「英・EU交渉、RBA量的緩和、米大統領選」外為総研 House View ポンド/円・豪ドル/円 2020年11月

【外為総研 House View】

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目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月のポンド/円ポジション動向
・11月の英国注目イベント
・ポンド/円 11月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月の豪ドル/円ポジション動向
・11月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 11月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

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ポンド/円 10月の推移

10月のポンド/円相場は134.406~137.836円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.5%下落(ポンド安・円高)した。

9月に142円台から133円台まで大幅安となった反動もあって、9日には137.836円前後まで上昇。しかし、ジョンソン英首相が欧州連合(EU)との通商交渉の期限に指定した15日-16日のEU首脳会議に向けて合意への期待が薄れるとポンドは伸び悩んだ。その後、英・EU通商交渉の延長が決まり、やや持ち直す場面もあったが下旬にかけて再び下落した。

翌月の米大統領選挙に対する不透明感が強まった事や、欧米で新型コロナウイルスの感染が再拡大した事から世界的に株価が下落する中、ポンド安・円高が進行。30日には134.406円前後まで下落して9月28日以来の安値を付けた。

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1日
欧州連合(EU)は英国の「国内市場法案」が離脱協定違反にあたるとして法的手続きを開始。英国とEUの通商交渉について「重要分野での溝が埋まっていない」と伝わった事もポンドの重しとなった。

しかしその後、英・EU通商交渉で、「(懸案事項のひとつである)国家補助について着地点が特定された」との報道が伝わるとポンドを買い戻す動きが強まった。

7日
「英国は10月15日までにEUとの通商交渉に合意への明確な見通しが立たなければ、来週に交渉から撤退する意向だ」とする関係者の発言が伝わると一時ポンドが下落した。

しかしその後、EU側の首席交渉官を務めるバルニエ氏が「英国との通商交渉は10月15-16日(のEU首脳会議)以降も継続を見込む」との見解を示したと伝わった事などから持ち直した。

9日
英8月鉱工業生産は前月比+0.3%と予想(+2.5%)を大幅に下回った。英8月貿易収支は90.10億ポンドの赤字と概ね予想通り(予想:91.00億ポンドの赤字)だった。英8月国内総生産(GDP)は前月比+2.1%に留まり、予想(+4.6%)に届かなかった。

12日
英中銀(BOE)のベイリー総裁は「マイナス金利を導入する用意はまだ整っていない」との見解を示した。総裁は、「英国が受けた衝撃を考えればマイナス金利を排除するべきではないと言明する十分な理由がある」ただ、「それを実際に活用すべきかという問題に我々はまだ取り組んでいない」などと述べた。

15日
EU首脳会議は、英国との通商交渉について、今後数週間の継続協議を呼びかけ、英国に対し「合意を可能にする必要な行動を求める」とする共同声明を発表。

これに対し英国側の交渉責任者であるフロスト氏は、EUの姿勢に「驚き、失望した」と表明。ジョンソン英首相は首脳会議が終了する16日に合意妥結への決意がEU側にあるのかを見極めた上で、交渉の継続もしくは打ち切りを決断するとした。

16日
英国のジョンソン首相は「EUは自由貿易協定(FTA)で合意する考えを放棄した」と発言。「EUは英国に対しカナダと同じ条件を提示する意思がない」として来年1月1日に「FTAなき離脱」となる事態を想定して準備するべきだとの結論に達したと表明した。ポンドは一時急落したが、欧州委員長が集中協議のためのチームを来週英国に派遣する考えを示すと下げ渋った。

21日
バルニエEU首席交渉官は欧州議会で「英国との交渉は手の届くところにある」「合意にはバランスの取れた妥協を反映させる必要がある」と発言。英・EU通商交渉の進展期待が高まりポンドが上昇した。

その後、英国とEUの通商交渉が11月半ばまでの合意を目指して再開されると伝わり、ポンド買いが加速した。なお、この日発表された英5月消費者物価指数は前月比+0.4%、前年比+0.5%と予想(+0.5%、+0.6%)を小幅に下回った。

23日
英9月小売売上高は前月比+1.5%と市場予想(+0.2%)を上回った。自動車燃料を除いた売上高も前月比+1.6%と予想(+0.5%)以上に伸びた。英10月製造業PMI・速報値は53.3、同サービス業PMI・速報値は52.3(予想:53.1、53.9)であった。

28日
英国とEUの通商交渉に進展があり、11月初めの合意成立も可能とする関係者の見解が伝わるとポンドは一時上昇。関係者によると、交渉場所は29日にブリュッセルへと移る。担当者らが11月3日までに残る相違を十分に狭める事ができれば、後はジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長に託されるとの事。ただ、新型コロナの感染拡大などを受けて欧米株安が勢いを増す中、ポンド買いの動きは一時的でその後反落した。

10月の各市場

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10月のポンド/円ポジション動向

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11月の英国注目イベント

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ポンド/円 11月の見通し

前月10月のポンドは対円では小幅に下落したが、対ドルや対ユーロでは小幅に上昇するなど、明確な方向感のない動きとなった。英国と欧州連合(EU)の通商交渉も同様で、合意への期待が高まるほどの進展はないものの、完全な決裂が懸念される状況でもない。

10月後半に始まった英・EU集中協議は少なくとも11月中旬まで続くと見られる。こうした中、ポンドは英・EU通商交渉に関する報道に一喜一憂しつつも、上値が重い展開が続きそうだ。「通商合意なき離脱」への懸念に加え、英国景気の悪化懸念がポンドの上値を抑えるだろう。英国とEUが通商交渉にあたるための「移行期間」が終了する12月31日まで、残り2カ月を切ったが、現時点で合意への見込みは薄い。

また、新型コロナウイルスの感染拡大が英国でも加速しており、ジョンソン英首相は、11月5日から12月2日までの4週間、イングランドで2度目の都市封鎖(ロックダウン)を実施する。英中銀(BOE)は11月5日の金融政策委員会(MPC)で資産買い入れプログラムの規模を拡大する公算が大きい。

これらを踏まえると、英国が置かれた環境からは11月のポンドの上昇は見込みづらい。仮にポンドが上昇する目があるとすれば、円やドルの下落が進むケースであろう。米大統領選を経て米政局の不透明感が後退、世界の株価が年末に向けて再び上昇基調となれば、リスクオンの円安とドル安が進行してポンドを押し上げる事も考えられる。英・EUの通商交渉に進展がない限り、ポンド/円の上昇は円安頼みとなりそうだ。

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

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豪ドル/円 10月の推移

10月の豪ドル/円相場は相場は73.134~76.521円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.7%下落(豪ドル安・円高)した。上旬こそ、人民元高の影響などから強含んだものの、その後は上値の重い展開が続いた。

豪中銀(RBA)が11月に追加緩和に踏み切るとの見方が強まり豪ドルの上値を抑えた他、米国の追加経済対策協議が難航した事や欧米で新型コロナウイルスの感染が再拡大した事が市場心理を圧迫。世界的に株価が軟調に推移する中、豪ドル安・円高が進行した。29日には73.134円前後まで下落して6月22日以来約4カ月ぶりの安値を付けた。

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2日
豪8月小売売上高が前月比-4.0%と予想(-4.2%)を上回ると一時豪ドルが強含んだが、直後にトランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染した事が伝わるとリスク回避の動きが強まり急落した。

6日
RBAは大方の予想通りに政策金利を0.25%に据え置いた。声明で「豪ドルは、過去数年のピーク時の水準をわずかに下回っている」として豪ドル高を容認した事などから、豪ドル/円は一時上昇した。しかし、「追加の金融緩和がどのように雇用を支える事ができるかを引き続き検討していく」とした事から11月利下げの可能性が意識されて失速した。

9日
中国人民元の対ドル基準値が連休前の9月30日よりドル安・元高水準に設定され、取引開始後には一段とドル安・元高が進行。上海株も高寄り後に一段高となる中、豪ドルも人民元に連れ高した。なお、中国9月財新サービス業PMIは54.8と市場予想(54.3)を上回った。

12日
中国当局は前週末に、為替フォワード取引に係る法定準備金(取引決済額の20%)をこの日から撤廃すると発表した。金融機関が外貨買い・人民元売りを行いやすくするための措置であり、足元の人民元高への対応策と見られる。これを受けて、人民元安とともに豪ドル安に振れた。

19日
中国7-9月期国内総生産(GDP)は前年同期比+4.9%と4-6月期(+3.2%)から伸びが加速したものの、予想(+5.5%)には届かなかった。その他、中国9月鉱工業生産は前年比+6.9%、同小売売上高は前年比+3.3%といずれも予想(+5.8%、+1.6%)を上回った。

20日
ケントRBA総裁補が「政策金利をさらに引き下げる一定の余地ある」「緩和の詳細については推測できないが、期間が長めの債券買い入れが1つの選択肢」などと発言すると豪ドルは下落した。

その後、RBA議事録(10月6日開催分)では、政策金利をゼロに向けて引き下げる事や期間が長めの国債買い入れなど、追加緩和の可能性について議論した事が明らかとなり、「これらの刺激策は豪州の金融状況をさらに緩和する効果があるだろう」との見解が示された。

27日
デベルRBA副総裁は7-9月期の国内総生産(GDP)がプラス成長を回復した公算が大きいとの認識を示した。また、RBA理事会を翌週に控える中、債券買い入れ拡大の見通しについて質問されると「市場が敏感に反応するニュースだ」としてコメントを控えた。

28日
豪7-9月期消費者物価指数は前年比+0.7%、前期比+1.6%と市場予想(+0.6%、+1.5%)をやや上回った。トリム平均値が前年比+1.2%、加重中央値が前年比+1.3%となった事から、豪中銀(RBA)が重視する基調インフレは前年比+1.25%となった(予想:+1.20%)。

10月の各市場

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10月の豪ドル/円ポジション動向

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11月の豪州・中国注目イベント

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豪ドル/円 11月の見通し

豪中銀(RBA)は11月3日の理事会で、政策金利を0.25%から0.10%へ引き下げた上に、新たな量的緩和策を導入した。量的緩和は、今後6カ月間で5-10年債を1000億豪ドル買い入れる内容だ。声明では「政策行動がより低水準の為替レートの一因となるだろう」としており、RBAが豪ドル安を強く志向している事が分かる。

こうしたRBAのスタンスは豪ドル相場の上値を抑える可能性があろう。ただ、豪10年債利回りはRBAの追加緩和発表後も0.75%前後で推移しており、それほど大きく低下していない。米10年債利回り(0.84%前後)よりやや低いが、日本(0.045%前後)やドイツ(-0.64%前後)を大きく上回る水準だ。米大統領選を経て先行きに対する不透明感が薄れれば、国際投資家の「利回り追求」の動きが豪ドルを下支えすると考えられる。

その米大統領選については、トランプ氏とバイデン氏のどちらが勝っても、市場には一定の「アク抜け感が」浮上すると見ているが、豪ドルにとってはバイデン新大統領のほうが、より上昇を見込めそうだ。バイデン氏はトランプ氏の対中関税引き上げを批判しており、大統領に就任すればトランプ氏より対中融和路線を採る(トランプ氏ほどの強硬路線は採らない)との期待が高まるだろう。また、バイデン氏とともに、議会選挙を上下院とも民主党が制すれば、大規模な経済対策が早期に成立するとの見方から市場センチメントの改善が見込まれる。

他方、豪ドル/円相場にとってトランプ氏の勝利より「良くないシナリオ」は、勝者が決まらず結果判明が著しく遅れるケースだろう。この場合は、勝者確定までの期間にもよるが市場全体がリスク回避ムードに覆われる事になりそうだ。

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