米国の香港に対する制裁にしても、米国の議会は、民主・共和のいずれかが進めているのではなく、超党派でほぼ満場一致で決まっていますので、いってみれば中国を敵対視する国民感情も背景にあるのだと思います。ですからどちらが選ばれるかで枝葉の部分で政策に差が出ることはあったとしても、政策の根本として対中戦略は極めて厳しくなることが規定路線ということになります。


さて、本日はここまでとなります。

今週は他にも香港居民を、米国への避難民としての優先順位を引き上げる動きがあり、それに対して香港政府が遺憾の意を表しました。また在英国中国大使館の周りで、反中デモが起きるなど、中国とファイブアイズの間で、政治的な緊張感はますます高まっています。こう言った政治環境であると言うことを踏まえて、リスクオフの展開には警戒をしておいた方が無難でしょう。

引き続き注目度・影響度の高い、中国本土・香港の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。


戸田裕大

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【インタビュー記事】

 

【過去記事】

<参考文献・ご留意事項>

South China Morning Post

https://www.scmp.com/business

Investing.com:為替レート及び 各種株価データ

https://www.investing.com