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「Brexitは合意あり離脱が濃厚に ポンドの一段高も」ポンド 1月見通し 松崎美子

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▼注目点①:Brexit交渉 
▼注目点②:変異ウィルス
▼ポンド見通し

注目点①:Brexit交渉

12月23日ロンドン時間14時頃、突然マーケットが賑やかになった。それは欧州委員会が加盟各国に対し、「Provisional application(仮出願)」の準備をするように命じたという報道が皮切りであった。これは、EU法 218条5項で定められているもので、加盟各国の議会などが批准をする時間が足りない時に、仮に使われるものだそうである。EUでは過去にもこれを使ったことがあるが、普段は欧州議会の同意を得て行なうものだが、今回は時間が足りず、その過程を省略してEUが見切り発車したようだ。

どういう事かと言うと、23~24日で合意が確実となっても、各国議会の批准時間が年内に終らない場合に備え、Provisional applicationを出しておき、英国が移行期間を終了してEUから離脱した来年1月を過ぎても批准を可能にするということだと、私は理解している。

肝心のEU/ 英国との通商交渉は、執筆時点ではまだ合意していない。ただし、EUと英国双方のメディアからのヘッドラインを総括すると、23日中に合意し、最終の詰めを24日の代表者全体会議で確実なものにしようという流れのように感じる。ここまで来たら、「(部分的かもしれないが)合意して離脱」の可能性が相当色濃い。

注意すべき点:

公式な合意確認以前に、マーケットはポンド高で動いている。ヨーロッパのトレイダー達は18日(金)が仕事納めの人が多いので、流動性が薄く、ヨーロッパ人のフローがこの上昇には反映されていない可能性が高い。

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そうなると、仮に公式に合意が発表されれば、12月28/29日にマーケットに戻ってきた人たちがもう一段、ポンドを買い上げる可能性も出てくる。

Buy the rumour, sell the factの関係がきちんと当てはまらないかもしれない。

注目点②:変異ウィルス

12月14日に英国南東部で発見された変異ウィルス。急速に感染拡大したことを受け、政府は行動制限が最も厳しいTier 3では足りないと判断し、急遽19日にTier 4を設定し、ロンドンとその周辺州をTier 4にすると発表した。

これを受け、翌20日には早速、フランスが48時間の国境閉鎖を打ち出した。ここからが悲劇の始まりである。英国のスーパーに並ぶ食品/飲料の7割がEUからの輸入品で、フランスやオランダから英国の港に入ってくる。そのフランスが閉鎖したため、物流が完全にストップした。

当然であるが、21日のマーケット・オープンでは、世界初の変異ウィルス発見と、英国での物流の停止による食糧危機を危ぶんで、ポンドは窓明けスタートとなった。

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英国は世界で最も早く12月8日からワクチン接種をスタートしている。18日までに50万人が1回目のワクチン接種を終了。50歳以上の人口は2500万人程度であることを考えると、1人2回の接種を終了するには、このペースでは4年間かかる計算となる。

そこにきて変異ウィルスが発見され、23日には南アフリカでも新たな変異ウィルスが出た。そのため、ますますワクチン接種の「義務化」が予想される。これは英国だけの問題ではなく、既にカンタス航空はワクチン接種証明書保有者のみ搭乗可能にすることを検討している。そして12月27日より、英国からの日本人帰国者についても、72時間以内のPCR検査証明書を求められるようになった。


個人的には、今後このような管理社会に突入するのかと思うと、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」を思い出し、背筋がゾッとしている。

注意すべき点:

現在変異ウィルスで騒がれているのは英国と南アフリカだけであるが、ポンドと違い、ZARはこの材料で売られていない。

2021年はドル売り/ZARやMXNなどの新興国通貨買いの推奨が多いだけに、そのフローがZARを支えているだろう。

万が一、南アフリカでの変異が悪化した場合、ZARの巻き戻しには注意したい

ポンド見通し

私は今年のほとんどを、ポンド買いで貫き、ポンドを売れずにいた。その理由のひとつが、ポンド実効レートである。

過去20年間のポンド実効レート


出典; 英中銀
https://www.bankofengland.co.uk/boeapps/database/FromShowColumns.asp?Travel=NIxAZxI3x&FromCategoryList=Yes&NewMeaningId=RSTEZ&CategId=6&HighlightCatValueDisplay=Exchange%20rate%20%28effective%29%20-%20sterling


これは過去20年間の実効レート・チャートであるが、青くハイライトを入れた下半分は「売られすぎレベル」と認識しており、このゾーンでは売りからは入らないようにしている。

もちろん「やはり合意なき離脱になってしまいました」となれば、ポンドは売られるだろう。しかし、そこで落ちきったところからは、買いのチャンスを狙いたいと考えている。

これはポンド/ドルの月足チャートであるが、ピンクの長期レジスタンスを上抜けて今年終了するかが、最初の注目点。

ポンドドル 月足

こちらはポンド/ドル週足チャートである。ピンクのレジスタンスが1.32ミドルに来ている。もしレジスタンスを上に抜けたレベルで今年が終了するのであれば、ローソク足の形が良くなったところを狙い、レジスタンスの下を損切りと設定し、買い攻めが有効か、考えてみたい。

ポンドドル 週足

f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。