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「悔やんでも悔やみきれない投資の失敗」松崎 美子氏 FX特別インタビュー(中編)

悔やんでも悔やみきれない投資の失敗

以下の取材記事はトレーダー個人の経験やお考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。

FXブログ「ロンドンFX」やレポート、セミナー、SNSなどで活躍の松崎美子さんにインタビューを行いました。 ロンドン市場での活躍について語っていただいた前編に続き、中編では過去一番の失敗談や、ファンダメンタルズ分析、投資判断に有益な情報の集め方についてお話いただきました。

▼目次

1.悔やんでも悔やみきれない投資の失敗
2.金額でなく、ポイントで考えるクセ
3.ファンダメンタルズについて 要人発言の位置づけ
4.市場の「織り込み」の大切さ
5.すべてが繋がる瞬間がある
6.最強のツール Twitterの使い方

悔やんでも悔やみきれない投資の失敗

編集部
編集部:
今までした一番大きな失敗談などありますでしょうか。
松崎美子
松崎:
一番の失敗は損切り注文を置かずに3週間アメリカへ旅行に行ってしまったときですね。
その時は、銀行を退職して、個人投資家として1年未満かな。 その時は、面白いほどにトレードで利益が出ていたんですよ、だから次第に頭でっかちになっちゃって・・・。

そして旅行に行く直前、持っているポジションを眺めていて「あ、なんかまずいな・・・」と思ったんですよ。でも当時の私は何もせず。あとはひたすら相場が戻るように、お祈り商法でした。
編集部
編集部:
!!!!!
元プロディーラーの松崎さんもお祈りしちゃったんですか!?
松崎美子
松崎:
お祈りしちゃってました。 朝起きたら地合いが変わるだろうと。

ただ一週間、二週間経っても変わらず。 そのとき持っていたのがS&P500(アメリカの株価指数)でした。 アメリカに来ているもんだから、CNNがテレビで流れていると嫌なニュースばっかり目に入ってくるんですよね。 インターネットがあるんだから、取引口座にログインしてポジション切ればいいのに、なんか変にテンパっちゃって。

それで、ロンドンに帰る2日前に強制ロスカットになり、口座資金が0に。それが全く受け入れられなくて。
編集部
編集部:
おお・・・。
松崎美子
松崎:
お金がなくなってしまったのはしょうがない。ただ自分は銀行にいてマーケットの怖さをよく知っていた。それで、損切りができなかった自分が本当に許せなくて。
編集部
編集部:
PickUp編集部としても、他の凄腕トレーダーから、調子が良いときに限ってたった一つのミスが取り返しのつかないほどの損失になってしまったというケースをお聞きしたことがあります。
松崎美子
松崎:
それまでの一年くらいは、損切りしたことがないほど全部自分のポジションが当たっていたんですよ。 今思えばただのビギナーズラックなのに。 ただそれが3カ月、6カ月、8カ月と続いてしまうと… 自分がやっていることが正しいんだと勘違いしてしまうんですね。
編集部
編集部:
S&P500への投資は、個人投資家になってからでしょうか。
松崎美子
松崎:
はい。為替ももちろん利益を出せるのですが、株価指数は値動きが特にボラタイルでしたので。

それで、強制ロスカットになったことについて、まだアメリカにいるときは実感なかったんですけど、ロンドンに帰ってきて、自宅のPCをつけて、口座の残高が0になっているのをみて…しばらくは茫然としていました。

で、どんどん自分が追い詰められっていった。 あのときはほんとにきつかったですね。
編集部
編集部:
チャレンジ精神や向上心もある非常に強い松崎さんが、凄まじいショックを受けて、体調がおかしくなるまでに至ったというのが不思議でしょうがないのですが。
松崎美子
松崎:
一番やってはいけないことを自分がやってしまったということのショックが大きくて。 銀行だったら、失敗トレードになったら、ペナルティボックスにいれられて頭を冷せって言われます。 個人投資家は、悪い言い方すると損なんていくらでもできるじゃないですか。

当時、私の子供も小学生で、やってはいけないことをしたら子供を叱ると思うんですね。 でも、自分が相場で一番やってはいけないことをやってるし… 子育てに対する自信もなくなってしまいました。
編集部
編集部:
うおお。心がそっちにいってしまったんですね…。
松崎美子
松崎:
で、もう料理も作る気力もなく、毎日出前を頼んで。そうしたら体の免疫がなくなっちゃって、一週間後くらいに、歯を磨いていたら口の中になにも感覚がないことに気が付いて、大きな病院へ行ったら、緊急入院になってしまいました。
編集部
編集部:
え、どのような診断だったんですか。
松崎美子
松崎:
日本語で言うと顔面麻痺というのでしょうか。 顔半分の感覚がなくなり、目と鼻と口が閉まらくなってしまいました。 ほんとうにしんどかったですね。
編集部
編集部:
そんなことがあったんですね…。
松崎美子
松崎:
でもそのときのお医者さんがとても良い人で、私が「本当に治るのでしょうか」って聞いたら「多分3カ月くらいはかかるけど、完治するから」と言ってくださって。

で、1カ月ごとに病院に行くんですけど、3カ月経ったら完治したんですよ。 そうしたら先生が「よかったね~治って」って。「いやいや、先生が完治するって言ったじゃないですか。」って言ったら「あれは嘘だった」っていうんですよ(笑)。
編集部
編集部:
嘘だったんですね(笑)。
松崎美子
松崎:
完治するって言わないと人って自暴自棄になってしまうんですって。 私の病気も完治する人は全体の6割くらいだそうです。
編集部
編集部:
でも本当に良かったですね。
松崎美子
松崎:
病は気からっていう言葉は本当にその通りだと思いました。 例えばコップの中にお水が半分入っていたとして、水が半分「しか」入っていないって思う人と水が半分「も」入っていると思う人がいると思うんですね。
編集部
編集部:
はい。
松崎美子
松崎:
私は結構前者で考えてしまうことが多くて。 そういう人間に、完治すると言ってくださった先生には本当に感謝しています。

金額でなく、ポイントで考えるクセ

編集部
編集部:
プロディーラーでも、個人投資家になり投資の成果が出続けると足元をすくわれることがある、という貴重なお話をいただきました。
松崎美子
松崎:
人間は謙虚でなくてはいけませんね。 私が反省したのは、利益の金額ばかりに目を向けていたことです。 口座の残高がみるみる増えていき、お金を増やすのはなんと簡単なことかと(笑)。
編集部
編集部:
その感覚、味わってみたいです(笑)。
松崎美子
松崎:
今はもう、何ポイント増えた、減ったと考えています。 例えば「300万円分減った」を「300ポイント減った」と言い換える、言葉一つで違うと思います。 他の方はわからないんですけど、トレード結果をポイントで考えるようになってからは、だいぶ楽になりました。

だから損切りが置けないような取引をしないようにとマイルールで決めております。 ポジションを持った後、自分の有利なほうに動いたらストップロスをどんどん上げていったりします。 なので、自分がやられているときにストップロスの位置をずらすことはしないです。 ずらすと、クセになるので。

…ただこれだけ言っても、損切り位置をずらしていた時期はあるんです。(笑)
編集部
編集部:
いやはや。大失敗をして、体調不良にまでなった松崎さんといえど、やっぱりそうなんですね(笑)。
松崎美子
松崎:
だって、損切りつけてから、相場がいったん戻るんですよ(笑)。 あと15ポイントだったのにー!とか思っていたら、どんどんずらすようになってしまうんですね。本来マイナス15ポイントで終わっていたものが、マイナス50ポイントになってしまったり。

今は一切ずらさなくなりました。どうしても損切り位置をずらしたかったら、損切り後に、新しくポジション持てばいいんですよね。
編集部
編集部:
確かにそうですね。
松崎美子
松崎:
いろんな失敗をしていますよ、私(笑)。
編集部
編集部:
様々な失敗をされたからこそ、今のマイルールを構築されたということですよね。
松崎美子
松崎:
ええ、私の場合は3回連続でストップロスついたら一週間お休みします。 マーケットが私に合っていなかった、もしくは自分の思い込みがどこかで強すぎたか。 そういったときは洗いざらいファンダや要人の発言を見直します。 そこで思い込みのズレを埋めていきます。

ファンダメンタルズについて 要人発言の位置づけ

編集部
編集部:
ファンダメンタルズが重要であるとされていますが、FX初心者の方でファンダメンタルズが難しいと思う方もたくさんいらっしゃると思います。改めて、抑えておくべきポイントなどありましたらお伺いしたいです。
松崎美子
松崎:
まずファンダメンタルズ分析は、ドル/円だけトレードするなら日本語のニュースなどだけでもいいんですけれども、ほかの通貨をトレードするには、何ごとも英語ありきなんですよ。FXのためだけに英語を学べないとも思うんですけどね。

何が大事な情報かというお話ですが、その時その時で、経済指標が大事な時と、金融政策が大事な時があります。今年(2020年)に関しては金融政策と要人発言だと思います。
編集部
編集部:
はい。
松崎美子
松崎:
要人発言について、Brexitで散々な思いをしている方もいらっしゃると思います。
編集部
編集部:
経済指標は何時に発表されるのかわかりますけど、要人発言はいつ発言が出てくるか、時間がわからないことがほとんどだと思います。
松崎美子
松崎:
はい。そのうえで、だれが要人かっていうのも、わかりづらい。 各国の中央銀行の総裁だけでいいのか、政治家までいれたほうがいいのか。

お答えとしては、それはやっぱりその時のトピックによります。 Brexitであれば、政治家は入る。キーパーソンを先に知っておいて損はないと思います。

市場の「織り込み」の大切さ

編集部
編集部:
先にメインシナリオがあって、それに対してどういう影響を及ぼす発言をしたかをみるってことですよね。
松崎美子
松崎:
そうですね。それに対する反対意見が出なければ市場は織り込み済みになるんで。

あと、どんなに新しい発言に見えても市場が織り込んでいる、もしくは二番煎じのような発言であれば、とっくに知ってるから意味ないんですよね。 織り込み済みって数値化できないから、難しいんですよね。私が織り込んだと思っても織り込んでいない場合がある。でもそれは、個人によって解釈の尺度が違うので。だから毎日自分なりにトライ&エラーを繰り返して、どの部分が織り込んでいるかを見極める。
編集部
編集部:
・・・やっぱり難しいですね。
松崎美子
松崎:
例えば今(インタビュー:2020年10月中旬)のBrexitで言えば、EUとの通商交渉について、100%の合意は織り込んでないんですよ。 この前まで合意は4割で合意というのを織り込んでいたのが、最近では6割に増えたんですね。 ここまで私は織り込んでいると思うんです。ポンドが買われているのは5割を超えたから。

だからわたしはまだポンドは買いだと思っているし、100になったら跳ね上がると思います。 ただ そこで問題なのは新型コロナなので。経済がそこで止まってしまうと、実体経済は今ダメなので。
編集部
編集部:
Brexitっていう大きな為替テーマがあるのに、もっと大きな新型コロナの蔓延があるので、これでEUとの通商交渉が織り込み100になったとしてもイギリス経済がもたない。
松崎美子
松崎:
あと英財政はメチャクチャですから。そこはやっぱり難しいですね。 海外の人はBrexitを見ているんですよ。ただイギリス国内は新型コロナばっかりに関心がある。だからいっせーのせで海外勢の買いが入るとポンドは一気に上に行くんじゃないかと。
編集部
編集部:
大きく動く可能性があるんですね。
松崎美子
松崎:
さらに、また新しい話が出ていて、もしかしたら今月末(2020年10月)には間に合わない。しかも法律では移行期間の延長はできないので。 とりあえず12月末までに合意して、批准期間を極端に短くして、残りの時間、法律に引っかからないような呼び方に変えて、それで1月中の合意を目指すというのを聞きました。
編集部
編集部:
なるほど、ロスタイムですね。
松崎美子
松崎:
だからどんどんずれていく。 移行期間というのも昨年10月に決めたEU離脱協定というのがあったんですけど、このEU離脱協定で2020年6月30日までに移行期間を延長しなければ、新しいなんとか条約というのをつくらなきゃいけないんですよ。ただもう時間がないからつくれない。なので移行期間の延長は99.99%ないから、みんな時間がないって言ってます。 これがまだ6月の29日だったらどうにかなっていたかもしれないんですけど。
編集部
編集部:
その時は交渉しないって突っ張っていましたもんね。 実際、個人投資家がトレードするにあたり、織り込みが4割から6割に変化したなと思ったときに順張りトレードをしていくというイメージですかね。
松崎美子
松崎:
そうですね。
編集部
編集部:
要人発言が出たらトレードに活かす、と。
松崎美子
松崎:
はい。取引通貨ペアについて、日本の皆さんはポンド/円だと思うんですけど、私の場合はユーロ/ポンドです。
別にユーロが損するわけではないんですけど、いままで、合意は無いだろうからのユーロ売りポンド買いがでていました。もし100%に限りなく近くなるのであれば対ユーロでのポンド買いが一番面白いんじゃないかと思いますね。

もちろん対ドルでもいいんですけど、結構売られちゃったから、そろそろいいかなと。なんとなくドル売りの流れになっていますよね。

すべてが繋がる瞬間がある

編集部
編集部:
改めて、ファンダメンタルズの達人、松崎さんから個人投資家へのアドバイスがありましたらお願いいたします。
松崎美子
松崎:
そうですね、こんなこと言ったらあれなんですけど、ファンダメンタルズが無理だなと思ったらテクニカルを極めてくださいって感じです。 ただファンダがわかるようになると、松本清張さんの小説「点と線」じゃないですけど、毎日起きている出来事が一気に線のようにつながるときがあるんです。 これがあるからやめられないんですよ。
編集部
編集部:
なるほど、ちりばめられたピースが一度に合致する瞬間があるからやめられない。そしてトレードの成果に、自信をもってトレードできる、と。
松崎美子
松崎:
はい。ですのでとても面白いです。
編集部
編集部:
これは銀行のディーラーのときも同じような考え方でトレードしていたのでしょうか。
松崎美子
松崎:
そうですね、私が2番目に働いた米系の銀行は、エコノミストセクションから、例えば要人発言がでたときに担当から短いコメントが社内の掲示板に流れるんです。そうしてお客様に「先程の発言はこういう意図があると、うちのエコノミストは話しています。ただ私はこう思います。」と伝えていました。
編集部
編集部:
最終的にはお客様の判断です、ということですね。
松崎美子
松崎:
はい。ただ本当に銀行のエコノミスト集団は凄いですよ。 選挙でも各政党のエコノミストを引き抜いてきたりするので、内部事情をほぼ全部知っているんです。毎日党のエコノミストと話すので、そこで得た情報をお客様にサジェスチョンできるし。本当に彼らは凄いです。

最強のツール Twitterの使い方

編集部
編集部:
では、個人投資家となった松崎さんがファンダメンタルズの情報を得るにあたり、重宝しているものはありますか?
松崎美子
松崎:
私はTwitterです。 私が銀行に勤めていた時はTwitterなんて無かったじゃないですか。今なら、普通つながれないような人の情報でもTwitterを介して得ることができます。実はTwitterには良い情報がたくさん転がっているんですよ。
編集部
編集部:
おや、いいことを聞きました。
松崎美子
松崎:
今じゃTwitter無しの生活は考えられないですね。 これがないと、もう何もできないです。 それこそ、朝から晩まで。もう一日のほとんどTwitterを見てるんじゃないですかね(笑)。
編集部
編集部:
若者のようですね(笑)。
松崎美子
松崎:
だから選挙の情報も基本はTwitterから。
編集部
編集部:
Brexitの時も…。
松崎美子
松崎:
はい、もちろんTwitterから沢山情報を集めていました。 当時オンラインセミナーをやっていたんですけど、自分もポジションを持っていたので気になって気になって(笑) Twitterに情報って出ているので。チェックしておくべきだと思います。
編集部
編集部:
英語が頑張れる方は英語圏のTwitterをしっかりおさえておくべきなんですね。 そのために英語を勉強するのもありですよね。
松崎美子
松崎:
ありだと思いますよ。 翻訳と言っても中途半端なものですし。 各会社で翻訳したものを出したりしているんですけど、難しいヘッドラインがあったら簡単な表現にして出したりしているんです。その、省いているところが、実は肝心なところで、訳しきれていなかったりするんですよ。
編集部
編集部:
Twitterは松崎さんにとっても大事な情報源であることがわかりました。

PickUp編集部より

元外銀ディーラーとして、トレード経験が豊富な松崎さんであっても、相場で「お祈り」をしてしまった過去があったとのこと。損切りを置くことがいかに重要か、理解することができました。またファンダメンタルズ分析を武器にしている松崎さんが重宝しているのがTwitterで、なんと米大統領選やBrexitの際にもTwitterを活用していたそうです。後編は日本の個人投資家の方へのアドバイスを熱く語っていただきました。

【前編】

【投資の真髄がここにある!伝説のディーラー列伝 インタビュー記事まとめ】

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f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。