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選挙が終わらない最悪シナリオを想定しておこう 吉崎達彦(双日総研チーフエコノミスト) 米大統領選2020

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期日前投票の多さはバイデン候補に有利だが

 世界が注目するアメリカ大統領選挙はいよいよ明日に迫っている。期日前投票がびっくりするほど多い ところを見ると、投票率はかなり高くなりそうだ。これは常識的に言って、民主党を利することになる。すなわちジョー・バイデン元副大統領の勝利が濃厚になっているということだ。
 とはいうものの、ドナルド・トランプ現大統領がすんなり負けを認めるかどうかはわからない。ここでは大統領選挙が泥沼化する、という投資家にとって恐怖のシナリオを検討しておこう。ちなみに以下はすべて日本時間で表記している。11月1日からは冬時間となり、東海岸と日本の時差は14時間になっていることにご注意を。
 まず11月4日水曜日、東海岸では午前9時に、西海岸では午後1時に投票が締め切られる(ハワイとアラスカを除く)。開票作業が進む一方で、出口調査の数字も飛び交う。2012年選挙はバラク・オバマ大統領が圧勝で、ミット・ロムニー候補は当日の午後3時に敗北宣言を行った。前回の2016年でも、ヒラリー・クリントン候補が午後5時40分にはトランプ氏に電話を入れ、負けを認めている。
 もっと大接戦であった2004年選挙の場合は、深夜の日付が変わる頃になってジョン・ケリー候補が敗北宣言を行い、ジョージ・W・ブッシュ大統領の再選が決まった。とまあ、遅くとも日本時間の翌日中には、次期大統領が決まるというのが吉例である。
 2020年選挙の場合は郵便投票の比率が高いので、開票に時間がかかることが予想されている。ただし早めに結果が出るフロリダ州、ノースカロライナ州、アリゾナ州などの激戦州で、バイデン候補の勝利が報じられた場合はこの限りではない。これらの州を失って、なおかつトランプさんが勝つことは考えにくい。早めの決着となり、投資家目線ではポジティブ・サプライズということになるだろう。

12月14日に決まらないと…「憲法修正第12条」の発動で大混乱に

 問題はこれら諸州でトランプさんが勝利、もしくは僅差になった場合である。その場合は2000年選挙のような長期戦に突入する可能性がある。あのときはフロリダ州が数百票差の大接戦となり、誰が大統領になるのかわからない日々が続いて、「アメリカ版40日戦争」などと呼ばれたものである。
 こういう場合は、「選挙人投票日」となる12月14日が次の山場となる。11月3日に選ばれた選挙人が、「12月の第2水曜日の次の月曜日」にそれぞれの州都に集まって投票を行う日程である。選挙人制度が形骸化した今日では、単なるセレモニーに過ぎないのだが、この日を過ぎて決まらない場合はいわゆる「憲法上の危機」に突入する。
 2000年選挙の場合は、この選挙人投票日の6日前(これを「セーフ・ハーバー」と称する)に、連邦最高裁が「フロリダ州は再集計を中止せよ」との判決を出した。民主党の候補者のアル・ゴア副大統領は、これを不服としながらも受け入れ、共和党のジョージ・W・ブッシュ・テキサス知事の当選が決まった。
 今回の場合も、各地域で郵便投票を巡る訴訟が起きたり、一部地域で暴動が起きるなどの混乱があり得よう。トランプさんが狙っているのは、一部の州で選挙人が確定せず、セーフハーバーとなる12月8日を過ぎてしまうことであろう。この場合、憲法修正第12条の「下院における決選投票」が発動される可能性がある。
 この規定は、1824年に1度だけ発動されたことがある。下院で決選投票が行われる場合、民主党が多数を占めているにもかかわらず、「各州で1票ずつ」という規定になるので、人口の少ない州で強い共和党が有利になる。仮に現在の議席数でカウントすると、共和党が26票、民主党が22票、同点2票となって「トランプ再選」ということになる。
 もっともそういう展開になれば、たぶん一般投票数で大差をつけているはずの民主党側が納得するとは思われない。ひとつの可能性として、トランプファミリーは「憲法修正12条」をカードに、バイデン陣営に対して怪しげなディール(トランプ退陣後も訴追させない、など)を持ち掛けるのではないか。こうなれば仮にバイデン氏が次期政権を担うにしても、かなり正当性の怪しい船出ということになってしまう。
 マーケット目線で行くと、選挙の長期化は「アメリカ売り」につながりかねないので注意が必要だ。金利差や経常収支が原因で通貨が売られるときは、およその理論値があるので「この辺が大底(天井)だろう」という見通しが立ちやすい。しかし「アメリカが憲法上の危機だ」というモメンタム売りとなると、ドル全面安が止まらない、という恐怖のシナリオも考えられる
 米大統領選挙は早期決着か、それとも長期戦か。今週水曜日の開票結果がカギを握っている。

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yoshizaki.jpg吉崎達彦氏
1960年富山県生まれ。1984年一橋大学卒、日商岩井㈱入社。米ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て企業エコノミストに。日商岩井とニチメンの合併を機に2004年から現職。 著書に『アメリカの論理』『1985年』(新潮新書)、『オバマは世界を救えるか』(新潮社)、『溜池通信 いかにもこれが経済』など。ウェブサイト『溜池通信』(http://tameike.net )を主宰。テレビ東京『モーニングサテライト』、BS-TBS『Biz Street』などでコメンテーターを務める。フジサンケイグループから第14回正論新風賞受賞。