「FXトレーダーが為替チャート以外に見るべきもの」江守 哲 FX特別インタビュー(前編)

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以下の取材記事はトレーダー個人の経験やお考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。

エモリファンドマネジメント株式会社の代表取締役、江守哲氏にインタビュー。コモディティ市場にも造詣が深い江守様に、過去のお話や為替取引のポイントについてお伺いしました。

▼目次

1.新卒で商社に
2.90年代のマーケットの空気
3.ポジションそのままで出張へ・・・
4.コモディティ価格と為替の関係

新卒で商社に

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編集部:
本日はよろしくお願いいたします。
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江守:
よろしくお願いします。
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編集部:
はじめに、社会人になったころのお話をお聞きしたいと思います。 慶応義塾大学卒業後に住友商事に入社されましたが、就職先を商社へ決めた経緯などありますでしょうか。
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江守:
まず私が就職活動した1989年は日本が一番バブルだった時なんですよ。 しかも私は大学で野球部だったので、体育会系の学生は就活が人一倍ラクでした(笑)。 入社動機としては、社会人として働くからには新聞に載るような大きい仕事に関わりたい、という気持ちもあったかと思います。
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編集部:
同期入社は何人くらいだったんですか?
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江守:
当時、同期は128人で、事務職の女性社員はで400人くらい入っていましたね。 だいたい1:3の割合なんですよ・・・。非常に、楽しかったですね(笑)。 日本の景気もいいということで、毎週末は社内合コンでした(笑)。 それはそれは忙しかったですね(笑)。
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編集部:
おお。商社にお勤めなので、お給料もさぞかし良かったと思いますが。
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江守:
はい。他の会社員よりお金の面では絶対楽なはずなのに、お金が足らないんですよ(笑)。 全然貯金ができなかったです。 入社時に作らされたクレジットカードは、キャッシングの金利がほぼゼロだったので、たくさん借りまして、借金だらけでしたよ・・・。 後からボーナスで返すっていう感じでした(笑)。
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編集部:
まさにバブルというか、驚きの生活ですね。

90年代のマーケットの空気

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編集部:
入社後、配属先はどこだったんですか?
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江守:
まず、商社に入ると、どこの部署に配属されるかは分からないんですよ。 一応希望は聞かれるんですけど通ったという話はまぁ聞いたことないですね。 営業志望が経理とか全然ありました。 同期はいきなり札幌に配属になり、泣いてたりしましたね。
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編集部:
本人は配属先がまったく予想ができない、と。
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江守:
ええ。私は、最初の二週間の研修後に、銅の取引のチームに配属されたんですよ。 当時は花形と言われた部署ですので、「なんでお前なんか」と言われたこともありました。私、英語もできないですし。 金融も特に興味はなく、どちらかといえば嫌いな方でした。 「銅っていうのは相場商品でね・・・」と言われても「ふーん、そうなんだ」くらいの感じでした。
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編集部:
そうだったんですね。
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江守:
ただひとつ奇遇だなと思ったことがあって。 大学卒業旅行でヨーロッパの都市にいくつか行ったんですけど、その中でもロンドンが1番気に入ったんですよ。 配属された部署の銅の取引所というのがロンドンにありましたので、 「仕事を頑張れば、ロンドン赴任できるんじゃないかな」と思いましたね。
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編集部:
興味なかった仕事だけど、ロンドンに行くことを目標にモチベーションを高めたんですね。
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江守:
そうですね。たまたまうちの部署からまだ駐在員が出ていなかったこともあります。 まもなく、上司が立ち上げたロンドンの部署に駐在することになりました。
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編集部:
夢がかないましたね。 ロンドンではどのようなお仕事をされていましたか。
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江守:
様々ありましたが、例えば銅の現物取引ですね。 海外から輸入したものを、企業やお客さんに売るとかいろいろです。 上司がすぐ移動になってしまい、最初の半年以上はすさまじい業務処理をほぼ一人で対応していました。
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編集部:
慣れない土地なのに、かなりハードですね。
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江守:
ええ。しかし、ロンドンという非鉄金属のメッカで経験を積んだことによって、 業界の「オモテ」と「ウラ」でなにが行われているのか、かなり詳しくなりましたね。 もうその時点で、私は日本人の中で一番業界に詳しいって自信がありました。

ロンドンで孤軍奮闘の日々でしたが、結局その経験は今に活きていて、一番大きかったですね。 まぁ、まだ若かったしチャンスだなと思いましたよ。そんなことは誰にも言わなかったですけどね。
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編集部:
ではメキメキ仕事の実力をつけていったのですね。
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江守:
はい。そしてある程度仕事に目途がついたころに、本社から「東京に帰ってこい」って言われたんですよ。
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編集部:
え、せっかく非鉄金属もわかってきたころなのに。
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江守:
そうなんですよ。しかも次はプラント建設とか、違う仕事やるって言われて。 結構金額の大きい仕事ですので、それはそれで良かったんですけど、ここまで得た経験がもったいないと思って、ロンドンで転職活動を初めました。 そうしたら、すぐ声がかかりました(笑)。
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編集部:
さすがです。
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江守:
その会社は非鉄金属のディーリングや現物のトレーディングの両方をやってる会社なんですけど、 当時グループで世界ダントツナンバーワンでした。 住商で扱っていた10倍以上の規模でした。
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編集部:
10倍・・・想像もつきません。
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江守:
社長面接でその日に転職が決まり、俺はラッキーだと思いましたね。
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編集部:
その、転職先の会社はいかがでした?
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江守:
入社初日に、韓国から電話がかかってきたんですが、そのディール決めろといきなり言われました(笑)。
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編集部:
まさに試されたって感じですかね。
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江守:
そんな文化なんでしょうね。本当にできるのかどうか、すぐ試す。 「商談をまとめました!」って言ったら「Good job!」って言われた記憶はあります(笑)。 結局、転職先では非鉄金属のディーリングについて深いところまで覚えました。
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編集部:
ではそのまましばらくはロンドンで仕事をしていたんですか?
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江守:
本当は、ずっとロンドンにいようと思ったんですよ。 ただ一応東京にも支社があって、そっちに行くことになってしまいました。 半年以上粘ったんですけど、やっぱダメで。 結局3年もロンドンに居れませんでした。
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編集部:
それは残念です。
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江守:
それで1998年8月に帰国することになったんですけど、 ロンドンで乗ってた車があったんですね。
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編集部:
はい。
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江守:
赤いボルボだったんですけど、 帰国するからと買ってくれる人を探していたら、たまたま住商の駐在員が手を上げてくれました(笑)。
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編集部:
辞めた会社の・・・。ご縁がありますね(笑)。
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江守:
はい。しかも先輩でした(笑)。懐かしい。 それでいくらかポンドが手に入ったんですけど、 ポンドのレートが当時1ポンド243円。ドル/円が147円位だったかな。 
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編集部:
え、今から考えるとかなりの円安ですね。時代を感じるなあ。
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江守:
帰国前に、東京戻ったら給料を円建てでもらうか、ドル建てでもらうか、決めろと言われました。
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編集部:
例えばドル建ての契約だったら、ドル高になればその分お給料も良くなるってことですよね。
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江守:
はい、大事な決断なのでよく考えました。 当時、マーケットでは、ドル円は160円まで行くと言われていました。 会社の為替ディーラーに聞いても、160円方向だと答える。 ということで、給料はドル建てでもらう契約にしました。 帰国したら、それはもう円高の嵐でしたね。ドル円が下がる下がる(笑)。
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編集部:
うわ・・・。それは残念です(笑)。
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江守:
ボーナスが出たときは今でも忘れない。ドル円が101円30銭で、なんと3割ぐらい損してるんですよ。 だから、まとまったお金は絶対売らないぞと考え、レートが戻るまで預金していました。 その後、1年半くらいしてドル円は130円まで行ったんですよ。 そこがドル高のピークだったんですけどね。 ということで実体験として、相場が戻るのを粘るのは時には大事だなと思いますね。

ポジションそのままで出張へ・・・

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編集部:
商社などで、様々なご経験をされてきたと思いますが、手痛い失敗談など記憶にございますか?
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江守:
住商の最初の仕事は、銅現物のデリバリーの仕事でした。 搬送のスケジュールを組み立てるのですが、当時は90年代ですからPCもほとんどなく管理は手書きのノートですよ。 だから書き忘れ、手配忘れとかあってね(笑)。 お客さんから電話がかかってきて「今日届くはずが届いてないですよ」なんてことは何回かありましたね。
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編集部:
それって、大丈夫だったんですか(笑)。
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江守:
一応なんとかなりました(笑)。 あと、ディーラーをしていたときのことです。 明日からロンドン出張が決まっていて、ちょうどその日が誕生日だったんですよ。 しかも金曜日で調子にのっていまして、ポジション乗せたんですよね。 上昇していたマーケットだったので、さらに上がり続けるわけないだろうと、ショート積み増しでそのままロンドンへ出張しました。
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編集部:
まさか・・・。
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江守:
さらにぶち上っちゃいました(笑)。 一瞬で6000万円の損でしたね。幸い、しばらくディーリング業務が止められる「ペナルティボックス」入りだけで済みましたけど。
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編集部:
本シリーズは様々な方のお話を聞いていますが、 ディーラーをご経験されてる方、皆様一度は同じような失敗をされている印象です。
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江守:
やっぱり、ナンピンとか良くないですよね(笑)。 しかもポジション放置でどこかへ行くなんていうのは、ポジションの管理ができてないってことなんですから。 自分のポジションが管理できてないと、痛い目見ることがわかりましたね。

コモディティ価格と為替の関係

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編集部:
ではコモディティ市場についてお聞きします。 コモディティは種類が豊富でありますが、 FX初心者の方がチェックしておくべきものはありますでしょうか。
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江守:
やはり、まずはゴールドの価格ですかね。 ゴールドはドルと反対の動きをするのが基本ですから。 あとは原油価格でしょうね。 最近あまり原油とユーロは連動してないんですけど 産油国である通貨、カナダとかはメキシコに連動するので見てみてください。
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編集部:
なるほど。 特に原油と金は通貨との連動があるということですね。
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江守:
南アフリカランド/円の取引をする方は プラチナの価格はしっかりと見るべきですね。
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編集部:
プラチナですか。
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江守:
はい。プラチナの生産量の7割は南アフリカからなんです。 プラチナの市場がひきしまったりて値段が上がりますと、 その分ランド高になると考えることが出来ます。
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編集部:
なるほど。
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江守:
しかもプラチナはディーゼル車の触媒に使われていたりします。 また、水素電池の電極に使われたりします。燃料電池車が増えると、 今までない需要が起きるので注目ですね。
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編集部:
水素で動く車が世界中に拡大していけばプラチナ、南アフリカの未来は明るいですね。
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江守:
まあ南ア国内は、電力が安定しないという問題などの懸念はありますが。
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編集部:
例えば2021年現在、銅の価格は中国がけん引して消費量が拡大していますが、 ロンドン時代の銅の相場はどのようなものだったのでしょうか。
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江守:
当時の中国は、銅の市場で現在のような影響力はなかったんですよね。 当時世界で銅の消費量は800万トンって言われてたんですけど、 今はもう2,300万トン弱ぐらいですから約3倍の市場になりました。 その半分が中国の需要なんです。
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編集部:
恐るべき規模ですね。
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江守:
ここでも中国の成長を読み取ることが出来ますね。 結局、マーケットというのは「連想ゲーム」なんですよ。
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編集部:
連想ゲーム?
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江守:
どの商品がどの国、どの通貨と連動しているかを見ることで、マーケット全体へ視野が広がるんですよ。
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編集部:
FXトレードのため、為替チャートだけではなく、ほかも見ないと、ということですよね。
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江守:
はい。コモディティ市場も見ることで、より取引の幅も広がると思います。 なぜなら、経済、物流、為替、金利など全部普段から見ることになるからです。

さらに私は、実務もやっていましたから、価格の変化などに対して肌で実感できています。 偉そうに自慢しているわけではなくて、 私には実務経験というバックボーンがあるから、私のマーケットの見方などは 多少興味を持ってもらいやすいのではないかと思います。

(中編へ続く)

PickUp編集部より

新卒で商社に入社され、銅取引のチームに配属。特に興味はなかった金融の世界へ飛び込むこととなりましたが、ロンドン駐在など幾多の経験を経てコモディティ市場の第一人者に。為替取引する方は他の市場も注視することが必要だと、自身の経験から語られるその言葉には重みがありました。

【投資の真髄がここにある!伝説のディーラー列伝 インタビュー記事まとめ】

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エモリファンドマネジメント株式会社 代表取締役
江守 哲(えもり・てつ)氏
1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。英国住友商事(現欧州住友商事)に出向し、ロンドンに駐在。その後、当時世界最大の非鉄金属トレーダーだったMetallgesellschaft Ltd.(ロンドン本社、現JPモルガン)に移籍し、唯一の日本人として非鉄金属取引を極める。2000年に三井物産フューチャーズに移籍。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場の分析および投資戦略の立案を行う。2007年7月にアストマックス入社し、チーフファンドマネージャーに就任。2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立。2020年12月よりエモリファンドマネジメント株式会社が業務を引き継いでいる。ヘッジファンド運用を行う一方、株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供や講演、テレビ出演を行っている。
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