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過去最悪のGDPを記録した香港と引き続き好調な人民元「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港や中国本土の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第32回は「過去最悪のGDPを記録した香港と引き続き好調な人民元」でお届けいたします。

目次

1.2020年香港GDPは過去最悪の6.1%を記録
2.中国海警法が施行
3.香港ドルと人民元相場のアップデート

1.2020年香港GDPは過去最悪の6.1%を記録

先月29日、香港の2020年第4四半期のGDPについて、第4四半期が▲3.0%、2020通年で▲6.1%と発表されました。これは観測の始まった1961年以来、年率で最悪の数値となり、1998年のアジア通貨危機の水準(▲5.9%)を上回る結果となりました。

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GDPの内訳(年率)をみていくと、政府支出は前年比で+7.8%ですが、消費が▲10.2%、サービスの輸出入が▲35%前後となっています。言い換えれば、政府支援は例年以上に行ったものの、香港の国際金融・観光都市としての経済活動が停滞したことで景気が冷え込み、連れて個人消費も冷え込んだことを表しています。

先週号でもお伝えしましたが、現在、香港の失業率は6.6%と高く、まさに不景気の真っただ中にあると言えます。一刻も早い景気回復を期待したいところですが、国家安全維持法の施行以降、香港への新規投資の見直しや、外資系企業の撤退が活発に起こっているものと想定され、しばらくは厳しい状況が継続すると想定されます。

その他、先週は、香港居民所有の携帯電話SIMカードへの実名登録義務付け、中資系企業の大湾区航空(グレーターベイ・エアラインズ)の就航申請が発表されるなど、本土ルールの適用や、本土資本の香港への流入が続いており、香港の本土化がますます進んでいる印象を受けます。

香港はアジアの国際金融都市から、単なる中国の一地域へと変貌していく過程にあると思います。とは言っても、急に全てが変わるわけではないので、引き続き注意深く見守って行きたいと思います。

2.中国海警法が施行

今月1日、中国海警法が施行されました。本法律は、中国海警の職務内容や責任の所在を定めるものですが、地理的に近い日本にとっても関係のある法律として、尖閣諸島などを念頭にどのような影響が及ぶのか、議論が活発になっています。

私は軍事や国家安全保障に関して、自身の専門領域ではないのですが、例えば米中関係のように二国間の対立は、金融市場に対して与える影響も極めて大きいため、なるべく軍事や国家安全保障の情報についても収集するように努めています。平時には経済指標や金融政策を読みとくことが大切だと思いますが、米中に挟まれている日本の、それも国家安全保障にかかわる領域ということで、特に注目して見守っています。

専門家の意見として、例えば「中国の行動原理」を執筆された益尾知佐子九州大学准教授は、中国が尖閣諸島の「実効支配」に動くとして、日本は警戒すべきであると指摘します。また先日、私が参加した笹川平和財団(安全保障問題に力を入れるシンクタンク)の講演では、中国は尖閣諸島に対する行動を強めると考えるのが現実的とブリーフィングを受けました。

一投資家として気をつけなければならないのは、軍事衝突や外交関係の悪化が想定される事態をどれだけ事前に把握できるかどうかに尽きると思います。私は現時点において、中国海警法は、欧州各国や米国も巻き込んで大きな動きに発展する可能性のあるリスク要因として認識すべきと考えます。

中国は14ヶ国と国境を接しており、歴史的にも領土の縮小と拡大を繰り返してきた国です。日本の常識にとらわれずに、中国、ひいては世界が何を考えて行動しているのかを推測することも、長い目でみれば投資のパフォーマンスに影響すると思います。一国民として、また一投資家として、関心を持って見守るべき事項ではないでしょうか。

3.香港ドルと人民元相場のアップデート

さて恒例の相場のアップデートをしていきたいと思います。先週はドル円が13週の移動平均を綺麗に上抜け、上昇の兆しがみられました。一方で株式市場は軟調に推移、時期尚早と評されるかも知れませんが、金融緩和の縮小、テーパリングが早くも意識されているように感じました。

それでは香港ドル/日本円(HKD/JPY)から見ていきましょう。

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香港ドル/日本円は想定通りに13.40を上抜け、一時13.50台まで上昇しました。今週も、ドル円の動きに大きく影響をうけることを想定しますが、もう一段の上昇が見込めると考えています。

米ドル/香港ドル(USD/HKD)は依然としてもみ合いが継続。米香の金利差もほぼない状況ですので、こちらは引き続き膠着を予想します。

次に人民元を見ていきます。

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人民元/日本円(CNH/JPY)はさらに一段と上昇、16.20台が定着しつつあります。ドル円の上昇を狙っても良いですが、キャリー(スワップ・ポイント)がつくこと、人民元に上昇余地があることから、人民元/日本円の買い持ちを基本方針として相場と対峙したいと思います。

米ドル/人民元(USD/CNH)については、6.40台での推移が継続しています。人民元金利も一旦上昇に転じており、さらに人民元高が進んでもおかしくない状況です。ただ人民元の買いでエントリーする場合には、今は対円がワークしやすいと思います。

最後に対円のパフォーマンスを比較したチャートを紹介させて頂こうと思います。

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こちらは2020年の年初のレートを100として通貨ペアの強弱をあらわしたチャートです。赤いラインの人民元/日本円のパフォーマンスが圧倒的に優れていたことが良くわかると思います。さらにキャリー(スワップ・ポイント)もつくので、それを加味すれば、ドル円と比べて10%ほど高パフォーマンスになっていました。

日本で取引をしていますので、ドル円を中心にみるのはとても良いと思いますが、日本と近い、世界第二位の経済大国、中国の人民元に目を向けて取引をしてみても面白いと思います。


それでは本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

日本経済新聞: 香港の空 強まる中国色
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68623070Y1A120C2FFJ000

South China Morning Post: Hong Kong economy suffers biggest annual contraction on record, shrinking 6.1 per cent as coronavirus hammers tourism, local spending
https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3119795/hong-kong-economy-suffers-biggest-annual

South China Morning Post: Hong Kong proposes mandatory registration of mobile phone numbers to tackle organized crime
https://www.scmp.com/news/hong-kong/politics/article/3119755/hong-kong-proposes-mandatory-registration-all-new-mobile

Census and Statistics Department: National Income
https://www.censtatd.gov.hk/hkstat/sub/sp250.jsp?tableID=211&ID=0&productType=8

現代ビジネス:習近平がテコ入れする「新法」で、中国は「尖閣の実効支配化」に乗り出す
https://gendai.ismedia.jp/articles/amp/77630?skin=amp&imp=0

中華人民共和国中央人民政府:中华人民共和国海警法
http://www.gov.cn/xinwen/2021-01/23/content_5582024.htm

【過去の「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。