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「ワクチンの恩恵を最も受けるのは英国かも」ポンド 12月見通し 松崎美子

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2019年のマーケットの主役は、ポンドであった。2020年も引き続き、主役を引き渡すつもりはなさそうである。
そこで早速、最新のポンドを取り巻く注意点をまとめてみたい。

▼注目点①:新型コロナ・ワクチン期待 
▼注目点②:Brexit交渉
▼注目点③:ボリスの取り巻き解雇
▼ポンド見通し

注目点①:新型コロナ・ワクチン期待

11月9日、米ファイザー社と独ビオンテック社が、共同開発中の新型コロナウィルス・ワクチンの治験で、予防の有効性が90%を超えたとする初期データを発表した。

この発表を受け、ポンドは対ドルで50ポイントほど上昇したが、ある欧州系銀行は、「今回のファイザーのワクチンが、年末/年始あたりに使用可能となれば、最も恩恵を受けるのは英国だ。」という内容の顧客レポートを発表。

英国では第2次感染が拡大しており、12月2日まで2度目のロックダウンを実施している。最初のロックダウン時には、人口に対しての死者数が最も多かったのが英国であったこともあり、ワクチンができれば G10各国の中でも最も経済的な恩恵を受けることになるだろう。

かなり気の早い話しであるが、イングランドでは1260箇所にワクチン接種センターが設置された。一足お先にワクチンの完成を待つばかりとなっている。

注意すべき点:

ワクチンが完成することと、実際に国民がそれを利用することとは、別問題であろう。11月22日に発表されたOpiniumの調査によると、ワクチン接種の義務化を支持する英国人は、42%。義務化すべきではないと考える人は、45%という結果が出た。ただし、安全性が確保されれば、66%の人が接種を希望しているそうである。
https://www.theguardian.com/politics/2020/nov/21/locked-down-christmas-preferred-over-new-covid-restrictions-in-january-poll-finds

経済がガタガタに傷んでいる英国にとって、ワクチン承認と接種の開始は「神風」となるであろう。

注目点②:Brexit交渉

いくつもの合意期限が過ぎた。果たして本当の「合意期限」は、いつになるのかわからないが、11月23日週、或いは12月初旬が、本当の意味での期限という意見が多い。ただし、一部の交渉関係者からは、移行期間が終了する12月31日未明の5分前まで大丈夫という強気の意見も聞かれる。

合意の有無に加え、最近もう1つの問題が報道されるようになった。それは、「批准方法」である。

私もはじめて知ったことであるが、「批准」には2種類あるそうだ。1つは「混合型」。これは、EU加盟27ヶ国の議会でそれぞれ批准され、最後に欧州議会で批准されるやり方を指す。もう1つは「EUのみ型」。この場合は、加盟各国での批准は省略し、欧州議会が代表して批准を行なうやり方である。「批准方法」を決めるため、新たなEUサミット開催の必要性を訴える人たちもおり、どんどん時間が足りなくなってきている。

 

注意すべき点:

Brexit交渉だけでなく、批准方法まで決めなければいけないとは知らなかったので、関係者にとって頭痛の種が増えただろう。

出てくる報道を見る限り、交渉内容の95%は既に合意済みで、残りの5%(漁業権、LPF(対等な競争環境)、問題解決方法)で譲歩が必要ということである。

個人的には、最悪のケースとして、大枠で合意し、肉付けは来年以降。批准手続きも来年という「法律的に合法なのかわからないが、どさくさに紛れたアクロバット駆け込み合意」となる可能性が強いのではないか?と考えている。

合意は合意ということで、ポンド買いになるのかは、正直自信がない。

注目点③:ボリスの取り巻き解雇

11月13日、英国政治シーンに激震が走った。ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)の親友であり、2016年国民投票時に離脱派として共に戦った仲間であるケイン首相官邸広報部長と、カミングス首相主席アドバイザーを、ボリスは解雇した。

このニュースが出た時に私は日本にいたが、真っ先に頭に浮かんできたのは解雇に踏み切った「タイミング」であった。

ここでの「タイミング」には、2つ意味があり、1つはBrexit交渉の最終局面で、ボリスがBrexit強硬派2人の解雇を決定したこと。もう1つは、そしてこれがより重要であるが、アメリカ大統領選ではバイデン氏の当選がほぼ確実となったことである。

Brexit交渉については、カミングスさんがいなくなったからといって、ボリスが今まで見せなかった柔軟姿勢を示すとは、私は思っていない。あくまでも譲れないところは、譲らないと主張するであろう。英国は、経済を犠牲にしてでも、国家主権を自分達の手に戻し、独立国家として生きていくことを選んだ。その辺を読み間違えると、痛い思いをする。

しかし、アメリカのバイデン新大統領に関しては、話しは別だ。11月10日にボリスはバイデンさんと電話で話しており、ボリスなりに何か感じたのかもしれない。もしかしたら、バイデンさん率いるアメリカを敵に回してしまうと、英国は 米欧中全てを敵に回すことにもなりかねず、それを避けたかったのかもしれない。

注意すべき点:

今回の側近解雇により、保守党全体がかなりガタついているようだ。

しかし、カミングスさんが主席アドバイザーだった頃は、首相官邸と保守党、そして有権者とが全く繋がっていなかった。もしかしたらボリスは早々と2024年次期総選挙を睨み、もっと風通しのよい政権を目指し、昨年12月総選挙での公約を口約束だけで終らせず実現あせることに力を注ぐつもりのようだ。

もし今回の解雇劇によって、地に足がついた政権に生まれ変わるのであれば、ポンドにとっては好材料となり得るだろう。

ポンド見通し

先月も同じことを書いたが、ポンドの動きを見ていると、悪い材料は無視し、良いニュースだけを拾っている印象を受ける。気をつけなければいけないのは、どういう形にせよ「Brexit合意」というニュースが出た時に、Buy the rumour , sell the factで、利益確定の売りが出てくることが予想される。

この場合、合意内容にもよるだろう。アクロバット駆け込み合意であれば、足元を見られてポンドの利益確定売りが大きく出てくるかもしれない。

ただし、私としては合意は合意。下がったところは、丁寧に拾いたいと思っている。

ポンド/米ドル

これはポンド/ドル週足に200週SMAを載せたチャートである。Brexit交渉結果が出るまでは、水色のレンジ(1.2880~1.3430)内での動きを予想する。もし合意し、Sell the factでポンドが下落しても、1.27ミドルが下抜けするような気がしない。もしするのなら、そこは買いで入りたいと考えている。

f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。