激変する東アジア情勢とそれを織り込む金融市場「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第22回は「激変する東アジア情勢とそれを織り込む金融市場」でお届けいたします。

それでは、さっそく本題に入っていきます。

目次

1.香港立法議会の15議員が辞表提出
2.日本を含む15ヵ国がRCEPに署名
3.香港ドルと人民元相場のアップデート

1.香港立法議会の15議員が辞表提出

さて先週ですが、香港の政局に大きな変化がみられました。

先日、香港の立法機関である香港立法議会、そのうち4名の議員に対して、国家安全維持法に違反したとして権限剥奪が言い渡されていたのですが、12日、これに反対の意を表するかたちで、15名の民主派議員が辞職を表明しました。

香港立法議会は全70名の議員で構成されているのですが、この辞表を受けて、人員の構成は、親中派41名、民主派2名、欠員27名となる予定です。このままでは香港立法議会は議会の体を成すことが出来ず、立法機能が停止してしまうことから、香港政府は中国政府と連携して対応を協議しているようです。

今、香港では、急速に中国の影響が高まり続けています。

これに対して諸外国から非難の声が集まっており、英米政府に加えて、欧州連合からも声明が出されるなど、いま、香港立法議会に世界中から注目が集まっています。日本は英米と足並みを揃えるのか、それとも中国に配慮を示すのか、菅政権の対応にも注目が集まります。

2.日本を含む15ヵ国がRCEPに署名

15日に日本を含む15カ国が東アジア地域包括的経済連携(以後RCEPと記載)に署名しました。

日本の輸出に占めるRCEP地域割合は43%、輸入に占めるRCEP地域割合は50%と大きく、且つ今回、92%の品目の関税撤廃を勝ち取ったことで、日本の経済活動を後押しすることは間違いないものと思います。日経平均株価が急上昇していますがRCEPの合意によるところが大きいでしょう。

環太平洋パートナーシップ協定(以後TPPと記載)と比較すると、その地理的な近さが際立ちます。ASEAN10ヵ国に加えて、日中韓豪+NZと、政治的なわだかまりを超えて、東アジア+東南アジアが手を取り合ったことは、米国の一極体制から、中国の台頭をうけて、世界が多極化していく様に映ります。

RCEPの署名について、大枠を設計して提案した日本と中国はもちろんですが、ASEANが果たした役割も大きかったのではないかと思います。東南アジアの国々は一国では意見を主張することが困難であり、皆の力を合わせて一つの大きな声にしようというのがASEAN設立の背景ですが、そこで得た知見を活かしてRCEPプロジェクトを推進し、インドこそ離脱したものの、日中韓豪+NZの利害を調整し、無事に署名に漕ぎつけたのはASEANの知見があってこそだと思います。今後RCEPがとても大きな発言力をもつコミュニティとなることは間違いないです。

3.香港ドルと人民元相場のアップデート

さてここからは相場の話です。

香港ドルですが、ここにきて反発の兆しがみられています。USD/HKDは長らく1USD = 7.75HKDで張り付いていましたが、少しずつ乖離がみられてきました

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一因としては、香港中銀の金融政策が緩和的で、香港ドルの金利が低下していることが挙げられます。香港ドルと米ドルの金利差が縮小したことで、USD/HKDは反転したといえます。

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今後、香港ドル金利の低下が一層大きくなり、香港ドルと米ドルの金利水準が逆転すれば、資金は米ドルに流れやすくなり、USD/HKDは米ドル高・香港ドル安へと反転していくことが想定されます。従って香港ドルと米ドルの金利差はよく注意してみていく必要があります。

それから人民元は相変わらず強いです。直近では対円で15.90台まで上昇し、対ドルでは1USD=6.60CNHを割り込んで推移しています。

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この要因として米中金利差の拡大が挙げられます。米国の新型コロナウイルスの被害は大きく、景気刺激のために、中長期的なゼロ金利政策に踏み切らざるを得ない状況の中、中国はいち早く経済を持ち直して、金利正常化へと向かい、人民元金利は上昇しています。つまり相対的に金利の高い人民元に資金が集まっているのです。

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人民元に関しては、金利だけでなく、米中両国の貿易是正に絡んで、為替水準合意が形成されている可能性もあります。米ドル安になれば米国の貿易赤字縮小に寄与しますし、人民元高になれば中国の人民元国際化に寄与します。この辺りの詳しい事情は著書「米中金融戦争」のメインテーマとして深堀りして考察していますので、もしご興味ある方はお手に取って頂ければ幸いです。


本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。

戸田裕大

<最新著書のご紹介>

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なぜ米国は中国に対して、これほどまでに強硬な姿勢を貫くのか?

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【インタビュー記事】

【過去記事】

 

<参考文献・ご留意事項>

<時事情報>
日本経済新聞:香港民主派15議員、辞表提出 資格剥奪に抗議
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66148940S0A111C2MM8000/

日本経済新聞:香港民主派議員排除 欧米が非難 「中国、再び約束破った」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66179920T11C20A1EAF000/

South China Morning Post: All Hong Kong opposition lawmakers quit following camp’s vow to resign en masse over Beijing resolution
https://www.scmp.com/news/hong-kong/politics/article/3109574/all-hong-kong-opposition-lawmakers-quit-following-camps-vow

経済産業省:地域的な包括的経済連携(RCEP)協定
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000231134.pdf

<相場情報>
https://Investing.com

f:id:gaitamesk:20200214172637p:plain若竹コンサルティング 創業者 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本のグローバル企業300社、在中国のグローバル企業450社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は若竹コンサルティング代表として、為替市場調査と為替リスク管理に関するコンサルティング業務を提供する傍ら、為替相場講演会に多数登壇している。著書に「米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方」。
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