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日米首脳会談のポイントと中華圏通貨のトレード戦略「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港や中国本土の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第42回は「日米首脳会談のポイントと中華圏通貨のトレード戦略」でお届けいたします。

目次

1.日米首脳会談のポイントについて
2.為替相場のアップデート

1.日米首脳会談のポイントについて

さて、先週末にアメリカのワシントンで日米首脳会談が行われました。そこで本日は共同声明のポイントについて解説していきたいと思います。

まず今回の首脳会談の大きな趣旨は、台頭する中国を念頭に、日米が今後どのように協力・連携して行動すべきかを改めて確認するものです。本日は、そのうち、中国をけん制する目的で明記された内容についてポイントを5点に分けて説明します。

一点目が、米国が、日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用を再確認したことです。日米安保の第5条とは、「両国が共同して日本防衛に当たる」旨を記載した条文で、つまり尖閣有事の際には日米が共同で防衛にあたることを再確認しています。近年、中国による尖閣諸島周辺領海への侵入が増加しています。日本が全力を尽くして守ることが前提条件となりますが、米国もこれを支援することを再表明したことは、中国へのけん制となるでしょう。とは言え、この地域における軍事力は中国が上回っていると言われています。日本が今後、尖閣防衛のためにどこまで準備を進めることが出来るか、この点が特に重要になってくるでしょう。

二点目が日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促すと表明したことです。共同声明に「台湾」を含めるのは日中国交正常化以前の1969年に遡ります。日本と米国が共に台湾問題に高い関心を持っていることを表明する一方で、従来の考え方である、中国との国交を大切にし、中国に刺激を与えないよう配慮したと見ることもできます。特に若い世代の方は、ご存じない方も多いかも知れませんが、日本も米国も、台湾ではなく、いわゆる中華人民共和国を正式な中国政府として承認しています。そのため、台湾については、中国の内政問題としての側面もあり、台湾の平和や人権は大事ですけれども、そこにどこまで踏み込んでいくかは日米ともに議論の余地が残されています。私にとっては、アメリカが台湾にコミットしている一方で、日本は中国に配慮したイメージが強く残る会見・声明でした。昨年は特に香港国家安全維持法に注目が集まりましたが、今年は台湾防衛にさらに注目が集まると思いますので、引き続きいち日本人として、また、いち投資家として注目していきたいと考えています。

三点目が、香港及び新疆ウイグル自治区における人権侵害への深刻な懸念を共有したことです。香港では選挙法の改正など、民主主義政治が骨抜きにされ、反発する市民は有罪に処されました。また新疆ウイグル自治区では、ウイグル族に対する政府の取り締まりが強化され、行き過ぎた対応が問題視されています。なお私は、両方の地域を目と足で確かめた経験から、個人的には「黒」だと思っています。日本は人権を大切にするのか、それともしないのか?私は、日本は歴史的に文化的にも中国と近く、正直、無自覚に人権を大切にしないところがあると思っています。日本のコンセプト、すなわち国家としての考え方や理念を問われているのではないでしょうか。

四点目が韓国との三か国協力が必要不可欠であることの再確認です。これは対中国及び、北朝鮮を意識してのことですが、近年は韓国の中国寄りの姿勢が見え隠れしており、中国が韓国を取り込む動きが加速しています。韓国の経済力・軍事力は世界的にも高いレベルにあり、もし韓国が中国に寄れば、東アジアの情勢は一変します。最近、日韓関係は悪化の一途を辿っていますが、本来、日本は韓国と手を組み、共に対中関係を考えねばならない立場にあるのです。日韓関係が日中関係や米中関係にも影響を与えることを念頭に、ウォッチしていく必要がある事項と考えます。

5点目が「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」の立ち上げです。これは近年の中国のテクノロジーの進化や、一帯一路政策を念頭に日米が協力し、イノベーションを起こそうと言う試みです。デジタル分野を始め、さまざまな領域で中国の技術は日米を追い越し始めています。中国は特にAIの発展に関して他国をぶっちぎると見る見方が多く、理由は中央政府が国民ほぼ全員のデータを握っているため、単純にデータ量が多いからです。反対に日米欧は人権を大切にすることとオフセットで、情報量が少なく不利です。民主主義が力を合わせることで、どこまで中国の中央集権モデルに対抗できるのか、そのためのパートナーシップであり、今後特に注目が集まると思います。

以上が、私が会見や声明文をみて、特に中国と関わる分野で注目したいポイントです。特に台湾問題は既に表面化している「地政学リスク」ですから、これは最大限警戒をした方がよいと思います。それから有事の際に、円高になることは過去多かったです。ただ、今回はどのように動くのかは分かりませんので、基本的には有事の際はスクエア(売りも買いもない状態)にすることをおススメします。

2.為替相場のアップデート

先週のドル円相場は、先々週のドル安・円高の流れを引き継ぎ下落しました。先週火曜日の夜間に米3月消費者物価指数が発表され、+2.6%と、FRBの運営目標である2%を上回る数値であり、強めの数値でしたが、ドル安は止まらず。また水曜日にはパウエルFRB議長が経済団体のインタビューにて、米景気に対して全般に強気な姿勢を見せましたが、こちらも態勢に影響をあたえずでした。木曜日には一時108.61の安値をつけるなど、週を通じてドル安の傾向が続き、週明け執筆段階の4月19日(月)時点では108.40のサポートを下抜け、108円丁度割れをトライしている状況です。

このような状況を踏まえて、香港ドルを取り巻く環境を見て行きます。

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USD/HKD(青色)は、米ドル安方向に反転してきました。現在は「米ドル」に市場の注目が集まっているので、米ドルの動きに左右される展開になると思います。その中で米ドル安が進んでいるので、では米ドルを売って、香港ドルを買うかと言われると、私はその取引はしません。なぜならば、景気も悪く、政治環境も悪い香港の通貨、香港ドルを買いから入るのが心地よくないからです。なので、こういう時は様子見の方針にしています。

HKD/JPY(茶色)については、ドル円の上昇が一服、ドル円の下落につれて、垂れてきています。ドル円が下値サポートで意識されていた108.40も下抜けていますので、少し上昇のペースが停滞しそうな雰囲気です。こちらも様子見が無難と思います。売る場合には短期勝負が望ましいでしょう。

次に人民元を見て行きたいと思います。

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USD/CNH(青色)はドル安の流れを受け、反落しています。米中対立が激化するなかで、中華圏の株式市場は軟調に推移しているのですが、通貨人民元はなかなかに堅調で、売られない通貨と感じているところです。もちろん背景には強い経済成長や、大きな経常収支の黒字、人民元の国際化政策などが挙げられます。人民元を売りから入ると、スワップ・ポイントで打たれるばかりか、方向も人民元安にならず、あまり良い記憶もないので、人民元売りはすでに撤退しました。

CNH/JPY(赤色)はドル安円高の中で、ドル円と比べれば安定して推移しています。16.50レベルまで下がってくれば、買いを検討しても面白いかもしれません。ドル円次第で下げ幅は決まってきますが、こちらはしばらく様子を見た後、買いから入っていきたいと考えています。

基本的に人民元は、中長期で考えれば、まだまだ買っていけるはずです。一方で米中対立激しくなる中で、中国を取り巻く環境が悪化していることや、有事に発展する可能性が最大のリスクとなり続けます。


それでは本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

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<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

日米首脳共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」2021年4月16日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100177719.pdf

日米安全保障条約(主要規定の解説)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku_k.html

【過去の「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。