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「インフレ高進も米長期金利は小幅に低下」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2021年6月

【外為総研 House View】

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目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 5月の推移
・5月の各市場
・5月のドル/円ポジション動向
・6月の日・米注目イベント
・ドル/円 6月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 5月の推移
・5月の各市場
・5月のユーロ/円ポジション動向
・6月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 6月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

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ドル/円 5月の推移

5月のドル/円相場は108.329~110.198円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.2%の小幅な上昇(ドル高・円安)となった。

7日の米4月雇用統計が期待外れに終わった事で108.33円前後まで下落したが、12日の米4月消費者物価指数が予想以上に高い伸びを示すと、インフレ加速・早期利上げの連想から109円台後半へと反発。その後は、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官らが、インフレの上昇は一時的なもので、拙速な金融緩和の解除には動かない姿勢を示した事からドルが軟化。ただ、円も軟調に推移したため108円台半ばで下げ渋った。

27日には、月末絡みの実需フローが観測された他、日本政府が東京や大阪など9都道府県の緊急事態宣言を延長する方針を固めた事から円売りが活発化。翌28日には、米4月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が予想を上回った事もあって110.20円付近まで上値を伸ばしたが110円台には定着できなかった。

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出所:外為どっとコム

7日
米4月雇用統計は、非農業部門雇用者数が26.6万人増に留まり市場予想(100.0万人増)を大幅に下回った。失業率も6.1%と、予想(5.8%)に反して前月(6.0%)から悪化した。これを受けてドル売りが強まると、ドル/円は108.33円前後まで急落した。

なお、バイデン米大統領は米4月雇用統計について「政権が打ち出した経済政策が景気押し上げのために必要である事を示している」「経済の崩壊から米国はまだ抜け出そうとしているところだ」と述べた。

12日
米4月消費者物価指数は前月比+0.8%、前年比+4.2%と予想(+0.2%、+3.6%)を大幅に上回る伸びとなった。食品とエネルギーを除いたコア指数も前年比+3.0%に加速した(予想+2.3%、前回+1.6%)。これを受けて米長期金利が上昇するとドル/円は109円台を回復。その後もストップロスを巻き込みながら上伸した。

なお、クラリダFRB副議長は、インフレ率の上昇は一過性のものとしながらも、「必要ならインフレを抑制するための行動を我々は躊躇しないだろう」と言明した。

14日
米4月小売売上高は前月比±0.0%と市場予想(+1.0%)を下回った。ただ、3月分が前月比+10.7%へ大幅に上方修正(修正前+9.8%)された。自動車を除いた売上高も前月比-0.8%と、予想(+0.6%)に反して大幅に落ち込んだが、3月分は+9.0%に上方修正(修正前+8.4%)された。その後に発表された米4月鉱工業生産も、前月比+0.7%と予想(+0.9%)を下回ったが、3月分が大幅に上方修正(+1.4%から+2.4%へ)された。

18日
日本1-3月期国内総生産(GDP)・一次速報は前期比年率-5.1%と予想(-4.5%)を超える落ち込みとなった。新型コロナウイルスの感染再拡大で個人消費が低迷した事が響き、3期ぶりのマイナス成長となった。

19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)は4月会合の議事録を公表。「顕著な進展にはしばらく時間がかかる可能性」「経済は目標から依然として程遠い」などと、慎重な見方が示された。一方で「数人のメンバーは、今後ある時点の会合で買い入れペースの調整を巡る討議の開始が適切になる可能性がある」として量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)にも言及した。

21日
日本4月消費者物価指数は前年比-0.4%と予想(-0.5%)を僅かに上回ったが、前月(-0.2%)から低下。生鮮食品を除いたコア指数も前年比-0.1%と予想(-0.2%)を上回ったが9カ月連続のマイナスとなった。

24日
ブレイナードFRB理事は、「インフレ動向の非常に重要な部分は長期的なインフレ期待で、こうした期待は極めて安定した状況が続いている。インフレが上昇するような展開になっても、現状のインフレ率に深く影響を及ぼすことは想定されないと示唆している」との見解を示した。これを受けて米長期金利が低下する中、ドルが弱含んだ。

なお、セントルイス連銀のブラード総裁や、アトランタ連銀のボスティック総裁もインフレについて、大部分は一時的なものに留まるとの認識を示した。

27日
バイデン米大統領が28日に公表する2022年会計年度の予算教書で6兆ドルの歳出を提示する見通しだと報じられた。これを受けて国債発行増加への思惑が高まり米長期金利が上昇するとドルが強含んだ。

米新規失業保険申請件数は40.6万件と予想(42.5万件)を下回り、2020年3月以来の水準に減少した事や月末に絡む実需の買いフローが観測された事もドルを押し上げた。なお、米1-3月期国内総生産(GDP)・改定値は前期比年率+6.4%と速報値と同じだった。

5月の各市場

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5月のドル/円ポジション動向

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【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
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6月の日・米注目イベント

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ドル/円 6月の見通し

6月のドル/円相場は米長期金利の動向≒日米金利差が焦点となりそうだ。5月の米10年債利回りはインフレ率の上昇が加速したにもかかわらず小幅に低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)が足元のインフレ上昇は一過性との認識を示した事で、量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)の開始は早くても秋以降との見方が広がったためだろう。

15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、テーパリング開始に向けた議論がどの程度高まっているか注目される。もっとも、FRBはインフレ動向よりも雇用情勢を重視していると見られる事から、4日の米5月雇用統計はより重要になるだろう。4月雇用統計が期待外れの結果に終わっただけに、5月分で雇用者数の大幅な増加が確認できなければ市場のテーパリング観測が高まる事はなさそうだ。いずれにしても市場のテーパリング観測が米長期金利とドルの舵取り役となる公算が大きい。

他方、5月はドルが対欧州通貨などを中心に弱含んだ一方で、円はドル以上に軟化した。これは日本政府の新型コロナワクチン政策の躓きなどによって経済回復への懸念が生じた事や、日銀が金融緩和を長期化させざるを得ないとの見方が改めて強まった事が原因と見られる。「ワクチン不安」は時間の経過とともに緩和する可能性があるものの、日銀と他の主要中銀との「政策スタンス格差」は当面縮まる事はないだろう。

こうした中、日本の長期金利が大きく変動する公算は小さく、ドル/円相場は、米10年債利回りの動向に左右される展開が続きそうだ。
(予想レンジ:107.500~111.500円)

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

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ユーロ/円 5月の推移

5月のユーロ/円相場は130.983~134.057円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.9%上昇(ユーロ高・円安)した。なお、上昇は7カ月連続。前月末にユーロ安・ドル高に振れた影響が残り、5日には一時131円台を割り込んだが下値は堅かった。

その後は、新型コロナワクチンの接種が進んだ事によるユーロ圏の景気回復期待や、欧州中銀(ECB)が6月にも量的緩和の規模縮小に動くとの観測などを背景に強含みの推移となり、18日には133円台へと上伸。月末にかけても底堅く推移し、27日には円安が主導する形で134円台にタッチした。

月末絡みで実需の円売りフローが観測された他、日本政府が東京や大阪など9都道府県の緊急事態宣言を6月20日まで延長する方針を決めた事も円売り材料視された模様。

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出所:外為どっとコム

7日
欧州中銀(ECB)の政策委員会のメンバーであるカザークス・ラトビア中銀総裁は、ユーロ圏の景気が悪化しなければ、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れペース減速をECBが6月にも決定する可能性があるとの認識を示した。これを受けてユーロは買いが優勢となった。米4月雇用統計の冴えない結果を受けてドル安に振れた事もユーロを支援した。

11日
独5月ZEW景況感調査は期待指数が84.4と市場予想(72.0)を上回り前月(70.7)から大幅に上昇。これを受けてユーロ/円は一時132.40円前後まで上昇した。しかし、世界的なインフレ上昇への懸念からハイテク株を中心に欧州株と米国株先物が軟化する中、リスク回避の円買い主導で失速した。

12日
欧州委員会はユーロ圏の2021年の成長率予想を4.3%とし、従来の3.8%から上方修正した。新型コロナワクチンの普及と欧州連合(EU)復興基金の稼動、世界景気の回復による輸出増などが追い風になるとの見通しを示した。

19日
ECBが量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)に向かうとの思惑などから独10年債利回りが約2年ぶりに-0.074%前後まで上昇する中、ユーロは買い優勢となったが、ビットコインの急落などを受けてリスク選好の動きが後退すると反落した。

21日
独5月製造業PMI・速報値は64.0、同サービス業PMI・速報値は52.8(予想:65.9、52.0)であった。その後に発表されたユーロ圏5月製造業PMI・速報値は62.8、同サービス業PMI・速報値は55.1(予想:62.5、52.5)となった。製造業PMI・速報値が予想を下回った事からユーロは弱含んだ。

25日
独1-3月国内総生産(GDP)・改定値は前期比-1.8%と、速報値(-1.7%)から下方修正された。一方、独5月Ifo企業景況感指数は102.9と予想(101.0)を上回り前月(99.2)から上昇した。

26日
パネッタECB専務理事は「インフレが上昇基調にあるという兆候はない」「現在の状況では、パンデミック緊急資産購入プログラム(PEPP)の債券購入額を減少させることは正当化できない」などと発言。6月10日のECB理事会で、PEPPの購入ペース減速を決めるとの市場の思惑をけん制した。

5月の各市場

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5月のユーロ/円ポジション動向

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【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
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6月のユーロ圏注目イベント

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ユーロ/円 6月の見通し

欧州中銀(ECB)も、6月10日の理事会で量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)を決断するのではないかとの見方がある。しかし、パネッタECB理事がこれを強く否定しており、ラガルド総裁もユーロ圏経済に対する慎重な見方を崩していない。ECBがこの段階でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による買い入れの減額を発表する可能性は低そうだ。

10日のECB理事会は一部の市場参加者の失望を誘う可能性があるためユーロの下落に注意が必要となろう。もっとも、5月のユーロ高については、ECBのテーパリング観測によるものというより、ドル安と円安が同時に進む中で、いわば消去法的にユーロが買われた面が強い。6月も同様の展開となるようなら、ユーロの下値余地は限られそうだ。5月のドル安は米連邦準備制度理事会(FRB)が早期のテーパリング開始に慎重な姿勢を示した事が最大の理由として挙げられる。15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング開始の示唆がなければドル安の流れが継続すると考えられる。

一方、円安については日本の景気回復期待が著しく弱い事と、日銀の金融緩和が長期化するとの観測によるものであり、これらが6月に大きく変化する公算は小さい。ユーロ/円相場が8か月連続陽線を記録する可能性は低くないだろう。
(予想レンジ:131.500~136.000円)

神田卓也